volume02


 今日は、この間、生徒会メンバーが全員揃った時に私が提案した『男女逆転コンテスト』の本番♪
アンケート集計は結構時間かかって大変だったけれど…私が見たいと思っていたペアがちゃんと出てくれた♪
まぁ、ルルーシュが女装してくれると、女生徒のウケはいいし、男子生徒達がルルーシュの写真欲しさに生徒会での力仕事とか引き受けてくれるから…だから、ルルーシュを女装させるのはやめられない…。
ただ…人気投票は、やっぱり、私とのペアじゃなくってちょっと、残念だったけどねぇ…。
ルルーシュは…あんな朴念仁だから、私が言わなければ絶対に私の本当に望んでいる事なんて気がついてなんてくれないだろうけど…。
と云うか、普段の私の態度では、『そんな冗談は、寝言だけで十分です…』なんて、云いかねないけれど…。
でも、私はそう云うルルーシュが気に入っているんだけどね…。
それに、ルルーシュはなんだかんだ言って私の我が儘に付き合ってくれてる…。
そう云うルルーシュの甘さに付け込んで、ルルーシュで遊ぶのが大好きな私!
今日のコンテストの結果は…うふふふふ…

 前日からクラブハウスでスザクに見張られてしまったルルーシュは当日、逃げ出し損ねた。
絶対に拒否したい『女装』と云う名の愚行にほとほと頭を抱えてしまう。
「ルルーシュ、おはよう…」
今日も清々しく、そして、腹が立つほど爽やかにルルーシュに挨拶してきたのは、ミレイ会長の命令通り、ルルーシュが逃げ出さないように見張っていたスザクである。
「お前…なんでそんなに楽しそうなんだ…」
うんざりしながら爽やかな顔をしているスザクに尋ねる。
「いいじゃないか…こういうイベントでもないと、ああ云う変な恰好出来ないしさ…」
「いや、俺はしたくないから!」
「ええ?どうしてさ…ルルーシュ、凄く美人なのに…」
わざとなのか、天然なのか、ルルーシュとしては一番聞きたくないセリフをさらっと口にするスザク…。
「それ…褒めてないだろ…」
「え?僕は褒めているつもりだけど…」
「なら、なおさら悪いわ!」
生徒会のイベントだから、当然の事ながら、ナナリーにも知られるところとなり…。
「あ、お兄様、おはようございます…スザクさん、今日はお兄様をお願いしますね…」
何とも嬉しそうなナナリーの言葉に、更にルルーシュは頭を抱える。

 結局、ルルーシュはスザクに引きずられて、生徒会で用意した控室に連れて行かれる。
そこには、完全にミレイ会長の趣味に走ったと思われる衣装が2着…かけられていた。
「わぁ…これ…凄いね…」
「……」
「ルルーシュは、体の線が細いからいいけど…僕はちょっと困るのかなぁ…」
「……」
そこにかけられていたのは…思いっきりゴスロリな衣装であった。
まるで、フランス人形が着ていそうなふわふわしている衣装…。
白基調のものと黒基調のものが2着…かかっていた。
そして、ご丁寧にふわふわのウィッグまで準備されていた。
「こ…こんなもの!着られるかぁ!!!」
ルルーシュはその衣装を見て、わなわなと拳を握り、震わせる。
「え?ルルーシュなら絶対に似合うと思うけどなぁ…。この黒いのは多分、ルルーシュのイメージなんだろうね…」
「…スザク…さっさと帰るぞ…こんなの付き合いきれるか!」
まったくあの人は…とぶつぶつ言いながら、スザクの腕を引っ張り出て行こうとする。
そして、扉を開くと、にこにこしている演劇部の女生徒が何人か並んでいた。
その中には以前、男女逆転祭りでルルーシュを着せ替え人形にした演劇部部長もいた。
「さぁ…みなさん…お二人の準備を手伝って差し上げて!」
「「「「「「イエス、マイ・ロード!!」」」」」」
そこにいた女生徒たちが、一斉にルルーシュとスザクに襲い掛かってきた。
「ランペルージ君?私達から逃げられるとでも思われたのですか?甘いですわ!女性の煩悩に勝とうなんて…100年早くてよ…ふふふ…うふふふ…あははははは…」
演劇部の部長の高笑いがそこら中に響き渡る。
「な…なんか…演劇部の部長さん…ゼロみたいな笑い方だね…」
苦笑しながらスザクはツッコミにならないであろうツッコミを入れる。

 1時間後…すっかりメイクまでされて二人の着替えは終了した。
「まぁ、素敵ですわ…。ランペルージ君も枢木君も…。あなた方お二人なら絶対に優勝してくださいますわね…」
「「………」」
ここまでの騒ぎで二人はすっかりやつれてしまった。
「ランペルージ君…いつでも演劇部にいらしてね…。あなたなら大歓迎ですわ…」
「じょ…冗談じゃありませんよ…」
「まぁ、残念…。気が変わったらいつでもいらしてね…では、私たちはこれで…ごきげんよう…」

