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Don't Sigh! 3


 さて、枢木スザクへの次なる刺客…じゃなくて、試練の人物を御紹介する事にしよう。
とにかく…ルルーシュと云う少年…所構わず、男女の差別なく、無自覚、無意識に『萌え♪』オーラをばら撒く習性があるらしい…
どうにも困った事に、口で云っても解らんので、一度怖い目に遭わせて見ようかと一瞬思うのだが…
しかし、ルルーシュを守りたいと思う者たちは『やっぱり…あのルルーシュを危険な目に遭わせるなんて…天が許しても自分が許さない!』という結論に達してしまい…常に陰ながらルルーシュを見守り、ルルーシュの気付かないところでルルーシュの護衛をしているのだが…
その甲斐あって、ルルーシュには一切の危険は基本的に及んでいない。
一般人のルルーシュへのストーカー行為であれば(枢木スザクを含めた)ルルーシュの護衛たちがとっちめる事が出来るのだが…
中には例外もいるのだ…
先に述べたシュナイゼルもその一人だ。
ルルーシュへの愛が大きい上にひん曲がっており、更に悪知恵にかけてはこの世界中を探しても右に出る者がいるかどうか解らんと云う厄介なキャラだ…
そんな、シュナイゼルレベルのひん曲がった愛情表現をして、ルルーシュを独占しようと考えている輩は何も、シュナイゼルだけではないのだ。
今回は、シュナイゼルとはちょっと違った手法でスザクやルルーシュ親衛隊からルルーシュを引き離そうと云う者たちのお話しをしてみよう…
まぁ、軽く云ってみると…奴らも腹黒である。
ただ、シュナイゼルと違って、困った事に、ルルーシュにも彼らに対して愛情を抱いていると云う事だ…
勿論、ルルーシュ自身はスザクへのそれと彼らへのそれとは違うと考えているのだが…
しかし、彼らは、ある意味、スザクと似たような感情をルルーシュに対して抱いている。
ここで、複数形で表記している事にお気づきになった方は割と…どこの誰が出て来るのか、おおよそ見当がついているかもしれないが…
まぁ、出て来るであろう人物達が当たっていたとしても、ここは和泉綾ワールドである。(確かにリクエスト企画の作品ではあるのだが)
何が起きてもおかしくはないし、ルルーシュ愛を強調している舞台に彼らが出て来ないのは…まずあり得ないだろう。
そして、恐らく、ルルーシュを愛する枢木スザクにとって最大にして、最強の敵と云える…
ここだけの話…ルルーシュと云う少年、確かに他人に対しては異様な警戒心を示すし、自分は他人に好かれる事はあり得ないなどと考えている大ボケなのだが…
しかし、こと、身内に関しては(一部を除いて)違う。
特に、自分に近しい、そして自分より年下の弟や妹に対して無限大ともいえる愛情を注ぐ。
これは恐らく、母親のルルーシュの育て方に問題があると思うのだが…それは別の話なので、ちょっと割愛…
簡単に云うと、出来のいいルルーシュを見て、『仕事第一!』な母親が育児放棄して、ルルーシュが母親に育児放棄された妹や弟の面倒を見ており…一番歳の近い異母妹はそんなルルーシュを見ていて『あんなお嫁さんが欲しい!』と考えて…
で、スザクに取って色んな意味で一番厄介な敵となった…

 前置きは長くなったが、今度スザクの前に立ちはだかったのはルルーシュの妹のナナリー、異母妹のユーフェミア、弟のロロ…3人組である。
こいつらは…なまじルルーシュが可愛がっている事もあり、親衛隊たちは手を出す事も憚られ…とにかく、厄介としか言いようがない。
ただ…スザクはルルーシュの兄姉弟妹達を知っている。
そして、彼らのルルーシュへの執念を知っている…
だから…
スザクだけは…このルルーシュの弟妹達に立ち向かう事が出来る。
そして、彼らもスザクに対しては容赦はしない…
何せ、彼らに注がれていたルルーシュの愛情を奪い去った…憎き相手だ…
そんな、彼らの中でもルルーシュの所有権を争って壮絶な争いをしていたと云うのに…そこに突然、『ルルーシュと両想いになったスザク』を認めるなど出来る筈もない。
