Be Reversed(後編)


 シュナイゼルがブリタニアの皇帝に即位した事を宣言してから…2ヶ月が経っていた…
そして…世界中が疲弊しきっていた中…ブリタニアだけ、ある程度の余裕があった。
と云うのも、『超合衆国』は対『ルルーシュ皇帝』との戦闘で完全に疲弊していた。
ルルーシュによって解放されたブリタニアの元植民エリアは、ブリタニアからの派遣部隊や、執政官、財源などが全てブリタニアに戻っていたから、解放後、独立の為の復興に全力を注がなくてはならない状態…
世界は『ブリタニア』か、『超合衆国』か…二つに分かれていたから全世界があの戦いに巻き込まれていた事になる。
もっと云えば、ルルーシュが解放したブリタニアの植民エリアの中で他国に政府のトップが亡命して、その亡命政府として『超合衆国』に参加表明していた国などは…見るも無残と云うしかない。
共に戦っていたシュナイゼルが皇帝即位を宣言したのであっては…現在の神聖ブリタニア帝国に戦後補償や戦後の賠償請求が出来なくなってしまうからだ。
最後まで『矜持』とやらを主張し続けた『超合衆国』の議長…皇神楽耶のお陰で現在、戦争の責任の所在が有耶無耶になってしまう事になる。
実際に、ブリタニアは『ルルーシュ皇帝』の独裁により全てを決めており、そして…戦争へと発展した…
『超合衆国』側の解釈はそうなっている。
となると、『ルルーシュ皇帝』が行方をくらましたまま、そして、彼のナイトオブゼロであった、枢木スザクもシュナイゼルに引き渡されたと云う…その報告だけでどこにいるのかも解らない。
『ルルーシュ皇帝』が率いていた軍は…きっと、何かの形で命令を受けていたのだろう…。
黎星刻がアヴァロンへ突入した時…彼に付き従っていた者たちが人質となっていた『超合衆国』の各国代表の解放を手引きして、彼ら自身、『黒の騎士団』にその身柄を引き渡していた。
結局…『超合衆国』にも、『黒の騎士団』にも、ここまでの高度な政治判断を下し、実行できるだけの人材がいなかったと云う事だ。
『ルルーシュ皇帝』との戦いに勝って…世界は平和になると信じていただけに…ショックは大きい…。
しかし、平和になると一言で云っても、何を持って『平和』と見なすかにもよる。
戦争が終わり、明けても暮れても銃声が聞こえる様な事はなくなっているのだ。
これも平和と云えば平和だ。
そして…これから自らの力で復興を成し遂げると云う事も…彼らの望んだ『民主主義』である。
世界がそんな混沌としている中…シュナイゼルはフレイヤで吹き飛ばしたペンドラゴンから100km程離れたところに…再び『神聖ブリタニア帝国』の帝都として『ネオ・ペンドラゴン』を建設した。
元々、戦争になる前からシュナイゼルの頭の中で考えたいた事だっただけに…実際に建設に入ったら完成もあっという間であった。
『ネオ・ペンドラゴン』の真ん中にかつてのブリタニア宮殿と同じ建物を作り、その周囲を取り巻くように街を作った。
そして、今のルルーシュは…シュナイゼルによって、その宮殿の中に作られた…アリエス宮に枢木スザクと共に暮らしていた…
と云うよりも…枢木スザクを見張りとし、幽閉されている…と云った方が正しいか…
少なくとも…今のルルーシュに…このアリエス宮から外に出る自由すら与えられてはいない…

