ブリタニアの宮殿内でルルーシュに会った後…スザクはシュナイゼルの軍に配属された。
ブリタニアはあれからも植民エリアを広げ続けている。
ナイトオブラウンズに任じられたスザクは、皇帝の命令ともなれば従わなくてはならない。
エリア11で『黒の騎士団』が敗れ、『ゼロ』の死亡が発表されてしまい、ブリタニアと戦闘状態にあった国々は希望を断たれたようで、出撃すれば、そのまま植民エリアが増えたという報告をするのが当たり前になりつつあった。
スザクが『ゼロ』である、ゼロを捕らえ、ブリタニア本国に連れ帰った事によって、世界の戦況自体が一気に塗り替えられた。
そして、ゼロは前線には出てこないし、シュナイゼルに着いて戦場に赴く事もないが…シュナイゼルとの会話の中でブリタニア軍の為に戦略的な会話もしている。
シュナイゼルの作戦を見て行くと…確実にゼロが考え出した作戦がちりばめられている事がよく解る。
スザクは『黒の騎士団』を相手に何度も戦っている。
そして、ゼロはスザクの親友だった。
だからこそ…解る事があった。
―――今のゼロは…『ゼロ』ではない…。そして…日本の敵…
そう考えざるを得ない状態だ。
元々、スザクがユーフェミアの仇を取りたいと考えた末での行動だった。
今の世界に『ゼロ』はいない…
『黒の騎士団』も絶対的なリーダーを失って今では壊滅状態…
「これで…本当に良かったのだろうか…」
今更な疑問が口から飛び出す。
元々、日本人を救いたくて、日本人からもブリタニア人からも『裏切り者』としての誹り…あるいは批難の目を向けられる事を承知で名誉ブリタニア人となり、ブリタニア軍に入った。
そして…どこかで生きていると信じていた、幼い頃、本当に短い間だけ共に過ごし、笑いあった幼馴染達が安心して生きていける世界が欲しかった。
それにもかかわらず…結局、『裏切り者』は『裏切り者』のまま…否、かつてよりもそう云った誹りは大きくなった気がする。
枢木スザクがナイトオブセブンとなった事はエリア11にも伝えられた。
そして、エリア11に暮らすイレヴンと呼ばれる日本人たちの殆どがスザクを『『ゼロ』を売って地位を手に入れた憎むべき男…』と云う評価を下している事は知っている。
確かにその通りだった。
ナイトオブラウンズの地位は欲しかった訳ではなかったが、結果的にそうなっているのだから言い訳のしようもない。
敬愛する主を失って、大切な親友を失って、心から守りたいと思い続けている愛する人を失って…一体何をやっているのかと自問自答を繰り返す日々だ。
ゼロとルルーシュはと云えば…
結局帰ってきたはいいが、ただ、アリエス宮で暮らして、父や異母兄姉たちのおもちゃにされている気がしてきた。
元々、生母マリアンヌはその強さも称賛に値するが、その見た目の美しさも高い評価を受けていた。
そして、この二人は一卵性双生児として瓜二つ…母、マリアンヌには生き写しと云った感じで、行く先々の注目を集めている。
それ故に、父や異母兄姉達が心配したのか…何かと構いたがる。
ゼロとしては、『皇子』と云う身分だけでなく、きちんとした地位も欲しいと願っている。
ブリタニアの皇族とは…日々勢力図が変わっていく。
確かに皇帝である父の権力と、宰相であるシュナイゼルの実力は、誰もが認めるところで、この二人が生きている限り、この二人のお気に入りでいられれば、安泰だろう。
しかし、それでは、二人に飽きられた時点でゼロもルルーシュも孤立無縁と云う立場になる。
母の後見をしていたアッシュフォード家も今はブリタニア本国ではなく、エリア11に移り住んでいた。
つまり…ここでこの双子は孤立無援の状態だし、母の身分の事もあり、この双子の後見らしい後見はアッシュフォード家しかないのだ。
これが、普通の庶民であったなら、苦労は増えるかもしれないが、生きていく事は出来る。
ブリタニアは実力主義…その実力さえ示せればどうとでも生きていける。
しかし、ブリタニアの宮殿の中では、実力だけで何とかなるものでもない、魔の領域だという事は、身分のない母の腹から生まれてきた双子達には嫌と云うほど解る。
実力以外にも、大きな財力と権力を持つ貴族の後見、それらによって構築される護衛隊…
金や権力があればあるほど強固な者が創られる。
そして、それらを失った時に人は離れていく…
元々双子にはそんなものは皆無と言ってよい状態だった。
