これまで、挨拶としてのキスの経験しかないルルーシュには…そのキス自体がこれまでに経験がなく、驚愕していた。
苦しい…ドキドキする…そして…
怖い…
『ゼロ』…否、スザクを怖いと思った事なんてなかった。
いつもスザクの…『ゼロ』の後を追いかけていた。
スザクのくれる優しい眼差しが好きで、『ゼロ』がルルーシュを守ろうとするときの力強さに憧れて…
ルルーシュ自身、これまでに歴史を学ばされる中、こうして、『ゼロ』の仮面を被る前には複雑な経緯があった事を知った。
しかし、今では、その名前を呼ぶ事が許されているのは…ルルーシュだけだ…
今では、母であるナナリーもシュナイゼルもコーネリアも『ゼロ』と云う英雄の名前以外で彼を呼んでいるところを見た事がない。
それに、そんな過去を知るから、ルルーシュも…公の場や人前では決して、その名前を呼ぶ事はない。
二人きりの時だけ…
だから…特別だと思った。
そして、ルルーシュにとっても彼は特別で…傍にいたくて、傍にいて欲しくて…
「っ…んん…ぅん…」
息が苦しい…
でも、スザクは放す気配がない。
ルルーシュも…
―――放して欲しくない…放さないで…
翻弄される思考の中でそんな風に思う。
やっと、そこから離れて行く唇…
二人をつなぐ銀糸が徐々に細くなり、やがて切れて行く…
「ルル…」
スザクのいつもより低い、甘い声が耳に届いているが…
ルルーシュ自身、その裏に隠されているものがある事を…知る由もない。
あまりに幼いしぐさを見せるルルーシュにスザクは悪い事をしているような背徳感を覚える。
こうして…誰かと身体をつなぐ行為をするのは…17年ぶり…
本能の部分で辛くなかったとは云わない。
でも、感情の部分では、ルルーシュ以外は誰も欲しいと望まなかった。
そして…それも罰だと…
あの時のルルーシュがスザクに残した最後の『罰』ではなく…
スザクが…ルルーシュを貫いたことへの…自分で課した『罰』…
今…それが破られようとしていた…
自分でも…どうしてこんなに簡単に破る事が出来るのかと…不思議なほど…
目の前のルルーシュに対して…そんな感情を抱くのは…
確かに、あの頃のルルーシュとは違うと思うが…
でも、あの頃のルルーシュと何も変わっていないと思う…
ただ…あの頃みたいに…重い仮面を被らなくなっただけ…被らなくてもよくなっただけ…それだけだと…
潤んだ目で小刻みに震えるルルーシュに優しい笑顔を向けた。
「ルル…脱がすよ…?いいね…?」
尋ねているが…
でも、絶対に有無を言わせない…
そんな感じに紡がれる言葉…
これから始まる事に…ルルーシュはどれ程自分の中で認識があるのか…
正直、解らない…
それでも…優しくしてやりたいと思う…
―――あの時…何をされるところだったのか…教える筈なのに…矛盾しているな…
心の中で自嘲してしまう。
こんな風に涙目になって、震えているルルーシュのカッターシャツのボタンを一つずつ外して行く中で、つい、いじめたくなる嗜虐的な感情と、教えてやらなくてはいけないと云う、ちょっと邪な感情の交じった親心、そして、優しくしてやりたいと思う真綿で包み込むような愛情…
なんだか矛盾している感情が混在していて…
全てのボタンを外し終えてその前身ごろを開く。
ルルーシュは抵抗する気はないようだが…それでも、顔を真っ赤にしている。
そう言った恥ずかしがるルルーシュにくすりと笑いが零れた。
「な…なんだよ…そ…そんなに…おかしいか…?」
スザクの笑いがどうやら気に障ったらしい。
反抗的に睨みつけているのだろうが…今のルルーシュではそれは可愛い仕草にしか見えない。
―――声も上ずっちゃって…
「そんな事ないよ…ルル…やっぱり綺麗だ…。あの時…間に合ってよかった…」
この上ない本心だろう。
つい、そんな言葉が零れてしまう。
「あ…あの時…怖かった…」
滅多に見る事のない、ルルーシュの姿…
プライドは高いので、こうした本音を吐露する事は基本的にないのだ。
「だったら…あんなところに二度と行かないように…身体に覚え込ませないと…」
ルルーシュのその一言にスザクの方に火がついたらしい。
怪しげな瞳で笑い、ルルーシュに低い声で囁く。
「も…もう…行かない…あんなところ…」
ルルーシュは素直にそう答えているのだが…
「でも…万が一って事…あるだろ?それに…これはお仕置きでもあるんだから…。ルルが勝手に王宮を抜け出して…あんな物騒なところをうろついていたことへの…」
