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Don't Sigh! 1


 ここはアッシュフォード学園高等部…
恐らく、現在のこの不況で超有名な一流企業の就職内定の倍率よりも、安全パイを選んでのお役所への就職の倍率よりも、競争率の高いと思われるルルーシュの恋人の座を…幼馴染であるスザクがやっと手にして1ヶ月…
この1ヶ月はそれこそ浮かれて、ずっとルルーシュの事で相談に乗って貰っていたリヴァルやジノにも
『あんまり浮かれていると、ルルーシュの親衛隊に殺されるぞ?』
との、結構シャレになっていない忠告を受けていたのだが…
しかし、人間、幸せな時にはこんな感じである。
ただ…ルルーシュ自身に、そんな親衛隊がいると云う自覚がない…
と云うか、そんな親衛隊が存在している事さえも気づいていないかもしれない…
と云うのも、言うなればルルーシュは『超鈍感!』の癖に『超モテモテ!』さんな、結構一人でふらふら歩かせていると、絶対にどこの馬の骨かも解らん奴に拐される事間違いなしなキャラクターである。
外を一人で歩かせるのはとっても危険だし、このアッシュフォード学園の敷地内だって安心できない。
ルルーシュの親衛隊に所属している者ならまだいい…
しかし、中にはそう云った団体に所属しない者もいるのだ。
そう云った団体に名前を置かない者たちは当然の事ながら、親衛隊たちの決めた決まりごとに縛られる事はない…
ただし、親衛隊とは、ルルーシュのファンであると同時に、ルルーシュの身の安全を守ると云う趣旨も持っている。(だからこその親衛隊…。ただ、ルルーシュが好きな人間の集まりならファンクラブで十分である)
そして、親衛隊員には厳しいルールも設けられている。
全ては
『ルルーシュ様の御為!』
という事らしいのだが…単純に『抜け駆けは許さんぞ!』という事である。
まぁ、実際に、変にルルーシュのお近づきになろうとする連中がぞろぞろ出て来ると、ルルーシュにとっては迷惑である事は確かである。
そして、何故か、ルルーシュにはその存在の認識がない状態に保っているのは、ルルーシュの自然な笑顔とか、自然な涙目とか、自然なツンデレ顔(←つまり、怒った顔)などを愛でたいと云う、ナチュラル至上な人物が現在、取り仕切っているからだろう。
尤も、ルルーシュがそんなものの存在を知ってしまったら…ルルーシュの性格なら全力で解散を要求するに違いないし…
それに、もし、ルルーシュ親衛隊の存在がなくなれば、ルルーシュ自身が無自覚なので、どれ程ルルーシュにとって危険が多くなるか解ったものじゃない事をルルーシュが気づいていないのである意味仕方がない。
そんなときに…枢木スザクがそんな、アッシュフォード学園の王子様であるルルーシュと両想いとなった訳なのだ。
その噂はあっという間に広がった。
アッシュフォード学園生徒会長、ミレイ=アッシュフォードの(ある意味洗脳とも云える)生徒たちへの影響力により、この二人は一応祝福される事となる…
勿論、一部の生徒達を除いては…と云う、但し書きがついてくるのだが…

