volume 03


 私、ミレイ=アッシュフォードはまたまた、女性の皆さんに喜ばれる企画を考えちゃいました!
その名もコスプレ祭り!
そんな、平凡なイベントなんてつまらないって?
ノンノン♪
このミレイさんがただのコスプレなんてやると思っているのかしら?
どうせやるなら女の子たちが楽しめる…ついでに男子も楽しめる企画でなくちゃ…。
私は女の子だから、私の楽しめる企画であれば、女の子たちもきっと喜んでくれる筈!
生徒会には、女生徒を楽しませる為のツートップも揃っている事だしね。
あの二人をメインにみんなに披露すれば、絶対に女の子はおろか、写真部や美術部のみんなにも喜ばれる筈!
男女逆転祭りの準備段階で演劇部と写真部がもの凄く喜んでくれて、今では生徒会規格に積極的に協力してくれるようになったしねぇ…
ルルーシュとスザク…ホント、有難い人材だわ…。
それに、ルルーシュの反応がいいのよねぇ…。
あの仏頂面が、こういう企画の時には、いつもと違う表情を見せてくれる。
それに、スザクとペアにしておくと、絵になるのよねぇ…
あの二人の怪しげな関係を強調すると、女の子たちは大喜びだし、スザクも楽しそうにしているしね。
スザクが編入してきたばかりの頃には、中々溶け込めずにいたみたいだけど、ルルーシュのおかげで、随分溶け込んでくれた。
それに、スザクが来てくれたおかげで、ルルーシュの表情も変わった。
スザクへのお礼も兼ねて、こういう形で楽しんで欲しい…。
スザクは軍の仕事でなかなか学園生活を楽しめない事も多い。
だから、スザクが参加できるイベントは楽しくしたいし、笑って欲しいしね。
こんな風に楽しいイベントは私も楽しいし、みんなも楽しんでくれる。
だから…やめられないのよねぇ…

 ミレイの言葉に生徒会室はまたも呆然としていた。
「会長…また…無茶な企画を…」
「仕事…凄く多くないですか?私たち、くじ作って、ペアの登録して、衣装を集めて…」
何を言い始めるんだか…と云う表情で、生徒会メンバーの視線がミレイに集まる。
「えっとね…ペア企画だから、そのペアのジャンルはちゃんと私が決めたから…。ここに書いてある通りにくじを作って頂戴!で、ルルーシュ、あんたはこの表をパソコンに打ち込んで、登録表を作って…。リヴァルはシャーリーと衣装探し…。演劇部にも協力は頼んであるから…♪」
いつもの事ながら、ある程度の準備を整えて、誰にも文句を言わせない…と言った感じで企画書を作って来るのだ。
この会長…生活の全てがイベントの為にあるらしい…。
「何これ…お嬢様と執事?メイドとご主人様?碇●ンジと綾波○イ(プラグスーツ)?何のコスプレですか…!?完全にオタク向けのキャラ設定じゃないですか…」
「オタク限定にしなくてもいいでしょう?きっと、喜ぶ人たちはいっぱいいるわ!」
シャーリーの驚いた声に、ミレイはさらっと答える。
それに、こんなカップル企画だと、両想いの恋人同士も喜ぶ筈…ミレイの算段であった。
生徒会のメンバーたちは、この、下準備のめんどくさい企画に大きなため息をつくしかなかった。
「で、本番の俺達は参加者じゃなくて、裏方でいいんですよね?」
ルルーシュにとって一番重要な問題であった。
これまでにも、コスプレ企画には泣かされてきているルルーシュとしては、本番は絶対に裏方に徹したかった。
他のメンバーが参加していても、自分は裏方…もしくは、不参加にしたかった。
「何言っているの…。ルルーシュが本番に出なくてどうするのよ…。多分、女子の半分はあんたの女装とか、自分のお嬢様の恰好につき従う執事のルルーシュを期待しているに決まっているじゃないの…」
さらっとルルーシュの最後の望みを打ち消す言葉がミレイから発せられた。
ただ…みんなの気づかないところで、ミレイの言葉にぴくっと反応した生徒がいた。
ここまで一言も話す事なく、様子を伺っていた…枢木スザク…。
スザクの中で、何か色々思い立っていたようだが…ここでばれる訳にもいかないらしく、この場は完全にスルーした。