「さぁ…ナナリー、ロロ…憎き私たちのルルーシュを盗んだ枢木スザクの成敗に行きますよ!」
「解っています…ユフィ異母姉様…。相手はあのスザクさん…ですもの…。情けは無用です…」
「異母姉さんも、ナナリーも…今だけは力を合わせようね…」
なんだか、物騒な会話をしているルルーシュの愛する弟妹たちだが…
これも『ルルーシュへの愛』がなせる技…と云ってしまえるのが和泉綾ワールドクオリティ…
ルルーシュに対して絶大な愛を抱き、そして求める…
そんなスザクにとっては世界で最も厄介な連中が…今…アッシュフォード学園にやってきた…
そして…下校途中のルルーシュの姿を見つけた時…
その3人の瞳に光が宿る…
「ルルーシュ!」
「お兄様!」
「兄さん!」
3人の声がハモッた…
それは…3人が抱くルルーシュへの思い同じと云う証し…
そして…今は、『枢木スザク』と云う、共通の敵を力を合わせてルルーシュから引き離そうとしに来た3人…
本来ライバルである筈の3人なのだが…利害が一致したと云う時点で手を組んだのだ。
その後の事は、その後で考えればいい…
ある意味、本編のあの、『ゼロ・レクイエム』プランとあんまり変わらない思考なのだが…
ここではルルーシュを巡っての争いなので…(多分)世界を巻き込んだ戦争にはならないと信じたい…
まぁそんな話はともかく、3人はルルーシュが出て来るのを待つ…
校門から出て来るのは、これまでの調査により、最後の授業を終えて15〜20分後くらいの時間…
その間、何をしているのかは知らないが…
生徒会の仕事をさぼる時には確実にこのくらいの時間に校門を通るし、そうでない時には、外が真っ暗になるまで出て来ない。
そして今日は、生徒会に関しては何の仕事もない…もしくはスルーしたと云う事で、ルルーシュの姿をすぐに見つける事が出来た。
ただ…ルルーシュの右側には忌々しい事に、幸せそうにルルーシュの隣で笑っている枢木スザク付き…と云う現実を見せつけられているのだが…
おまけに、スザクと話しているルルーシュが幸せそうに笑っているのを見て…(この辺りはシュナイゼルの思考とよく似ているのだが…)
―――枢木スザクに脅されて…無理矢理笑わされている…
と云う結論に至る訳だが…

 ここで最初に走りだしたのはユーフェミアだった。
何せ、他の二人とはまた別の野望を抱いているのだ。
『ルルーシュを自分のお嫁さんにする…』
恐らく、同じ母から生まれたナナリーとロロにはその思考が働かない。
ユーフェミアも半分は血が繋がっているのだが…同じ場所に暮らしている訳ではないので、兄妹と云う感覚が希薄だ。
それ故に、『ルルーシュをお嫁さんにしたい!』願望はその辺のルルーシュファンと変わらない。
否、ルルーシュの事をよく知る分、その願望は強いかもしれない…
「枢木スザク!私のルルーシュを返して頂きに参りましたわ…!さぁ…さっさと私にルルーシュを返しなさい!」
完全に命令口調…
そして…スザクは完全に悪の親玉扱い…
協力関係を結んでいる弟妹達も完全にスルー…
「ユフィ?それにナナリー、ロロ…。お前たち…全寮制の学校に進学したのに…なんでここにいる?確か…お前たちの学校は授業のある日には基本的に外出は許されないんじゃなかったのか?」
ルルーシュとは違う学校に入学した3人…
何故かと問われても、完全に和泉綾の都合としか言いようがない訳なのだが… しかし、その辺りはあえてスルーしよう。
ここで立ち止まっていては…先に進まない…
「今回はギネヴィア異母姉様のお母様に亡くなって頂きました…。私も、ユフィ異母姉様も、ロロも…お兄様になんとしてもお会いして…スザクさんの魔の手から救い出そうと…」
ハイ…完全にスザクが悪の親玉兼ラスボスです。
彼らにとっては…
確かに、彼らにとってルルーシュはか弱く美しいお姫さま…
ここで注意しておきたいのは…ここで『釣りバ○日誌』ネタを持って来たところに書き手の切羽詰まり加減がよく解るので、その辺りはツッコミを入れないように…