スザクのその一言にルルーシュの身体がピクリとなった。
あんなに怖い目に遭っていると云うのに…
それに…スザクがこんな風に低い声でルルーシュに話すのは初めてだ。
こんなスザクの瞳の色を見るのも初めてだ。
いつもは…綺麗に済んだ…翡翠色…
でも、今は…
「ルル…君の事を愛しているから…お仕置きをするんだからね…」
そんなセリフを低い声で云われて…
ルルーシュはふるりと身体を震わせる。
いつも…ルルーシュに向けてくれる優しいスザクの瞳とは違う…
まるで…なにかの獣にでも睨まれているような…
そんな錯覚を起こしそうな…
そんな…少し闇の色を含んだ…スザクの翡翠…
スザクはそう言い終えると、ルルーシュのスラックスへと手をかける。
器用にベルトを外し、するするとルルーシュのスラックスを脱がせていく。
「な…スザク…何を…」
どこまで理解していたのか…本当に疑ってしまうのだが…
スザクの動きにルルーシュが驚いて身体を起こそうとする。
しかし、すぐにその動きはスザクによって阻止される。
「大人しくしているんだ…ルル…。今日は君へのお仕置きだし…それに…ルルだって…こうして僕にかまって欲しかったんだろ?」
ルルーシュの中で『こうして…かまう?』という疑問が生まれるが…
多少の知識はあったが、それほどそう言った事に触れてくる事のなかったルルーシュにとっては、未知の世界だ。
ルルーシュのそこを覆っていた下着もあっさりと脱がせてしまった。
「やだ…スザク…」
流石に羞恥を強く感じるのか…
ルルーシュが思わず起き上がろうとした時、スザクはそのルルーシュの…まだ子供の状態のソレをゆっくりと揉み込んで行く。
「あ…やだ…スザク…」
その感じた事のない感覚にルルーシュ自身、戸惑いを隠せない。
「いいから…ルルはじっとしているの!今度動いたら、お仕置きをもっとひどくするからね…」
スザクはそんな事をあっさり言ってのけているが…そこまで云われるとルルーシュの頭はパニック状態となった。
スザクは大人しくなったルルーシュに更に刺激を強くする。
「っふ…あ…何…?これ…」
ルルーシュがスザクの刺激に驚いて背を弓なりに反らせる。
「いいから…その感覚に…身を任せるんだ…。大人しくしていれば…気持ちいいだけだから…」
スザクの手はさらに動きを速めて行く。
ルルーシュはそんなスザクから与えられる刺激にただ…翻弄されて…
「な…変だ…俺…」
「いいんだよ…それで…そのまま…変になっちゃえばいい…」
久しぶりの行為…
でも、敏感に感じるところは以前と変わらないらしい…
スザクの動きに素直に反応している。
そんなルルーシュを見て…少し複雑な気分になるが…でも…あのときだって…こんな風にみんなから愛されていれば…こう言うルルーシュになっていたんだと思うと…
笑っているルルーシュを見て、泣いているルルーシュを見て、怒っているルルーシュを見て…つい、感慨深くなってしまう。
最近では、このルルーシュはナナリーたちには完全にあの時のルルーシュと切り離されている気がする。
でも…スザクの中では…
ルルーシュは…どれ程、表に出てくる性格が変わっても…ルルーシュはルルーシュだと思う。
もし、違う名前をつけられていたとしても…スザクの中では彼はルルーシュだったに違いない。
「あぅ…スザク…も…放して…」
恐らく、射精感が襲ってきたのだろう。
ルルーシュが必死に身体を捩ろうとするが、スザクの手がそれを許さない。
「いいよ…そのまま…そのまま、その感覚に身を任せて…」
スザクの低い声…
ルルーシュがギュッと目を瞑り…
そこから…恐らく、今のルルーシュとなって初めて、スザクの手によって頂点に達したのだった。
肩で息をしているルルーシュを見て、そっと頬を撫でてやる…
「気持ち…よかったんだろ…?」
「……」
ルルーシュはスザクの言葉にただ…顔を赤らめた。
そして、スザクはルルーシュの耳元へと顔を近づけ、小さな声でこう囁いた。
「僕も…気持よくなりたいよ…」
ルルーシュはその言葉に目を見開いた。
どうしたらいいか解らない…と云うのが正直なところだろう。
スザクはくすりと笑いながら言葉を続けた。
「大丈夫…。僕が全部やるから…だから…ルルは僕に任せていて…」
そう言って、立ちあがり、洗面台からスキンケア用のクリームを持ちだしてきた。
