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Don't Sigh! 4


 これまで、スザクがルルーシュと両想いになって幸せになったかと思いきや、確かにルルーシュと両想いになったこと自体はとっても幸せなのだが…
そこに付随してくる様々な困難…
スザク自身、その覚悟はそれなりに持ってはいたと思っていたのだが…
しかし…
これは読みが甘かったと云うべきか、それとも、スザクがルルーシュの恋人の座を奪った事によって招いた結果と云うべきか…
その辺りはどう判断すべきかはよく解らないのだが…
今日もスザクは多くの『ルルーシュ愛』に萌える数多くのルルーシュを愛する者たちから、殺気のこもった攻撃を受けている。
ルルーシュの方はまったくもって自覚がないので…ルルーシュ愛を抱く人々はスザクのファンで、スザクはファン達と交流を深めていると思っているものだから…
どちらも報われないとは思うのだが…それでもお互い楽しそう(?)にしているので、それはそれでいいとしよう。
ただ…ルルーシュがスザクと恋人同士となったことで、これまで隠れ親衛隊として、陰から見守ってきて者たちもいた。
『ルルーシュ様のお姿をこの目に焼き付けるのです!』
と云う、ある意味、元祖『明日が○るさ』の主人公並みのまだ可愛げのあるストーカー達が続々と生気の親衛隊に名前を連ね始めているのだ。
それは、学園内にとどまらず、学園外にも出来始めて、現在ではアッシュフォード学園のルルーシュ親衛隊を『本店』、学園外の親衛隊を『支店』と一応分けておかないと色々と収拾がつかなくなって来た。
某警察ドラマの様だが…あのドラマと違って、『本店』が優越感を感じる事はない。
寧ろ、学園の外の方がルルーシュのレア写真を隠し撮り(←良い子は真似しちゃダメです。悪い子も真似しちゃダメです!)出来るとの事で、『ルルーシュ親衛隊通信』ではそれによって様々な情報提供がなされている。
最近、ルルーシュがスザクと一緒に新婚夫婦さながらにスーパーで一緒に買い物をしているところをよく目撃されているのだ。
そうなると、ルルーシュの記憶力だと学園内の親衛隊たちの顔はすっかり覚えられてしまっている。
ルルーシュはスザクのファンクラブだと信じて疑っていないので、そこまでやってしまった時、ルルーシュはスザクから離れるかもしれないが、今度は、親衛隊の方もルルーシュに近付く事が出来なくなる。
ほとほと困っていた時に、学園の外にいる親衛隊たちが様々な情報を送ってよこしてきているのだ。
ルルーシュはまだ、外にもこうした親衛隊(ただし、ルルーシュは自分の親衛隊だとはつゆほども思っていないのだが)がいる事を認識していない。
恐らく、ルルーシュが彼らをスザクのファンクラブと勘違いするのは時間の問題ではあるが、使える時に仕える者は使っておかなくてはそんである。
―――いつまで使えるかな…
これが、現在のブリタニア学園内のルルーシュ親衛隊隊長の掛け値なしの本音である。
ルルーシュが一人になる事は今となっては皆無に等しいので、彼らがルルーシュの中で『アッシュフォード学園の外にも居るスザクのファンクラブ』認識になるのは…確かに時間の問題である。(常にスザクがへばりついているから)