それはともかく…そんな彼らの登場に…ルルーシュもスザクも驚く…
スザクの方は『こいつら…ここまでやるか…』と云う感じだし、ルルーシュの方は『なんて無茶な事を…』と思っているし…
これまでにも何度か、こんな状態でこの3人が突如現れた事がある。
と云うのも、あのシュナイゼルがいる様な環境だ…
ルルーシュをこよなく愛する者たちはシュナイゼルくらいの大胆不敵さを持っていなければ、確実にルルーシュはシュナイゼルか…もしくは色んな意味で危ない存在の父親にかっさらわれてしまう…
スザクも…ルルーシュの事をよく知っているので、いずれこの3人も出て来るとは思ってはいたが…
これまで、シュナイゼルや色んな意味で危ない存在の父親が絡んで来ない限り、この3人が、自分の母親ではない、母親や、異母兄姉妹を死んだ事にして学校を抜け出すと云う事はしなかったのだが…
しかし、スザクがルルーシュと両想いとなったと云う事で、彼らの中で様々な危機感を覚えたのだろう。
これまで、ルルーシュは自分達を含めて特定の誰かに対して特別な意識を持つ事はしていなかった。
だからこその危機感と云える。
シュナイゼルの場合は、どんな状況であれ、同じようにルルーシュを求めて来るのだが…
この3人に関しては、ある意味、一種の優越感に似たような感情があったのだ。
そう、それまでのルルーシュにとっての特別な存在は恐らく、彼らだけだったとも云えるのだ。

 スザクはスザクでそう云った事が解っていて、ルルーシュの事を好きになって、ルルーシュに告白して、両想いになったのだ。
ある意味、この3人との戦いは避けられない事は解っていたし、ルルーシュの中で彼らに対する特別な感情がある事はスザク自身も解っていたから、ある程度覚悟はしていた。
これで、この場でルルーシュがスザクを選んでも、弟妹3人組を選んでも、色々と大変である事は確かだ。
「ユフィ…スザクの魔の手だなんて…。スザクは俺の事を…その…好きだと云ってくれたんだ…。だから…」
こんな風に顔を赤らめて照れくさそうに話されて…スザクは喜ぶかもしれないが、ユーフェミアとナナリーとロロがその一言でそれを認める事なんて出来る訳がないのだ。
これまで…ルルーシュの特別は彼らだけだったと云う自負が強い分、それに対する執着は強い。
おまけにシュナイゼルと違ってルルーシュが彼らに対してはスザクが特別な存在となってもルルーシュの中での彼らのポジションは変わらないのだから…
スザクの中では色々と複雑な思いが駆け巡る。
シュナイゼルなら力任せに叩きのめしてもルルーシュは怒らない…
それどころか、感謝される可能性の方が高い。
「兄さん…その野獣になんて云われたの?僕たちは…兄さんの為を思って…」
ロロが半ば泣きそうになりながらルルーシュに尋ねる。
まるで、何かを訴える様な目で…
「ロロ…何を云っているんだ…。スザクはとても優しいんだ…。それに、スザクは凄くもてるんだぞ?そんなスザクとこうして…居られるなんて…。俺も、スザクのファンに一日も早く認めて貰えるように頑張らないといけないんだ…」
はにかみながら、なんつうセリフを吐くのだ…この男は…
とか思うのだが…しかし、これもルルーシュのナチュラルクオリティ…
このルルーシュの発言はスザクに優越感を与えると同時に、ルルーシュを思う人々の中の『フレイヤ弾頭』の照準が全てスザクに向いた事を意味する…
「お兄様!お兄様は…私達をお見捨てになるのですか?私達を…誰よりも慈しんで下さっていたのに…お兄様のそのお優しさは…スザクさんに向けられてしまうのですか?」
3人組のある意味、一番の切り札であるナナリーがルルーシュに訴えかける。
そのナナリーの訴えに…ルルーシュがどう答えるか…
周囲をいつの間にか取り囲んでいたルルーシュ親衛隊もスザクもその動向を見守る。
ナナリーの言葉でもダメだとしたら…それこそ、ルルーシュ親衛隊とこのルルーシュが溺愛する弟妹3人組が今度は手を結ぶ事になるだろう。