 そして、くじ引き当日…。
生徒たちの様々な思いが交錯する中、行われた。
結局、生徒会メンバーも前日までに出来うる限りの準備をして、会長のミレイが司会を務めるという事で、他のメンバーは強制的に参加させられる事になった。
コスプレ姿をして、基本的にはツーショットで学園内を闊歩する…簡単にいうとそんな形なのだが、一応、その衣装の役割を果たさなければならないという事になっている。
ルルーシュ他、生徒会メンバーはかなり疲れた顔をしていた。
スザクも慣れない頭脳仕事に体力的にはともかく、精神的にはかなり疲れているようであった。
「俺達…なんでこんな目に遭ってまで、会長のイベントに付き合っているんだ?」
ぐったりしながらルルーシュが周囲の生徒会メンバーに問いかけた。
「ここでは…ミレイ会長が王様だから…。あ、違うか…女王様か…」
流石にシャーリーもへとへとらしく、疲れた声で返事をする。
とりあえず、くじ引きの準備でも大わらわだった。
そのくじ引きと云うのが、お祭りの屋台のサメつり方式でやるとミレイが言い始めた為、そんな物の仕組みなどよく解らないメンバーたちが四苦八苦しながら作り上げていた。
長い紐の先にくじの番号が付けられていて、その番号でコスプレ衣装が振り分けられるという事なのだが…どうしても、数が多くなると絡まってしまう。
その解決にかなりの時間を要してしまい、前日の夜中に出来上がったという訳である。
「とりあえず、残りもので、俺達はくじを引くか…」
「そうね…妙なものが残っていなければいいけど…」
そう云いながら、くじ引きと云うには大掛かりなセットをエントランスに運ぶ事になった。

 エントランスにつくと、生徒たちが集まっていた。
なんだか、さまざまな思いが交錯している雰囲気で、ある意味、圧巻とでもいうのだろうか…。
一応、早い者勝ちという事で、くじを引く順番となっているが、所詮はくじ引きなので、順番も減ったくれもないのだ。
全校生徒が並んでいるので、かなりの行列で、生徒会メンバーたちが周囲で並んでいる生徒達の誘導をする事になった。
ミレイのイベントは、いつも突然で、生徒たちは楽しんでいるようなのだが、生徒会メンバーはかなり大変な仕事となる。
昨夜からのくじの準備に加えて、興奮ぎみの生徒たちの誘導はかなりの重労働である。
「ルルーシュ…大丈夫?顔色…悪いよ?」
スザクがふらふらになっているルルーシュの傍に駆け寄って声をかけた。
実際に、訳の分からないサメつり方式などと云うくじの仕組みなどを計算し、組立時の管理や指揮はルルーシュがやっていた。
かなりの疲労がたまっているのだろう。
「だ…大丈夫だ…」
ルルーシュは強がっては見るものの、元々体力に自信のないルルーシュである。
「リヴァル…ごめん…ルルーシュを保健室に運んでくる…。それまで、ちょっと席を外してもいいかな?」
リヴァルもルルーシュのふらふら加減を見て、流石にダメとも言えず、『イエス』のサインを出した。
スザクはルルーシュに肩を貸す形で校舎の中に入って行った。

「とりあえず、休んでいて…。僕とルルーシュの分は、残った二つにして貰うから…」
 スザクはそう云って、ルルーシュをベッドの上に腰かけさせた。
「悪い…スザク…」
「いいよ…暫く休んでいて…。僕はリヴァル達のところ、手伝ってくるから…」
そう云うとスザクはルルーシュを一人保健室に残して出て行った。
ルルーシュはベッドの上に横になり、はぁ…と大きく息を吐いた。
睡眠不足と、貧血だろうか…。
ここのところ、生徒会業務に黒の騎士団の活動の作戦を考え、ルルーシュとしての普通の生活もあり…
健康管理には気をつけてきたつもりではあったが…。
目を閉じると、急激に睡魔が襲ってきた。
―――情けない…
そんな風に思いながら、そのまま眠りの世界へと落ちて行った。
その後、何時間眠っていたのだろうか…
ふと目を覚ます。
ベッドの隣では、生徒会業務に戻った筈のスザクが腰かけていた。
「大丈夫?あれからもう、3時間経っているけれど…」
「そうか…いつ眠ってしまったのかさえ解らない…。多分、スザクが出て行ってすぐに眠ってしまったんだろうな…」
「一体どんな生活をしているのさ…。ナナリーが心配してた…」
少し、怒ったような口調でスザクがルルーシュに言った。
「ごめん…」
理由を言えない後ろめたさもあり、ただ、謝った。
そんなルルーシュを見て、やれやれとため息をついてスザクは2つの封筒をルルーシュに見せた。
「ルルーシュ…僕と君のくじだよ…」
そう云って、サメつりの紐の先につけてあった封筒だ。
その片方をルルーシュに渡した。

 ルルーシュはその封筒を受け取り、中身を取り出した。
「なんて書いてあるの?」
その様子にスザクはルルーシュに尋ねた。
「執事A…スザクは?」
ルルーシュの言葉にスザクも封筒を開けた。
「お嬢様A…だって…僕がお嬢様?」
くすくす笑いながらスザクが云う。
どんな偶然だ…とルルーシュは思うが、この辺りはスルーしてやる事にした。
きっと、くじ引きであると聞いた時、ミレイと取引でもしたのだろう…。
軍の方は休みを貰って、生徒会を優先するから…とでも言って…。
そう云えば、ここのところのスザクの生徒会業務の出席率は前代未聞に高かった。
それに、ルルーシュがやたらと女装する事を渋っていたから、この選択をしたのだろう。
「スザク…楽しいイベントになるといいな…」
「うん…そうだね…」
そう云いながら、二人は声を出して笑い合った…。

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