 ただ、不思議な事に、中心人物であるルルーシュはそんな事を全く理解していない…と云うか、気づいてさえいない。
そんな状況の中…スザクがいくら両想いになったからと云って安心できる訳がない。
と云うか、スザクに対するやっかみともとれるような手紙が毎日これでもかと、靴箱やら机の中やら、ロッカーやらに入れられるようになっていた。
流石に、スザクの私物に何かしようものなら、スザクの恋人になったルルーシュに見つかってしまう。
そうなったら、ルルーシュは全力で犯人捜しをすると考えた親衛隊たちは、とりあえず、私物には手を出していない。
ただ…
携帯電話には相当数の嫌がらせなメールや電話が入ってきた。
それでも、インターネット上で色々やらなかったのは、ルルーシュがパソコンのスペシャリストだからだ。
もし、スザクのいわれのない悪口を書いた日には、恐らく、ルルーシュがそれを書いた奴をその日の内につきとめ、100倍返しをするに違いない。
ルルーシュ自身が色々な意味でもてると云う…そう云う自覚はなくとも、スザクに対する嫌がらせには非常に敏感だ。
ルルーシュ自身、そいつらに報復するだけの頭脳を持ち合わせているし、全校生徒どころか、教師までも籠絡するそのルルーシュの魅力で、ルルーシュに見つからない様にやり遂げなくてはならないのだ。
その内しんどくなって、スザクにちょっかいを出すのをやめる事を、次第に人は覚える。
それよりも、スザクと一緒にいる時のルルーシュの極上の笑顔を見ている方が恐らく幸せだろうと考える者も増えて来る。
やがて、スザクへの嫌がらせなどをしてしまったおろか者達を除いては、ルルーシュは分け隔てない笑顔を振りまくようになっていた。
それまでの時間…二人が両想いになっておよそ1ヶ月…
現在は、ルルーシュとスザクはラブラブ状態…
なのだが…ただ、スザクは、スザクに嫌がらせを働いたバカども以外に対するルルーシュの笑顔が気になる。
―――どう見たって…あれは誤解するよね?と云うか、ルルーシュ…なんで僕があんな陰湿な嫌がらせを受けていたか…解っているのかなぁ…
と、頭をかしげてしまう事が増えている。
確かに…ルルーシュはそう云った事に対しての鈍感さは…恐らく、アッシュフォード学園一と云えるだろう。
それを利用して遊ぼうとする生徒会長、ミレイ=アッシュフォードを押さえつけるのも一苦労なのだ。
いつも、無理難題を吹っ掛けて来るし、最近では、ミレイ命なリヴァルから、『ミレイに構われて羨ましい…』から、『会長の奴隷も大変だな…』と云うオーラを頂いている。
正直、それだけ同情してくれるなら、あのミレイの無茶ぶりを止めて欲しいと願ってはいけないのだろうか…
それは、スザクのこの上ない正直な気持ちだ。
力仕事で済んでいる内はまだよかった…
その内、イベントで第四世代のKMFである『ガニメデ』を使う事が決定したとかで…
現在、そのKMFの調整はニーナがやっているのだが…そのニーナの実験に毎日夜遅くまで付き合わされている状態だ。

 そんな状態でもなんで、ミレイの奴隷であり続けるのかと云えば…
『メイド祭り〜ルルーシュすぺしゃる〜』
なる企画が持ち上がったからだ…
ミレイが何を考えたかと云えば…ルルーシュをメイド姿にしてファッションショーを開こうと云うのだ…
ただのメイド姿ならいい…
ルルーシュが着せられるであろう衣装にはそれはそれは…様々なデザインのものが用意され、どう見てもどっかの怪しげな店の客寄せ用の衣装じゃないかと思われるものまで入っていたのである。
そんなもの…ルルーシュに着せた時点で、周囲の人間を悩殺するのは火を見るよりも明らか…
それに、そんな姿をさせて人目にさらしたりしたら…
―――確実に恐ろしい事が起きる!
スザクでなくとも生徒会メンバー全員がそう思ったのだが…ここ最近、大きなイベントもなく、相当ストレスが溜まっている状態のミレイがメンバー達に云われて黙って引き下がるわけがなかった。
そうして…スザクがルルーシュを守るために自らを生贄…じゃなくて、交換条件を出したのだ。
イベントを開く事は仕方ないにしても…ルルーシュの切る衣装は自分に決めさせて欲しいと…
ルルーシュとスザクの関係を知るミレイがそこで素直に頷く訳もない。
スザクの独占欲の強さは恐らく、ミレイの観察眼によってミレイの脳内コンピューターにインプットされている筈である。
そう、本来、ルルーシュを愛するアッシュフォード学園の生徒達の嫌がらせなど…ルルーシュが庇わずともスザクであれば、『ルルーシュへの愛』だけで乗り切れるだけの根性を持ち合わせているのだ。
と云うよりも、ルルーシュに向けるルルーシュへの執着がスザクへの妬みで軽減されるなら…くらいに思っていたであろうと…ミレイは予測しているのだ。
実際に、ルルーシュの姿形はそのくらいに危ない!
人を惑わせるのだ。
その自覚がないのはある意味、罪だとも思うのだが…
しかし、『無自覚』と云う奴は、自分に自覚ないと云う事であれば、周囲がどう云ったところで、本当の意味での自覚にはならない。
故に、ぶっちゃけ、非常に厄介なある意味、病気とも云えるかもしれない。
ルルーシュの場合、自分のその姿…そして、彼が放つオーラの自覚が全くないのだ。
スザクが告白した時…
『え?ホントに…俺でいいのか…?』
などと尋ねて来たのだ…
こんな『萌え♪』なシチュを作りだす事が罪でなくて何だと云うのか!
しかも、ちょっぴり俯き加減に、上目遣いで、顔を赤らめて…なんて…
一体どこの少女漫画だ!と云うくらいのお約束パターンでさっさとスザクを悩殺しているのだ。
こんなのを放し飼いにしておいたら、ルルーシュの貞操など幾つあっても足りない…
そして、二人は無事、両想いとなった訳なのだが…
スザクの試練はこれから先も続くのだ。
と云うのも、先に記述したルルーシュ親衛隊たちはとりあえず統率がとれており、ルルーシュに迷惑をかける行動は御法度…と云う、まぁ、結構良心的なルルーシュ信者達の集まりなのだが…
ところが、そこに所属しないルルーシュ信者と云うのは…