 で、ルルーシュを愛する弟妹達との(妙な)大立ち回りで嘘がたくさんちりばめられているスザクの言にすっかり感動してしまったルルーシュだが…
そして、
―――スザクのファンクラブのみんなに認めて貰えるように…
などと考えているお陰で、ルルーシュは更に魅力を進化させまくっている。
なんと云っても(スザクの為と云うのは正直不愉快極まりないのだが)その努力をしている姿がけなげで、いじらしく…そして『萌え♪』を誘う…
なんとしてもスザクを好きだと思っている人々に認めて貰おうと…まるで少女漫画の主人公の様に頑張ろうとするルルーシュの姿を見て『萌え♪』ない奴は…恐らく世界中探してもなかなか見つからないとさえ思えるほど…
そんなルルーシュの姿にこれまでルルーシュの親衛隊と云う肩書に一線を画していた者たちまでもがルルーシュの魅力の堕ちて行った…
「ねぇ…ルルーシュ…。いい加減、自覚しようよ…」
流石に体力バカであるスザクでも毎日の1対多数のバトルはきついらしい…
昼休み、ルルーシュが立ち入り禁止の屋上のセキュリティを破って二人でランチタイムを楽しんでいる…筈だったのだが…
日に日にエスカレートして行くルルーシュ親衛隊たちのスザクへの攻撃…
確かにルルーシュの解る様にはやらないのだが…
彼らも一応考えているらしく、スザクにルルーシュから離れて欲しいのは本当だが…ルルーシュがルルーシュ親衛隊をスザクのファンクラブと勘違いしていて、どれ程スザクが説明しても親衛隊たちが全力で否定してもルルーシュの誤解を解けないと悟った時…
―――仕方がない…ルルーシュ様の誤解が解けるまでは…我々は『枢木スザクファンクラブ』として二人を追い掛け回すしかないのか…。それに…あのルルーシュ様の(枢木スザクの為と云うのは納得いかんが)けなげに頑張るお姿は…『萌え♪』をさそ…じゃなくて、とても可愛らしくて素晴らしい…
と云う結論に達して、結局、現在のところ、ルルーシュの誤解を解く方法が見つからない為に妥協している状態である。
だから、変にスザクと遠ざけてしまうとルルーシュに近づけなくなるというジレンマに悩まされている訳なのだが…
ルルーシュ親衛隊たちは天秤にかける…
スザクとルルーシュを引き離して、自分達もルルーシュに近づけなくなるか…(とは云っても、スザクの事なので、絶対に腹黒な手段を使ってルルーシュの隣の座を手放す事はないと思われる)
涙をのんで、スザクとルルーシュの仲を表面上は認めてルルーシュにスザクのファンクラブと勘違いされたままそれでもルルーシュの傍にいられる道を選ぶか…
どう考えても前者の方がリスクが高い…
この時、ルルーシュ親衛隊隊長は賢くも、後者を選ぶ。
ルルーシュに誤解された状態…
結構しんどいものがある。
頭はいい癖にバカ…
頭いい癖に天然ボケ…
こうなると、いつまで経ってもルルーシュの身の危険度はあまり下がらないのだ。
無自覚と云うのは無知と云うのと大して変わらない。
無知と云うのは普通に生きていても非常に危険な状態であるのだ。

 そして、今日はルルーシュは生徒会に駆り出されて、約1時間程、放課後スザクがルルーシュの傍を離れる時間が出来た。
生徒会室はこの学園の生徒会長、ミレイ=アッシュフォードの絶対守護領域で、アッシュフォード学園の中では最も安全な場所である。
実は、スザクがミレイに願い出て、1時間だけルルーシュを預かって欲しいと云う事で、結構無茶振りな生徒会業務を押し付けて貰ったのだ。
ただし、
『ルルーシュに余計な事をしたら、お嫁にいけない事になりますから…。今回は2か月前と比べて倍増したルルーシュ親衛隊と僕の総意ですので…。宜しいですね?』
と、本来なら絶対に吐けないセリフを吐いてルルーシュをミレイに預けている。(もちろん、ルルーシュにはばれないように)
ここで、ルルーシュをミレイに預けると云う表現を使っている時点で、ルルーシュの知らないところで、スザクとルルーシュ親衛隊たちが取っても頑張っている事がよく解る。
ルルーシュの誤解によって、ルルーシュのスザクの為にけなげに頑張る姿が目撃されてルルーシュと付け狙う『痴れ者』が増加しているのだ。
「さて、枢木スザク…このままではルルーシュ様が…」
「確かに…ルルーシュの無自覚にも困ったものだけれど…それでも、僕はそんなルルーシュが好きだから…。僕は全力でルルーシュを守るけどね…」
これで鬱陶しい親衛隊の数が増加して行くのが止まればいいとさえ思っているスザクだ。
否、これでルルーシュをつけ回すのをやめてくれればいいのにとさえ思っている。
そんなふてぶてしいスザクの態度にルルーシュ親衛隊隊長もかなり不快感を露わす。
「我々を愚弄するか!我々はルルーシュ様に見返りを求めている訳ではないぞ!最近親衛隊に入隊した者たちは知らんし、私以外のメンバーもどう思っているかは知らん!でも、私だけは純粋にルルーシュ様をお守りしたいと考えている!」
隊長と一緒について来た親衛隊幹部にまで喧嘩を売っている発言だが…
だが、こうしてルルーシュの事を考えているメンバー達を見ていると、『ホントに報われないなぁ…。同情はしないし、塩も送らないけど…』とスザクはこの上ない本音を頭の中で考える。
「まぁ、これまで僕たち、随分ルルーシュの誤解を解こうと頑張って来たけれど…中々うまくいかないね…。あんまり天然過ぎると、ホントにルルーシュを24時間体制で監視しないと…これまでにもルルーシュの身内のやり方を見て来ているだろう?」
スザクの言葉に現在この話し合いに出席しているメンバー達が『うんうん』と頷く。
実際にやる事が腹黒いし、スケールもでかい事もザラだ。
「ルルーシュ様の御家族だし…丁重におもてなしをしたいと考えてはいるのだが…あれでは…」
「そこで彼らをルルーシュの身内と考えている時点で負けになる…。彼らはそこも突いてくるからね…」
スザクの尤もな一言に納得せざるを得ない現実が…そこにはある…
元々はルルーシュが無自覚に『萌え♪』を振りまくのが原因なのだが…そんなルルーシュを愛してしまった者たちの…ある意味、悲しいとも、恐ろしいともいえる宿命である。