だからこそ…エリア11で足を失ったルルーシュの為にもゼロは『皇子』と云う身分よりも、地位を欲するようになった。
実力を見せれば、使う側も利用できるコマは大切にする。
記憶はなくとも…ゼロは『黒の騎士団』を率いて世界を…特に世界の1/3を支配する神聖ブリタニア帝国を震撼させたほどの男だ。
その時の記憶はなくとも潜在能力は健在だ。
シュナイゼルの離宮に頻繁に通い、そう云った戦略の会話で少しずつ、その実力を見せる様にしている。
そして…今ではシュナイゼルもそう云った、ゼロの実力に関しては認め始めている。
―――昔…この双子達とチェスをしているのが一番楽しかったな…そう云えば…
ゼロと会話しながら、シュナイゼルは昔の事を思い出す。
あの子供が、こうして、実力を発揮し始めている事にシュナイゼルも頬を緩めるのだった。
やっと、シュナイゼルから解放されたゼロは、一目散にアリエスの離宮へと向かう。
本当は、ルルーシュもいれば、もっと色んな戦略が生まれてくるのかも知れないが…それでも、ゼロとしてはルルーシュをそんな血なまぐさいところへ連れて行くのは嫌だった。
戦争によってルルーシュは両足の自由を失っている。
そんな戦争の為の話に…ルルーシュを呼びだすのはゼロには出来なかった。
ルルーシュは…不器用なところはゼロとそっくりだが、ゼロと比べると、心が優しい部分がある。
優しさにも色々な形がある。
表に見える優しさと…表に見えない優しさ…
ルルーシュはどちらかと云えば、後者に属する。
無関心を装って…最後に誰にも気づかれないように全ての後始末をつける…
自ら悪役を買って出る…そんな芸当ができるのは本当に心根の優しいものでなければ出来ない事だ。
そんなルルーシュの裏側を知っている事に優越感もあったが…見ていて辛くなった。
だから…守りたいと思う。
そして…そんな、ルルーシュに戦争の話なんてさせたくはなかった。
「ただいま…ルルーシュ…」
最近では地位を得る為にシュナイゼルの元へ行くことが多くなっている。
ルルーシュはそんなゼロを見て、面白くなさそうな顔をする。
「おかえり…異母兄上のところは…楽しかった…?」
棘のある言い方…
流石に機嫌が悪いのは自分の所為だと思うと、バツが悪いのだが…それでも、こんな風に、ルルーシュ以外の人物のところへ通っている事に不満を漏らすルルーシュを見ていると、不謹慎ながら嬉しくなってしまう。
「そんなんじゃないよ…。でも…済まない…ルルーシュを一人にして…」
本当に申し訳なさそうに、そして素直にルルーシュに謝る。
いつも、誰に対してもポーカーフェイスを保っているのだが…ルルーシュだけは例外なのだ。
「俺は別に…一人でも平気だ…。ゼロが…異母兄上の方がいいって言うなら…別に…」
どんどん尻すぼみになっていく言葉は今のゼロにはあまりに刺激的で、つい、ルルーシュに力いっぱい抱きついてしまう。
「ルルーシュ!」
突然のゼロの抱擁にルルーシュも驚くが…ゼロがこんな姿を見せるのはルルーシュの前だけだという事を知っているだけに、ちょっと、嬉しくなる。
「は…離せ…苦しい…!んん…」
ルルーシュのあまり説得力のない抗議にゼロはそのまま唇でその言葉を塞いだ。
部屋の中に…ピチャッピチャッと云う水音が響いている。
静寂の中だけに…その音だけが響いている。
「ん…あ…」
先ほどから言葉など殆ど紡げなくなっているルルーシュはベッドの上で横たえられて、半裸の状態でゼロになされるがままになっている。
初めてではないし、こうなる事を嫌だと思ってはいないのだが…
でも…未だに羞恥の方が先に立ってしまい…不自由な身体を何とか捩ってゼロから逃れようとするが…
ゼロは決してそれを許さない。
「ダメだ…ルルーシュ…」
そう云って、ほぼ力が抜けきっているルルーシュの身体をふわりと抑え込む。
力では絶対にかなうはずない事は解っているくせに、往生際の悪い事だと思うが…
「だ…だって…」
顔を紅くして…と云うより、白磁の様な全身がほんのり桜色に染まっている。
快楽に溺れてしまう事に恐れを感じているらしく、こうした行為を中々許容できずにいる。
―――そんな、涙目で訴えられたら余計煽るだけだという事…まだ覚えていないらしいな…
そう考えながらゼロは満足そうな笑みを湛えながら、さらにルルーシュの弱い部分の刺激を強めて行く。
