妄想(無茶振り)バトル02

TURN02 (賞品はルルーシュ=ランペルージ!)
アッシュフォード学園 バトルロワイヤル!U


 バトルが開始され、1時間ほど経っていた。
その時…咲世子にしっかりと拉致され、拘束されたルルーシュが見張り役の咲世子を睨んでいた。
「おい!『R2』の中では命がけで俺に忠誠を誓っていたくせに…アッシュフォード学園に戻ると会長の手下になるのか…お前は!」
ルルーシュのそんな怒りの声も咲世子は流石と云うべきか、何と言うべきか…涼しい顔で受け流す。
「私は…アッシュフォード家に雇われたメイドですので…。それに…ルルーシュ様がどれほどお偉くなられても、ミレイ様には頭が上がらないでしょう?」
にこりと微笑みながらルルーシュにぐうの音も出ないような真実を並べる。
そう…このアッシュフォード学園ではミレイはブリタニア皇帝よりも権力を振るう、独裁者なのだ。
「くっそ…咲世子に『ギアス』をかけた時には、こんな天然な最強キャラだとは知らなかったからな…。こんなの反則だ!」
「まぁまぁ…ルルーシュ様が後悔だなんて…珍しいところを見せて頂きました…」
本当に喧嘩を売っているのかも知れないと…ルルーシュは真剣に思う。
しかし、咲世子からは邪気は感じられない。
そう…本当に天然キャラなのだ。
恐らく、空気の読めないスザク以上の…
「ジェレミア卿でしたら…こうおっしゃって下さるでしょうね…」
咲世子の言葉にルルーシュは頭に『?』を並べる。
そんなルルーシュを見て咲世子が再び口を開いた。
それこそ、本来なら完全に地雷を踏むようなセリフを…
「『うっかりギアスの癖を直さないと、こう云った後悔が増えますよ!』と…」
「(怒)!!」
そうでなくとも貧弱設定のルルーシュが、咲世子にしっかりと逃げられないように拘束されているのだ。
おまけに『一回しか使えない』『ギアス』を使用済みの咲世子に対して、成す術なしである。
ちなみに現在、絶賛暴走中の『ギアス』はC.C.に渡されたコンタクトレンズを装着済みで手足をしっかりと拘束されているルルーシュは、現実問題、完全に『悪代官に捕らわれた姫君』…じゃなくて、『ミレイに捧げられた生贄』として存在しているのだ。
人間…本当の事を言われると怒ると云うが…
ルルーシュもどうやら例外ではなかったらしい。
「まぁまぁ…きっと、あの超人的な身体能力を持つ方々のどなたかがこちらにいらっしゃいますよ…。多分、ここにいらっしゃるのはスザク様ではないかと予想はしておりますが…」
本当に他人事のように咲世子が話している。
本当にルルーシュ自身はブチ切れそうになっているのだが…
この、天然・無敵・スーパーメイドに何を言っても暖簾に腕押しだろう…
「その後が大変だと思うがな…俺は…」
わが身の未来を思ってルルーシュは心の中でさめざめと泣いていた。

 一方、とりあえず、化け物みたいな奴をみんなで力を合わせて…と云う作戦は、(殆どスザク一人の手によって)失敗に終わっていた。
一応、変に邪魔されても困る相手(例えば、柔道部などの格闘技を心得ている者)に関しては片っ端から気絶させていく。
とりあえず、暗黙の了解でスザクが片っ端から失格者を生み出し(その人間離れした体術で一人一輪持つガーベラを奪い去って行く。
将来は、絶対にプロのスリになれる程の髪技で)、アーニャとジノは格闘技をやっていそうな連中を片っ端から、そのラウンズの能力を使って、麻酔を縫ってある針を刺すなり、手刀で背後から首を叩くなりして、半日くらいは眠っているようにしておく。
女子に対しては、ジノは流石に気が引けていたのか、なかなか捌けずにいたのだが…その辺り、アーニャは容赦しなかった。
『女の子の顔に傷をつけちゃいけない…』それだけは守っていたらしいが、ちびっこと思って見縊っていた女子生徒たちに対しては容赦せず、麻酔針ではなく、その体術で気絶させて行っていた。
「そう云えば…カレン…いない…」
アーニャの言葉にジノもはっとした。
あの、『黒の騎士団』のエース…体力大魔王の枢木スザクと互角に戦う化け物女子高生を放置しておけば、後々ルルーシュを奪われてしまう。
「スタートの時…私たちとは反対の方向へ走って行っていたぞ…」
カレンの作戦は、
『とりあえず、生徒の立ち入りが許されているところに隠されているのだから、片っ端からドアと云うドアを開けて行けばいい…』
と云う、最も解り易く、単純明快にして…しかし、この広いアッシュフォード学園でそれを一人でやろうとしてできるのは、恐らく、枢木スザクとカレンくらいのものだろう。
尤も、スザクの場合、そのわんこ属性で鼻が利くと云う、取ってつけたような(和泉独自の)設定のより、そんな面倒な事はしない。
その、自分の持つ、並みの人間の数千倍の嗅覚によって、ルルーシュを探しているのだ。
そして、自他共に『それでルルーシュを見つけられる』と云う確信があった。
「カレン…そう云えば、かくれんぼなんだから…隠れやすいところを探せばいいって言ってた…」
「かくれんぼ?」
「エリア11の…子供の遊びだって…。鬼が、隠れている人を見つけるって言う…」
意外と耳を働かせているナイトオブシックス…
侮れない。
「私の言う事聞く…そう云った男子がいっぱいいるから…その人たちにカレンの確保を…お願いしてくる…。ジノは、スザク…追いかけて…」
そう云って、アーニャはカレン潰しに走りだした。