 欲しいものがあるなら自分の力で手に入れろ!的な考え方をしている者が多いのだ。
基本的に、スザクにちょっかい出してルルーシュに睨まれちゃった連中はこちらの人間に多かったりする。
結構思い込みが強いキャラもいて…自分の都合のいいように解釈して、色んな迷惑行為に走っている者もいる。
中には将来ストーカーになりかねないと思わる程過激な連中もいるのだ。
スザクも、そんな連中もうようよしている学園内でルルーシュから目を離せない状態にあるのだ。
勿論、利害が一致しているので、ルルーシュ親衛隊たちと協力関係を一応結んじゃいるが…
でも、ルルーシュへの独占欲に関してはどちらも負けていないので、意見は衝突するし、一応、『ルルーシュの為!』と云う大義名分があるので、手を結んでみるが…
結局、お互い自分の考えで動く事が殆どで…
でも、ルルーシュの安全を守りたいと云う点では同じなので、そう云った痴れ者達に囲まれない様に、お互い不本意ながらも協力関係にあると云った感じだ。
ルルーシュは…そんな彼らに
『お前たち…仲が良くて羨ましいな…』
などと云われてしまい…全員がその一言に撃沈してしまった事が何度もある。
彼らが本当は組みたくもない手を組んでルルーシュを守っていると云うのに…
全員が思った…
―――ルルーシュじゃなければ嬲り殺しだ!
と…
そして、次の瞬間には…
―――そんなルルーシュだから可愛いのだけれど…
とも思っちゃっているので、ある意味、どっちもどっち…と云ったら恐らく、スザクとルルーシュの新鋭たちに相当怒られるに違いない。
しかし、そう思っていても…確かに、親衛隊たちはそれでいいかもしれない…
たとえ、親衛隊たちの思いが通じていなくても、ルルーシュのその、極上の微笑みだけである意味満足して、その日の鋭気を養っているのだから…
しかし…スザクの方は…
ルルーシュに告白して、それこそ、悶絶しそうなほどな『萌え♪』なルルーシュを見てしまったばっかりに、独占欲はとどまるところを知らない。
実際に、こんな無自覚な天然さんが一人で歩いて、それが、貼り付けた営業スマイルであったとしても…それは…確実に誤解を振りまくのだ。
最近では、生徒会の行事でのスポークスマンにはルルーシュが選ばれる事が多くなった。
と云うのも、ルルーシュが一声協力を呼びかけるだけでアッシュフォード学園の中で非協力的な生徒が極端に減るのだ。
ミレイはそれを『悪魔の微笑み』と称賛している。
自分でやらせている癖に酷い言い草だとは思うのだが…しかし、そう云われても納得せざるを得ない程ルルーシュの営業スマイルは絶大な効果を生んでいる。
ミレイのお祭り好きはアッシュフォード学園のみならず、最近ではマスコミまでもがその動向を窺いながら突撃取材の準備を着々と進めているという。
そんな、学園の外からもルルーシュを付け狙う野獣候補が入り込むようになっているのだから…スザクは勿論、最近では、ルルーシュは無自覚なのに、学園の周囲にルルーシュのストーカーらしき男女が現れ始めている事に生徒会のメンバー達も少々心配にはなってきているのだ。