その時のビクッと反応して、一瞬体を硬直させるルルーシュは、さらなる快感にうち震え、小さな子供がいやいやをするように首を左右に振る。
「も…やめ…」
「どうして?」
ルルーシュの懇願に対してゼロは意地の悪い笑みを見せながら疑問を投げかける。
その時のルルーシュの反応もゼロの好きなルルーシュの表情の一つだ。
「このまま…じゃ…」
「私を一人置いて…イキそうなのか?」
答えを全て聞かずに答えを出すゼロに既に桜色に染まっているルルーシュの身体の色がさらに濃い色となっていく。
「ご…ごめ…」
ゼロの一言にルルーシュが子供の様な泣き顔を見せる。
ゼロはそんなルルーシュの涙を綺麗に舐めとっていく。
「なら…私も…一緒にイキたい…。いい?」
ひどく優しい…そして、絶対に逆らえない声でそんな風に云うのは卑怯だといつもルルーシュは思うが…
それでも、その一言を口にされたら、頷く事しか出来ない…。
「ありがとう…ルルーシュ…」
そうして、念入りの解したその場所へと…その屹立を押し込んでいく。
「あ…っはぁ…んん…」
その圧迫感にルルーシュが思わず声を上げる。
「ルルーシュ…大丈夫かい?」
やる事は強引なくせに…こう云う時はいつも細心の注意を払う。
そんなゼロが憎たらしいと思う。
「だ…い…じょうぶ…」
ルルーシュの身体が震える。
そして、その細い腕をゼロの首へと伸ばし、ゼロの身体にしがみつく。
足が不自由で、足をからませて…と云う事は出来ないが…
その動きに合わせてゼロもルルーシュの身体に密着させるようにルルーシュの身体を起こしていく。
「あ…やぁ…」
身体の角度が変わったことで、当たる場所が変わっていく。
その中でルルーシュが敏感に感じるところに当たったらしい。
「今の声は…気持ち良かったのか?ルルーシュ…」
まるでルルーシュの羞恥心を煽るかのように耳元でささやく。
すると、ルルーシュは案の定羞恥に身体を震わせ、ゼロが挿入っているその口に力が入ってしまう。
「いい答えだ…」
そう云って、ゼロはルルーシュの身体を上下に揺らしていく。
「あ…ふぁぁ…ん…ゼ…ゼ…ロ…」
今、ルルーシュの身体を支えているのは…ルルーシュの身体を抱いているゼロの腕だけで…
ゼロの律動によって何度もバランスを崩しそうになっている。
「ルルーシュ…ルルーシュ…」
ゼロも感極まってきているのか…声に先ほどの様な余裕はなくなっている。
双子の…瓜二つ…他人から見れば同じ顔に見える二人が…お互いを求め、睦み合う。
それは…世俗的なものとは違った…神秘的な何かを感じるほど…美しい光景で…
誰もこの場面を目にした事はないが…
でも、誰もが思うだろう…
この二人の姿を見て…美しい…と…
「ゼロ…俺…もう…」
ルルーシュが限界を訴え始める。
ルルーシュのその言葉にゼロも感極まったように告げる。
「ああ…私も…」
二人の律動が急激に加速し、そして…甲高い声と共に…二人はその場に崩れ落ちて行く。
荒い息をしながら…ゼロは、ルルーシュの身体を横たえてやる。
元々体力のないルルーシュには今は相当辛い状態であろうと予想はつく。
「ルルーシュ…」
そう声をかけながら、汗で寝れている前髪をそっとよけて、その額にキスを落とす。
ルルーシュの方は肩で息をして、目をつむったままだ。
「愛している…ルルーシュ…」
何度言っても足りないその言葉をルルーシュに贈る。
ルルーシュは誰にも渡さない…その決心が改めてゼロに使命感を強めて行く。
自分たちを守るのは…自分たちでしかないと…
「ゼロ…」
力のないルルーシュの声が耳に飛び込んできた。
「なんだ?ルルーシュ…」
ゼロは優しい声で聞き返す。
「もう…一人で…頑張らないで…。異母兄上のところへ行く時は…俺も行く…」
ルルーシュの言葉にゼロが驚いた表情を見せる。
ルルーシュはそんなゼロの気配を感じたのか、細く目を開けて言葉を続ける。
「俺は…大丈夫だから…。俺も…ゼロの役に立ちたい…。俺達の身は俺達で守る…。俺にも何か…できる事は…あるだろう?」
「ルルーシュ…」
これまで、ゼロのする事に対しては何も口を挟んで来なかったルルーシュが…初めてゼロにそう言ってきた。
その事に…ゼロは、ただ、ただ、驚いた視線を向ける事しか出来なかった…
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