 世界は相変わらず混沌と戸惑いの中にいる中…
シュナイゼルは見事にブリタニアの帝都を復興させ、ダモクレスとフレイヤによって、世界に対して威嚇と牽制を続けていた。
バカな争いをするのであれば…ブリタニアがこのダモクレスとフレイヤによって裁く…
そう云っているのと同じだ…
今はまだ、世界にそれだけの余力はないが…
だから、シュナイゼル自身は、ブリタニアの国力回復と成長にのみ力を注ぐ事が出来た。
あのフレイヤを止めたルルーシュがロイドやニーナに開発させた武器は…ルルーシュとスザクが揃ってこそ使えるもの…
そう思うと、外部からの圧力などは問題にならない。
現在のシュナイゼルは…毎日のようにアリエス宮へと通っていた。
目的は…彼の最愛の異母弟である…ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア…
「やぁ…ルルーシュ…」
機嫌良さそうにシュナイゼルが入ってきた。
部屋の入り口から入ってすぐ、枢木スザクが立っており、ルルーシュは…品のいい作りのテーブルセットの椅子に腰かけて、本を読んでいた…
『ギアス』の心配は…シュナイゼルには既にない…。
「皇帝陛下…」
うかない顔…うかない声でルルーシュが口にする…。
それでもシュナイゼルはお構いなしにルルーシュの使っているテーブルセットの椅子にかける。
「今日もちゃんといい子にしていたようだね…。それに…例の問題も…君の助言で解決できたよ…。有難う…」
やや俯き加減に本に目を向けているルルーシュの頬にそっと手を当てる。
ルルーシュの方は…最初の頃は過剰な反応を見せていたが…その反応がシュナイゼルを喜ばせるだけだと悟った時…ルルーシュはそのシュナイゼルの触れて来る手に反応を示さなくなった。
「でも…ここでは…『皇帝陛下』なんて…呼んで欲しくないって…何度言ったら解ってくれるのかな…」
シュナイゼルはルルーシュに対して自分が何をしているのか…充分理解していながら、そんな事を云い放つ。
今のルルーシュが…ルルーシュの意思で…シュナイゼルに対して…『異母兄上』などと…まして、幼い頃のルルーシュのように『異母兄さま』などと呼んでくれる筈もない…
解っていても…シュナイゼルは望んでしまっている自分の欲の深さに…苦笑してしまう。
―――一体誰だろうね…私に『執着』がない…などと云い始めたのは…
「異母兄上…ナナリーは…?」
「大丈夫…。ブリタニアと日本の架け橋になってくれているよ…。皇の姫君からもマメに連絡が来ている…」
「そう…ですか…」
そして…いつの間にかシュナイゼルから差し出された手を取って…立ち上がる。
扉の内側で立っていたスザクは…いつの間にか扉の外に出て行っていた…
シュナイゼルの手を取ったルルーシュを強い力で引き寄せ、その細い身体を自分の腕の中にしまいこむ。
「異母兄上…」
「ルルーシュ…愛している…。やっと…私の腕の中に戻ってきてくれた…。その上…私が世界を導く為に知恵まで貸してくれる…。それが…私の為…と云う訳ではない事は解っているが…それでも嬉しいよ…ルルーシュ…」
そう云いながら…ルルーシュの顎を持ちあげてその唇に自身の唇を重ねた…