 後ろから、追いかけてくるジノとアーニャをウザいと思いながらもとりあえず、邪魔になりそうな連中を気絶させてくれて行っているという事で…放っておく事にした。
それに…何だか解らないがアーニャがジノと離れて行っている。
「まぁ…いいか…。そろそろ、ジノを撒くか…」
そう呟きながら、スザクはこれまでよりのスピードよりも速く走り始めた。
恐らく、スザクの足はラウンズの中でもかなり速い方だ。
本気で走ったら、多分、ついて来られないかもしれないくらい速い。
一度、あるテロリストを追っている時、ナイトメアはおろか、来るまではいる事も出来ないような路地に逃げ込まれた時、スザクとスザクの下に着いている小部隊を率いて行ったのだが…
5分も経たないうちに誰もスザクの足に着いて来られず…当然と云えば当然だが、その逃走犯もしっかり捕まえていて…引き渡そうとした時…誰もおらず…
しかも、不案内なビルの廃墟の並んでいるところで…いよいよ迷子になってしまった。
その時、その持前の犬並みの嗅覚と人間離れしたその肉体で逃走犯を縛り上げて、小部隊全員がぶっ倒れているその場所へと戻った経験がある。
流石に、ジノもアーニャもラウンズなのだから、そんな小部隊の隊員たちの様な事はないと思うが…それでも、彼らがスザクの足に着いてくると云う事はまずないだろう。 そう思いながら、加速して、ジノを撒いた。
そして…スザクは目的の場所へと向かっていく。
気になったのは、スタートの時点でカレンの姿が見えなくなった事だ。
ジノやアーニャの場合、同じラウンズなのだから、大体の特性を知っているが…
カレンの場合、あまりナイトメアなしのタイマンをしたという話を聞いた事がない。
ただ、神根島でのあの動き…只者ではないとスザクの中の何かがそう訴えている。
とにかく、普段はあまり使わない頭を、ルルーシュの為ならフル回転させ、それなりに仕えるところを見せるのだが…
だが、ルルーシュが手に入るという利点がない場合には、その頭は一切働いていないように思える。
ナナリーが『行政特区日本』を掲げて、『黒の騎士団』が参加するという表明を『ゼロ』がする直前に『ゼロ』のいない『黒の騎士団』を追い詰めた事があったが… その時に、『ゼロ』の作戦によって失敗している。
しかし、あの時、あの作戦は失敗して正解だった。
あのメタンガスが充満している海上で発砲などしたら…『ブリタニア軍』『黒の騎士団』関係なく木端微塵だった。
―――ルルーシュがいないなら…どうでも良かったんだけどね…
シャルル皇帝も真っ青になりそうな一言が頭を過って行く。