 ここで、一斉にここに参加しているメンツが大きなため息を付いた。
そんな時…ルルーシュ親衛隊隊長の携帯電話が鳴った。
「なんだ!この忙しい時に!」
苛立ったように隊長が携帯電話を取るといきなり怒鳴りつけた。
多分、着信音で、ここにいないルルーシュ親衛隊の隊員からの電話だと解ったからであろう。
『た…大変です!隊長!アッシュフォード学園の放送室がジャックされました!』
携帯電話の向こうから驚愕と焦燥の怒鳴り声が聞こえてくる。
携帯電話を耳に当てていた親衛隊隊長も思わず、携帯電話を耳から離す。
「一体…誰に…?」
まだ、事情がよく解らない状況ではあるのだが、それでも、ルルーシュに関係のない人間であれば親衛隊員からこんな形で電話がかかって来る事はあり得ない。
『ルルーシュ様の御父君…シャルル=ジ=ブリタニア様です!』
携帯電話から聞こえて来たその声に…この場にいた全員が一斉にシンクロした…
「「「「「「「ゲッ!!」」」」」」
ルルーシュの父であるシャルルが恐ろしく間違った方向にルルーシュを愛してしまっている事は…全員が知っている。
そして、なまじ、妙に権力や財力があるだけに厄介な相手である。
でもって、『マゾっこルルーシュが好きなのだぁぁぁ!!!』などと公言しており、放し飼いにしておくと恐ろしく危険な生物である。
―――ある意味、気持ちは解らないでもないんだけど…
と云う気持ちになる者もいない訳ではないのだが…
この父親の場合、ルルーシュに求める『マゾ度』がとにかく桁違いなのだ…
何でも…
ルルーシュをブリタニアの拘束服を着せて、力ずくでねじ伏せて、悔しそうに睨みつけるルルーシュを高笑いするとか、愛する妹に袖にされてうっかり、好色な貴族に襲われそうになるとか(←実際に襲っていたらきっと、とっととその貴族を拘束し、『謝ってもゆるさぁぁぁん!!』とか云いながらねちねちと苛めるであろうが)、腹黒兄貴の所為でそれまで仲間と思っていた連中に集団リンチされた揚句、弟がルルーシュを庇って死んでしまい、その失意の中、『黄昏の間』でルルーシュに『二人っきりで永遠にここに居るんだぞ!』と云わせてみたり(←これほど幸せな言葉はないだろう。ルルーシュにとっては迷惑極まりないだろうが)…
などと云う事をさせて見たいらしい…
とんでもない親である。
ここまでのマゾっこを求める父親がいるだけでルルーシュがルルーシュであると云うだけで恐ろしく苦労の多い人生を運命づけられている事が解るし、父親にさえ憎まれていると思ってしまっても仕方ない。
恐らく、ルルーシュ親衛隊をスザクのファンクラブであると誤解している原因はここにもあると云える。
それに加えて、手段を選ばないシュナイゼルに、顔では笑顔を作っていても恐ろしく腹黒な弟妹達…
他にも、尺の関係で割愛させて頂くが、まだまだルルーシュの苦労を誘発している家族がいるのだ。
まぁ、それはさておき、ルルーシュの通うアッシュフォード学園に訪れ、放送室を占拠したと云う事は…
今度は何をしようと云うのだろうか…