「そ…そんなもので…何するんだ…?」
ルルーシュの目には恐怖が宿っているようだった。
そんなルルーシュを安心させるようにルルーシュの唇にキスを送る。
「大丈夫だから…流石に…ルルは初めてだから…クリームとか使わないと…辛いだろうからね…」
その言葉が更に不安を煽ると云うのに…
それでも、ルルーシュはスザクのその言葉に従う…
けなげなルルーシュを見ていると…スザク自身、本当に悪い大人だと思う。
そして、ルルーシュの後孔にそっと指を当てた。
「あ…やだ…そんなところ…」
「だって…僕が気持ち良くなるためには…ここを使うんだ…。あの男だって…僕よりもひどいやり方でここを使っていたんだぞ?あのままだったら…」
スザクの言葉にルルーシュがピクリと反応する。
流石に、これは脅し過ぎだろうか…そんな風に思ったスザクはルルーシュの頬にそっと唇をあてた。
「大丈夫…僕は…ルルを愛しているから…だから…ルルに気持ち良くして欲しいんだ…」
ルルーシュを愛していると云う言葉は本当だ。
これから…誰の手にも触れさせないと云う…その誓いも…
「俺を…?スザクが…?」
「そう…ルルが僕を好きな気持ちよりも絶対に僕の愛しているっていう気持ちの方が大きいんだ…。今、ルルが怯えると解っていて…僕は…君の事を愛している…。全てが欲しいと思う…」
スザクの言葉に…顔を真っ赤にするが…こんな情熱的な告白をされて…スザクを昔から好きだと思っているルルーシュが嬉しくない訳がなかった。
以前よりもちょっとだけ、素直に感情を表すようになったルルーシュ…
顔を赤らめて、困ったような表情を見せる。
「ルル…もう一度云う…。僕を…気持よくして?」
「う…うん…」
戸惑いながらの返事とはいえ、ルルーシュからの了解も得て、スザクは指先に先ほど持ち出したクリームを塗りつけて、ルルーシュのそこをほぐして行く。
「や…気持ち…悪い…」
「大丈夫だよ…すぐに良くなるから…」
そう言って、少しずつ…指を挿入して行く。
そして…ルルーシュの反応を見ながら指を動かして行く…
「や…やだ…スザク…」
「痛い…?」
「痛くないけど…でも…」
涙の滲んでいるルルーシュに…少しかわいそうかな…と思う心と、更に泣かせてみたいと思ってしまう嗜虐心と…混在しているが…
指を動かしながら…ルルーシュの反応が変わった場所を見つけた。
と云うより、既に知るその場所を刺激した。
恐らく、今のルルーシュは絶対に知らないスポット…
「ひぁ…ああ…」
「ここ…いいだろ?」
「スザク…だ…め…そこ…」
明らかにさっきとは違う反応…暫くそこを刺激して、ルルーシュの劣情を煽ってやる。
その間にすっかり準備の出来てしまった自分にルルーシュに傷をつけないように…とクリームを塗りつけた。
「いい?僕も…そろそろ気持よくなりたい…」
「それ…入れるのか…?」
恐怖に揺れるそのルルーシュの瞳を見ていて…また複雑な気持ちが絡み合った。
「そう…これで…僕とルルが一つになれるんだよ…」
そんな風に囁いてやると…ルルーシュが意を決したようにうなずいた。
やはり最初は怖いと思うのは仕方ない…
出来るだけルルーシュに苦痛を与えないようにしてやらなくてはならない…
これだけ準備が出来上がっていても、スザクの中でそれを忘れる事はなかった。
―――愛している…ルル…僕の…ルルーシュ…
そう思いながらゆっくりとルルーシュの中へと…そのスザクの正直な欲望を押し込んで行った…
「ル…ルル…」
スザク自身久しぶりと云う事と、ルルーシュが初めてであると云う事が重なり、スザク自身、思ったよりも余裕がない。
「スザ…ク…」
互いが、その名前を呼び合う…
いくら呼んでも…遠く手の届かないところにいるかのように…
でも、身体も心も…お互いは一緒になっていて…
「ルル…気持ちいい…よ…ありがと…」
さっきまでの余裕なスザクの姿が消えていた。
ルルーシュが苦しそうだが…それでも幸せそうにスザクに微笑むと…スザクはそれだけで我慢しきれなくなり、激しく律動を始めた。
「や…ああ…ん…スザ…やぁ…」
ルルーシュの悲鳴のような喘ぎに…スザクもついに耐えきれなくなり…ルルーシュもスザクから与えられた快感に酔って…
二人は…同じ高嶺へと達して行ったのだった…
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