 そう云いながら演劇部の面々は去って行った。
「ルルーシュ…大丈夫?でも、やっぱり演劇部って凄いね…。ルルーシュは当然だけど、僕でもそれなりに見えるもんね…」
スザクは全身鏡を見ながら感心している。
「お前…どうしてそんな平気な顔していられるんだ?」
「え?だって、たまにこう云う変なカッコして見ても楽しいじゃない…。ルルーシュも綺麗だし…」
そう云いながらスザクはルルーシュの頬に触れる。
ルルーシュは怒る気も失せたのか、下を向いてため息をつく。
「ね、ちゃんと見せてよ…。みんなに見せる前にさ…」
「スザク…」
この二人は今のこの状況で見つめ合っていて、他の誰かに見られたら…特に女子に見られた日には黄色い声の嵐に見舞われる事は自覚しているかどうかは定かではない。
ただ、今の二人は完全に二人の世界となっていた。
そして、ルルーシュは顔を背けながらも、スザクに今の姿を見せる事になるのだが…。
普段、誰に対しても不遜な態度をとるが、ナナリーと、スザクにだけはどうしてもかなわない。
「やっぱりかわいい…誰にも見せたくないなぁ…」
「なら…二人で逃げるか?」
ルルーシュのさりげない言葉にスザクが驚く。
「え?ルルーシュ?」
そう云った感情に疎いルルーシュは時々、スザクに対して急所を突くような言葉を口にする。
スザクが驚いて、困ったような顔をしていると、すかさずルルーシュが続ける。
「だって…見せたくないんだろ?」
スザクが何に驚いたかをちゃんと把握している様子もなく、ルルーシュはさらっとそんなセリフを吐いている。
ルルーシュは、何も解っていない。
だから、こんなセリフを吐けるのだ。
いつも、スザクに『恥ずかしい奴…』と云っているルルーシュだが、実際には、その天然さ加減で行っているセリフの中で、他人がどういう捉え方をしているかをルルーシュが知ったら、顔を真っ赤にして自分の行動を反省する事になるだろう。
「ルルーシュ…君…」
やや困ったような顔をしてスザクがルルーシュに向き直る。
こう言ったナチュラルなルルーシュはかわいいと思うのがだ、時々、ものすごく大きな罪を犯していると思えてしまうのは、スザクのせいではないだろう…。
「?」
ルルーシュはどうやら、自分の言ったセリフの重大さに気づいていないようだ。
こうした、ルルーシュの言葉に、何度、理性と本能が全面対決してきた事が…。

「まぁ…いいか…。そろそろ行こうか…ルルーシュ…。早く行かないとまた、会長に怒られちゃうよ…」
「ん?あ…ああ…」
 スザクは困ったような笑みを浮かべてルルーシュの手を握って生徒会室に歩いて行った。
いつものようにルルーシュの手を引っ張るスザクだが…このときばかりは、心臓がバクバクしてしまって、気が気でなかった。
「お待たせしましたぁ…」
元気にスザクがルルーシュの手を引きながら生徒会室に入っていく。
そして、生徒会室にいた面々が二人の姿を凝視する。
「わぁ…凄〜い…」
「どう?私の選んだ衣装は…」
生徒会室にいた面々が感嘆の声をあげている。
「ミレイちゃん…凄いね…」 「ふふ…もっと褒めるがよい!」
生徒会の女子は本当に喜んでいる。
今、この場にいないカレンはどう云うかは解らないが…
「ルルーシュ…お前、このまま女の子になっちゃえば?絶対に結婚相手に困らないぞ…」
「あ、多分、ルルーシュの性格じゃ、ついていける男性がいないと思うけど…」
リヴァルの言葉にスザクがささっと釘を刺すかのように口を挟んだ。
そう、こんなにきれいになったルルーシュに男も女も近づけなくない…スザクの素直な本心である。
「俺…褒められている気がしないんだが…それは気の所為か?」
やっとの思いで言葉を探し出したルルーシュが低い声で誰ともなく尋ねる。
「全員、ルルーシュを褒めているんじゃない…。ホント、これなら優勝間違いなしね♪ミレイさんは満足よ♪」
ミレイの言葉に再びルルーシュは大きなため息をついた。

 で、結局、結果は…圧倒的男子生徒の支持を集めたルルーシュとスザクのペアが優勝した。
そして、もう一度、このイベントをして今度はこの二人のショーを希望と云う形でのリクエストが、このイベント終了後1ヶ月ほど、殺到したと云う話は…内緒である。
その生徒たちの反応に…
「今度はこの二人の着せ替え人形祭りでもやろうかしら…うふふふふ…」
お祭り好きのこの会長が、思いつきで開催されたイベントは数知れず…。
言い出したら、絶対に引いてなどくれない。
イベントの後、写真を撮られたり、変に追いかけまわされたりしていたルルーシュとスザクの耳には、ミレイの最後のこの言葉は入っては来なかった。

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