 シュナイゼルの言葉に…ルルーシュは何も答えない…
でも…思っている事はある…
―――異母兄上…あなたは…俺を誤解している…。別に…ナナリーが…スザクが…あなたの手に落ちていなかったとしても…俺は…
シュナイゼルの口づけを甘受しながら…ルルーシュはそんな事を考えている。
この2ヶ月…ルルーシュが顔を合わせたのは…見張り役のスザク、色々と世話を焼きに来るカノン、そして…目の前のシュナイゼル…。
シュナイゼルとカノンには…ルルーシュの意に沿わない『ギアス』をかけさせられた…。
既にルルーシュの『絶対遵守』の『ギアス』が1度かけた相手にはかからないと云う事が知られていたから…
そして…目の前で…ナナリーを人質に取られた…
全てが…ナナリーの為にしてきた事だった…
『ゼロ・レクイエム』があの時点で計画通り遂行できないとなれば…ナナリーを犠牲にする訳にはいかなかった…
だから…ルルーシュは…シュナイゼルの云った通りの『ギアス』をかけた…
そして…今に至る…。
シュナイゼルに『ギアス』をかける直前のシュナイゼルの瞳と、その言葉は…今でも…忘れられない…
『済まない…ルルーシュ…。私は…欲の深い人間だ…』
狡いと思った…
シュナイゼルは…本当にルルーシュの事をよく知っていると…
シュナイゼルがこのアリエス宮に訪れ…ルルーシュを抱く度に…思い出す…
その事実が…ルルーシュの胸を締め付けていた…
「ルルーシュ…」
ゆっくりとルルーシュの顔から離れ…ルルーシュの名前を呼ぶ…
相変わらず…ルルーシュの表情が変わった様子がない…。
元々…皇族の中でも複雑な環境の中で育っており…自分の本心をうまく表に出せない部分は…否めない…
まして、ダモクレスでのルルーシュの作戦の失敗で…更にそれが強くなった…
否、その後のシュナイゼルのルルーシュに対する偏愛の所為か…
「ん…んぁ…」
ルルーシュの着ている薄いシャツ越しにシュナイゼルの手がルルーシュの身体を弄んでいる。
この2ヶ月で…ルルーシュの身体を全て知った…。
どこを触れれば反応を見せるか…
どこを触れられる事でルルーシュが悦ぶか…
それを知った…。
シャツ越しに触れられて…もどかしいのか…ルルーシュは身体を捩る。
「あ…異母兄上…」
潤んだ目でシュナイゼルの顔を見上げている…。
「ルルーシュ…どうしたんだい?」
シュナイゼルも、ルルーシュが今、何を望んでいるのか充分に解っていながら…そんな事を尋ねる。
どうも、ルルーシュが可愛くて、愛おし過ぎて…どうも、イジワルをしてしまうらしい…
「お願い…です…。ここでは…」
ルルーシュが泣きそうになりながら…シュナイゼルに訴える。
そんなルルーシュを優しい瞳で見て…そして、相変わらずその細い身体を抱き上げ…ルルーシュの寝室へと歩いて行く…
そして、そっと、ルルーシュの為に用意された広いベッドにルルーシュを下すと…シュナイゼル自身、ルルーシュを欲していたのか…そのままルルーシュの身体の上に覆い被さり…愛おしいその唇に長く、深い口づけを落とした…

 ルルーシュの裸体は…どんなにすばらしい彫刻よりも美しいと思う…。
何度見ても…飽きる事のない芸術品だと思う…
「っあ…はぁ…ん…」
シュナイゼルは丁寧にルルーシュの肌に舌を這わせる。
その度に…ルルーシュの喘ぎを聞く事が出来る…
ルルーシュがこうして傍にいない間…これほど自分の心に熱さを感じた事など一度もなかった。
誰にも触れさせたくない…誰の目にも触れさせたくない…
本当なら…こんな皇帝などと云う責務など放り出してしまいたいが…
それでも…それは…ルルーシュを手に入れる為の代償だった…。
そして、その責務を負う事で…ルルーシュを守るだけの力を得られる…。
「もっと…気持ちよくしてあげよう…」
そう言うと…ルルーシュの屹立をシュナイゼルの口の中にすっぽりと入れる…
すると…ルルーシュはその刺激に身体をピクリと跳ねさせる。
「あ…やッ…あに…う…え…」
耳をくすぐるその声に酔っていたいと…そんな風に思えてくる。
部屋には…その水音が鳴り響いている。
その音も…ルルーシュの羞恥を誘うのか…ルルーシュが昂ぶって行く事が良く解る。
シュナイゼルの刺激に翻弄されているルルーシュの後孔にゆっくりと…傷をつけないように指で解し始めると更にルルーシュの身体がその刺激に反応して、身体を弓なりにのけ反らせる。
「ああ…ん…」
まだ狭いそこは…ルルーシュにとってはまだ辛いようだが…
それでも…最終的には…ちゃんとシュナイゼルを受け入れる。
ルルーシュを精神的にいじめたい気持ちはあるが…肉体を傷付ける様な事は絶対にしない…
ルルーシュの身体を痛めつけるのはシュナイゼルの望むところではないのだから…
いつも…焦らす様に…丁寧に…解して行くそのシュナイゼルの指を…ルルーシュは最初の内は苦痛の表情を見せるが…やがて、声に熱が帯び始めて来る…。
シュナイゼルはルルーシュのソコから顔を離し、ルルーシュの表情を窺うと…まだ、苦痛の為辛そうな表情をしているし、痛みに耐えている時の汗が出ている。
―――私もまだまだ…だね…
そんな事を心の中で思いつつ…慎ましいルルーシュの後孔を解して行く…
なかなか慣れる事のないルルーシュのソコは…焦れる思いもあるのだが…その、消える事のない初々しさを感じる。
後学の為…これから先の策略の為と…シュナイゼルに宛がわれた女たちもいたが…確かに男を悦ばせる事には長けていた。
しかし、その分、経験も多く、手慣れた女たちばかりであった事は否めなかった。
反面、ルルーシュは…シュナイゼルが初めてで…シュナイゼルがルルーシュに対して教えていると云う優越感があり…シュナイゼル自身、その過程を楽しんでいる。
やがて、ルルーシュの声に熱が帯びてきた事を感じると…
「あ…あにうえ…もう…」
ルルーシュが生理的な涙を浮かべつつ、シュナイゼルに強請り始める。
この時の恍惚としたルルーシュの顔を見る事が出来るのはシュナイゼルだけが持つ特権だと思う。
「解ったよ…ルルーシュ…」