 スザクの心配をよそに…ルルーシュは今日も、一人で出歩こうとしている。
「あ、待って…ルルーシュ…」
最近ではスザクとのやり取りでルルーシュのツンデレ姿が見られるようになり、『ツンデレ萌え♪』な生徒達までルルーシュの後を付けて来るようになっており、親衛隊メンバーも数を増やしているらしい。
と云うか、ルルーシュ親衛隊は学園外にも飛び火していると云う話もちらほら聞こえてくる。
そこまで大きな団体となると…恐らく、アッシュフォード学園内では統制のとれている親衛隊でも、外に出たら…解ったものではない。
スザクとしては、この無自覚な王子様…否、スザクにとってはお姫さまをなんと舌も守らなくてはならないのだ。
確かに、ルルーシュの姿を見てうっとりしているだけならいいのだが…
既にこの辺りでは、下手なアイドルよりもルルーシュは騒がれる存在だ。
そんな存在なのに、ルルーシュに対しての歓声だと云う事に気づいていないのは…スザクが隣にいるせいもあるらしいと…誰かから聞いた。
と云うのも、ルルーシュの中で持てる男の定義がある程度出来上がっているらしい。

・運動が出来る事!
・筋肉はあるけどマッチョに見えない事!
・つい守ってあげたくなっちゃうような童顔である事!
・更に守ってあげたくなるような天然ボケである事!(←これに関してはルルーシュに云われたらスザクは心外だろうと思われるが)

ルルーシュの目から見て、この4つにドンピシャリと当てはまっているのがスザクなのだ。
だから、スザクに告白された時も嬉しかったのだけれど…『え?ホントに…俺でいいのか…?』と尋ねてしまったのは…
ルルーシュの中のもてる男の条件のどれにもルルーシュが当て嵌らないと思っているからだ。
ただ…最後の項目に関してはルルーシュの中の大いなる誤解であると云う事だけは付け足しておかなければならないが…
まぁ、ルルーシュがこんな感じなので、スザクがこれからも苦労が絶えないのは必定で…
ルルーシュファンからのやっかみならいくらでも受けてやろうと思うのだが…
と云うかそんなヤッカミによる嫌がらせなら…
『羨ましいだろう!へへん♪』
ってな感じで逆に優越感もあるのだが…
ルルーシュの天然ボケに関してはどうにもならないのが現実で…
と云うか、自覚がない事でルルーシュ自身にどれほどの危険が迫っているのか…全く解っていない。
そう…ルルーシュの場合、男女問わずに籠絡して行くのだ…
しかも、無自覚で…
自覚してあんな風に男女問わず籠絡できるのであれば、恐らく将来結婚詐欺しで生計を立てられるに違いない…
しかも、あのルルーシュの事だ。
自分へ恨みも怒りも向けられない形でうまくやるに違いない…
でも、無自覚だから、周囲にいる者たちが苦労する。
特に、ルルーシュの心を射止めたスザクは…
これから、いくつか、スザクのそんな苦労話をご披露して行く事にしよう。
確かにルルーシュのナイトとして…喜びを感じねばならぬ状態なのだが…でも、スザクは今日も、大きなため息を付きたくなるようなルルーシュの無自覚と天然ボケに付き合い、そうして、スザク自身はどこまで思いが通じているのか解らない一日が始まるのである…


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