そして…彼らの中に『枢木スザク抹殺計画』が持ち上がる事だろう…
とはいっても、本当に殺す訳ではない事を付け加えておこう。
この場合、スザクをどうやってルルーシュに嫌われるように仕向けて行くか…を考える事になるのだが…
しかし…ルルーシュ…本当にここまで天然だと…逆に希少動物の様になってしまう…
それでも…彼らのルルーシュへの愛が変わらない…
これも愛故なのか…
スザクとしては、ルルーシュと両想いとなってからも苦労が絶えないのは…その辺りにあると思われる…

 一通りやり取りを見て来たスザクだが…
「君たち…そうやって、勝手に身内を殺して学校抜け出して…。学校に本当の事がばれて、問題になった時…一体誰が一番悲しむと思っているんだい?」
そんな、結構尤もらしい事をスザクの口から飛び出す。
こいつだって、恐らく、ルルーシュに何かあった時には身内を勝手に殺して学校を飛び出す事はやぶさかではないと思っているくせに…
しかし、ルルーシュはスザクのそんな言葉に一々感動する。
「スザク…そんな風にユフィ達の事まで心配してくれるのか?」
「当たり前だろ?ルルーシュの大切な弟や妹じゃないか…」
ルルーシュ以外のギャラリーは『こいつめ…よく云う…』と考えているのだが…
確かに、9割くらい嘘が混じっているのだが…
しかし、ルルーシュはそんなスザクのウソに気づく筈もない天然なのだ。
それ故にスザクの苦労は絶えないものの、こう云う時にはしっかりと利用させて貰うのが黒スザククオリティなのだ。
「スザク…」
そんな黒スザククオリティに気づかないルルーシュは…嬉しそうに顔を赤らめている。
しかし、そこでは話しが終わらないのが和泉綾ワールドである。
「スザク…俺もこの3人の事がちょっと心配なんだ…。これから…この3人をこいつらの学校に送り届けて来る…。そして、諸々の事情を学校に話して、謝ってくるよ…」
ルルーシュのこの発言にこの場の空気が凍りつく…
それはそうだ…
ユーフェミアもナナリーもロロも学校に思いっきりウソを吐いて来ている。
まぁ、時間が経てば映画同様、ばれるのだが…
こんな時、ルルーシュはつい、彼らの保護者気分になってしまうのだ。
確かに…学校にウソを吐いて抜けだしてきているのだ。
それ相応の罰があるだろうが…
それでも、ちゃんと彼らにいけない事は、いけないと…教えなければならないと云う…そんな保護者心が芽生えてしまうのは…彼らの母親が育児放棄してルルーシュが世話をして来たからだろうか…?
「え?ルルーシュ…それじゃ…今日の帰り、僕と一緒に買い物に行こうって話は…?」
半ば涙目になっているスザクがルルーシュに尋ねるが…
ルルーシュはにこりと笑って答える。
「ごめん…やっぱり、こいつらを放っておく訳にはいかない…。あ、もし…迷惑じゃなければ…スザクも一緒に…あ…行けないな…。これは甘えだ…。スザクのファン達に…怒られてしまうかな…」
スザクの中では
―――そう思うなら…こいつらほっぽりだして、僕と一緒に買い物に行ってくれ…
と心底思うのだが…
ルルーシュ相手ではそんな事、口が裂けても云えない…
結局、両想いになったばかりのスザクはルルーシュの弟妹には敵わない…と云う事が判明してしまった…
「そ…そんなぁ…ルルーシュ…」
スザクがそう口にした時…ちらりと3人の方を見ると…勝ち誇った顔をしている…
しかし、ルルーシュは更に続けた。
「その代わり…と云ってはなんだけれど…今日の夕食…うちで食べないか?俺…スザクの好きなものだけを作るから…」
ルルーシュは…この一言がどんな破壊力を持つか…解って云っているのだろうか…
ここで、スザクの表情は満面の笑顔になり、勝ち誇っていた3人組の顔は引き攣り、ルルーシュ親衛隊たちからは惜しみなくスザクへの殺気を振りまかれている。
さぁ…この先…スザクの学園生活はどうなるのであろうか…


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