 シュナイゼル自身も、そろそろ限界に近付いていたらしく、それまで使っていた指を引きぬき、代わりに…自身を宛がうと…
「ひぁ…ああ…」
ルルーシュがそれまでよりも大きな喘ぎを上げた。
「っく…」
ルルーシュのソコにゆっくりと挿入れて行く…
感じる抵抗感と…それを押し退けて挿入込んで行く感覚に…シュナイゼル自身、その感覚に酔って行く事が解る。
「あ…あ…も…っと…あにうえ…もっと…強く…」
「ダメだよ…そんな風にしたら…君の身体が…傷ついてしまうから…」
「いいから…もっと…」
焦らされて…苦しかったのか…後先を考えずに強請ってくるルルーシュを宥めるが…
それでも、ルルーシュは駄々をこねる子供のように…シュナイゼルの首にしがみついてきた。
こんな風に強請られてしまうと…普段は確実に冷静さを保ち続けるシュナイゼルだが…
―――理性のタガが…飛びそうだ…
何とか…自身の理性を保とうとするが…
ルルーシュの前で何度、こんな風に理性が飛びそうになった事か…解らない。
「あにうえ…おねがい…」
段々舌足らずな口調になって行き…そんなルルーシュを見ていてシュナイゼル自身も自身の本能に飲み込まれていく…
そして…二人で力いっぱい抱き締め合いながら…互いを貪るように深い口づけを交わし、その頂点へと昇り詰めて行く…
「ああ…あああん…あ…に…うえ…あにうえぇぇぇ…」
「ルルーシュ!」
二人が発した声と同時に…二人がその頂点へと昇り詰め…ルルーシュは…そのまま意識を手放して行く…
シュナイゼルも、肩で息をしながら…脱力して行くルルーシュの身体を支え…ぎゅっと抱きしめた…
ぐったりしているルルーシュに…他では絶対に見せる事のない優しい瞳を向ける…
「ルルーシュ…愛している…。たとえ…君自身の心が私になくても…私は…君を愛している…。だから…君を手に入れる為に私は…皇帝となったのだから…」
シュナイゼルがルルーシュに向ける瞳はひどく優しいものだったが…その口調は…酷く寂しそうに聞こえる…

―――異母兄上…
俺は…あなたの事を…
でも…その想いは…届けられないのでしょうか…
憎い相手なら…恨んでいる相手なら…こんな風に俺の本当の想いが届かない事に…届けられない事に…
こんなに悲しいなんて思わない…
俺は…どうしたら…あなたに告げられるのだろう…
俺の本当の想いを…
愛しています…異母兄上…



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