 嫌な予感を抱きつつ、この部屋のそして、その時は突然やってきた…
アッシュフォード学園の放送室をジャックするなど…恐らく、ミレイ以外に出来るのはあの、傍迷惑なルルーシュの父親くらいのものだろう…
『皆の者ぉ…その耳の穴かっぽじってよぉく聞けぇぇぇぇ…。ルルーシュはぁ…枢木スザクのものではないぃぃぃ!!ルルーシュはぁぁぁ…この儂…シャルル=ジ=ブリタニアの『可愛いペット』であるぅぅぅ!!』
突然の全校内放送がかかる…
放送室を占拠されたら…電波ジャックは当たり前なのだが…
生徒会室ではその一声にパソコンに打ち込んだデータをプリントアウトして、そのプリントアウトした資料を手にしたルルーシュがばったぁぁぁぁんと倒れた。
そりゃ、突然緊急放送のチャイムもないままそんな事を叫ばれ、でもって、『可愛いペット』扱い…
その放送にスザクはいち早く反応し、生徒会室に光速のスピードで走って行く。
校内数か所、壊滅的打撃を加えつつ…
後でミレイが見て真っ青になり、その後真っ赤になって怒るのだが…
今はそんな事を構っている暇はなかった。
スザクは突然生徒会室の扉を開くと…
「ルルーシュ!!」
ルルーシュに駆け寄って倒れたルルーシュを抱き起こす。
今のショックですっかり気を失っている…
そんな状態を見てスザクはミレイをキッと睨んだ。
「会長!ここならルルーシュを守ってくれると信じていたのに…!なのに…放送室を占拠されるなんて…」
少々スザクの云っている事はミレイに全責任を押し付けているフシもあって、云いたいことは山ほどあるのだが…
そもそも、ミレイを信じてルルーシュを預かって欲しいと無茶振りな生徒会業務をさせたのはスザクだ。
「あそこまでやるとは…流石に思わなくって…。と云うか、云いたい事云った後だから…すぐにここに来るわよ?」
「あ、そうでした…。とりあえず、ルルーシュ親衛隊たちが一応足止めしてくれるそうですけれど、多分、ここまで来るのに5分とかかりませんから…」
「そうね…とりあえず、このクラブハウスの屋根裏に行きなさい…。ほら、隠し扉の鍵よ…」
どうにもこう云う事に慣れている様子の面々だ。
過去にも何度かあったらしい…
「リヴァル、いざとなったらバイクを…ニーナ、『ガニメデ』の起動準備を…」
スザクがてきぱきと指示を与えて、ルルーシュを姫抱きにして生徒会室を後にする。
その後ろ姿を見て、ミレイは『はぁぁぁぁ…』と大きなため息を吐いた。>
「今回は校舎の修理…どのくらいかかるのかしら…費用、時間…諸々…」
ついうっかり現実的な話となるが…
それでも、今目の前にある問題も現実である。
「さて、とりあえず、私とカレンとシャーリーは時間稼ぎするから…リヴァル、ニーナ…色々とお願いね…」
「「「「イエス、マイ・ロード…」」」」
一斉にミレイに返事して、そして…行動を開始する。
そして、ミレイは思う…
―――結局、ルルーシュの行く先々でルルーシュに魅了されて、頑張っちゃう人たちを増殖しているのよね…結局…
そう思いつつ、これから訪れる嵐を前に苦笑するのであった…

END


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