 そして、スザクに撒かれてしまい、やっとの思いでジノはカレンを見つけたのだが…
後でミレイの怒りを買う事は必至な状況に…ジノは顔を青ざめている。
「お…おい…カレン…」
恐る恐るジノはカレンに声をかける。
カレンはジノを睨みつけながら返事をする。
「何よ…」
この惨状を見て、青ざめないアッシュフォード学園の生徒は…多分、ジノの目の前にいるカレン=シュタットフェルトくらいだろう。
「なんで…こんなにドアが破壊されているんだ?」
恐る恐るジノが聞いてみる。
答えて貰うのが怖い気もするのだが…
「だって…かくれんぼでしょ?見つからないようにカギかけているのかなぁ…って思ったんだけど…そうじゃなかったみたいね…。でも、ルルーシュの事だから、見つからないようにどんな姑息な手を使うか解ったものじゃないでしょ?」
確かに…確かにルルーシュの本質をついている一言ではあるのだが…
ただ…今回の場合、ルルーシュは『ミレイの生贄』として、拉致され、監禁されているのだ。
それに、ミレイは『一般の生徒が普通に立ち入りできるところに隠してあるから…私もどこにいるか知らないけどね…』と云っていた。
ミレイが知らなくとも、隠した人間はそのルールを知っている筈で…
普通に…ドアを蹴破らなくとも普通に入って行ける場所に、ルルーシュはいる筈なのだ…
「それ…ミレイの言っているルールから逸脱しているし…。しかも、ルルーシュ先輩…拉致・監禁されている筈…。多分、逃げ出さないようにどっかに縛られてさ…」
ジノの解説は尤もである。
「あ、そっか…」
今更気づいたのか…と怒鳴りつけたい衝動に駆られてもこの状況なら許されるかも知れないと思ったジノは…ちょっとばかり甘かった。
その次のカレンが恐ろしい事をいいのけたのだ。
「じゃあ、このドア、あんたが壊した事にしておいてよ…ナイトオブスリーさん…」
「え???何で私が?」
「だって…私だってミレイ会長に逆らいたくないし…。とりあえず、私は『ゼロ』を取り戻せればそれでいいし…」
カレンがあっけらかんと恐ろしい事を言っている。
ジノはこの学園に来て、なんとも恐ろしい者を見た気がした。
「じゃあ、ジノ、後で会長にそう報告しておくわね…。あ、あんまり下手な事すると、『カレン=シュタットフェルト親衛隊』とやらが黙ってないから…」
一体何の脅迫ですか?それは…と…ジノが涙目で訴えている。
所詮、いくらもてると自慢していても、いざとなった時の女の扱いなどこの程度の男に…カレンが屈する訳がないのだ。
脱力しているジノをその場に置き去りにして、カレンは再び走り出した。
ジノは…その場に崩れ落ちて…すっかり放心状態…

 戦いも大詰めとなってきた。
スザクは礼拝堂の物置部屋に咲世子と共にいたルルーシュを見つけ出す。
「まぁ…やっぱり…」
咲世子がにこりと笑ってそう第一声を放った。
「ここであなたを倒さなくてはいけないのですか?咲世子さん…」
スザクがにこにこ笑いながらスザクを見ている咲世子に凄んで見せる。
しかし、やはりというかなんと云うか、咲世子には完全な暖簾に腕押しな状態である。
「別に…お望みならば…そう致しますけれど…私、ルルーシュ様が逃げ出さないようにとミレイ様に仰せつかっているだけですので…」
と云いながらも、すっかり臨戦態勢に入っている咲世子がスザクの目の前にいる。
「言っている事と、やっている事と、正反対な気がするのは僕の気のせいですか?」
「多分…気のせいですよ…」
『天然+空気の読めない』コンビがルルーシュの目の前で臨戦態勢に入っている。
「でも…」
相変わらずの笑顔で咲世子が言葉を続けた。
「なんですか?」
「ナナリー様からはルルーシュ様の御迎えに来たのがスザク様であった場合、全力で叩きのめして欲しいとのご命令ですので…」
咲世子のその言葉にルルーシュも驚いている。
ルルーシュの知るナナリーは…大人しくて、兄に守られているべき存在だ。
それに…スザクの事が好きだった筈…
「あんの腹黒な妹め…。あれは絶対にユフィの影響だな…」
スザクの一言にもルルーシュは驚きを隠せない…
スザクが…あのスザクがナナリーとユフィを悪く言うなんて…信じられなかったのだ。
しかし…目の前ではスザクと咲世子がすっかり臨戦態勢に入っているのだ。
「さ…咲世子…スザクはガーベラを守りながら戦いなのだろう?それは…アンフェアだ…。とりあえず、このままスザクに引き渡して…ナナリーのところへ連れて行ってくれ…」
ルルーシュのその一言に…スザクは自分にとって都合のいい部分だけを拾い上げる。
「ありがとう…ルルーシュ…。でも、ルルーシュ…君の事は『ルールを守って』手に入れてみせるよ…。もう少しの辛抱だ…」
まるでお姫様を助け出す皇子様の気分にでもなっているのだろう。
「ごめんね…僕がふがいないばっかりに…ルルーシュをミレイ会長の生贄になんてしちゃって…。この戦いが終わったら…絶対にそんな事はさせないから…」
その一言を皮切りに…二人の壮絶バトルが始まった。


『TURN01』へ戻る 『TURN03』へ進む
『request』へ戻る 『Novel』へ戻る トップページへ

copyright:2008-2009
All rights reserved.和泉綾