Stray Cat Final


 見えない鎖に繋がれている…
今のルルーシュの正直な気持ち…
そして…目の前にいる…異母兄は…まるで…
「ルルーシュ…こんなに私は君を愛しているのに…どうして伝わらないのかな…」
悲しそうな表情を見せているが…それでもルルーシュの中では…
―――騙されるな…
そんな思いがルルーシュを支配しようとした時…その細い身体が抱きすくめられる。
「ルルーシュ…」
その声にどきりとするが…相手は…ブリタニアの宰相…
ルルーシュの中で流されてはいけないと云う思いと、この優しい声に縋りたいと云う思いが交錯する。
スザクから聞かされた…『黒の騎士団』達の言葉…
確かに…正体がばれればそうなっても仕方ないと思うが…
彼らは…ブリタニアからの独立を願って立ち上がったのだ。
それなのに…『ゼロ』の強引な策を受け入れてきたのもその先に見ている『日本独立』の為の物…
しかし…『ゼロ』がルルーシュで…ルルーシュはブリタニアの皇族で、宰相の最愛の異母弟とばらされたのであれば…その場で思考停止になっても仕方ないと思うのだが…
でも…
「異母兄上…」
これまで…自分が心を殺してやって来た事…全てが否定されたような気がした…
結局…『肩書』で…彼らはルルーシュを判断したと云う事…
でも…それでも…
「放して…下さい…」
必死に絞り出す声…
シュナイゼルはそんなルルーシュの声に、『あと一息…』と思う…
ルルーシュの中で様々な思いの中…迷いが生じ始めているし、もうひと押しでルルーシュは落ちると判断する…
「ルルーシュ…云っただろう?君にはお仕置きが必要だと…。それに…君が大人しくしていてくれないと…ナナリーまで巻き込む事になるのだから…。少しは…君の身体に刻み込んであげないとね…」
シュナイゼルの言葉にルルーシュはびくりと身体を震わせる。
「大丈夫…。ルルーシュの身体に傷を付ける事はしないよ…。ただ…私から離れられないように…してあげないと…」
シュナイゼルの腕の中からシュナイゼルの顔を見上げる。
そこには…宰相としてのシュナイゼルとも、異母兄としてのシュナイゼルとも違う顔が…存在していた…
そのシュナイゼルの顔に…ルルーシュは素直に…『怖い』と…思った…
そして…
―――逃げられない…
とも…
実際に、ルルーシュはシュナイゼルの張り巡らせた蜘蛛の糸にかかって知るのも同じだった…
「ルルーシュ…愛している…。済まなかったね…ずっと…知らなくて…。こんな強引な形でしか…君を私の傍に連れて来る事が出来なくて…。私は確かに…たくさんのウソを吐くが…でも、こんな意味のない嘘は…吐かないよ…」
そう云って、シュナイゼルはルルーシュの顔を上向かせてその、薄い唇に口づける…
「っ…んん…んふぅ…」
シュナイゼルの口づけに…ルルーシュの身体から力が抜けて行くのが解る…
そんなルルーシュの状況に…シュナイゼルは満足そうな笑みを浮かべた。

 力の抜けたルルーシュの身体を支え、そして抱き上げる…
「ルルーシュ…お仕置きの時間だよ…。二度と…こんな真似をしないように…」
「あ…異母兄上…」
ルルーシュの…アメジストが潤んでいるのが解る。
まるで…助けを求める様な…
先ほどまでの…警戒心の強い野良猫の様なそんな気配は消えている。
「大丈夫…」
その一言だけを告げて、シュナイゼルは自分の寝室へとルルーシュを連れて行く…
そして、そっと、その広いベッドにルルーシュを横たえる。
ルルーシュ自身…一体何をされるのか…理解している…
自分の中で色々な思いが入り混じっているが…しかし…この状況を逆らう術を…ルルーシュは知らない…
シュナイゼルはただ…動けなくなっているルルーシュににこりと笑いかけてゆっくりとルルーシュの来ている衣服のボタンに手をかける…
「あ…」
「抵抗する事は…許さないよ?」
シュナイゼルのその言葉に…ルルーシュがきゅっと目を瞑る。
シュナイゼルはそんなルルーシュを見て少しだけ複雑な笑みを浮かべる。
確かに、『お仕置き』などと云って、脅したのは自分だが…そんな反応を見せられてしまうと、やはり複雑になってしまう…
あのスザクの態度からして…ルルーシュは既に…
しかし、今のシュナイゼルにとって、それはどうでもよく、今、ルルーシュが自分の腕の中にいる事が重要で…
小さく震えるルルーシュの額や頬に唇を落とす。
なんだか、小さな子供を苛めているような気分になるが…
それでも、シュナイゼルが実際にどんな本音を持っていたかは別にしても、ルルーシュには『お仕置き』と云う言葉を使っているのだ…
ルルーシュの身体に傷をつけるつもりは毛頭ない。
こうして見ていても、本当に、そこらの美術品などよりもよっぽど美しいと思う。
「綺麗になったね…ルルーシュ…」
ルルーシュの耳元でそう、小さく囁きかけると、ルルーシュは、その息にすら身体を反応させてピクリとする。
それでも、その後に続く言葉は…
「お…俺は男です…。異母兄上…その辺は…ちゃんとお解りですか…?」
そんなルルーシュの言葉に…シュナイゼルはくすりと笑って見せた。
そんな事を気にしていたのかと…
身近に枢木スザクを置いていて…今更な話だ…
「ルルーシュ…私は君が男だろうが、女だろうが…そんな事を気にした事はない…。皆はルルーシュがマリアンヌ皇妃の生き写しだと云うが…私はそれも関係ない…。君自身が欲しいと思っているし、君自身を愛しているのだから…」
自分でもキザだと思うが…でも自然に出てきた言葉…
そんなシュナイゼルの言葉に…ルルーシュは困ったような顔を見せる…
そんなルルーシュを見ていると、幼稚な感情だと思うのだが…更に困らせて見たくなる…

 シュナイゼルはまるでルルーシュを焦らすかのようにそっとルルーシュの肌に指を滑らせる。
その度にルルーシュの身体がピクンと跳ねあがる。
どうやら、とても敏感らしい…
「ルルーシュ…もう二度と…こんな真似をしないと…そう云っておくれ…」
プライドの高いルルーシュがそう簡単にシュナイゼルの意に従うとも思えない。
それゆえの…シュナイゼルの言葉だ…
完全にシュナイゼル自身、楽しむために云っているフシがある事は否めない。
「っ…んん…」
どれ程この状態を強いているだろうか…
ナナリーをタテに取られているとは云え…こんな快楽の為にシュナイゼルに屈服する事を絶対にルルーシュは良しとしない。
まるで、小さな男の子が、好きな女の子相手にわざと意地悪をしているような気分だ…
「本当に君は…頑張るね…」
そんな風にくすりと笑いながら相変わらず、中途半端な刺激を与え続けている。
「お…おれは…こんな…かたちで…」
涙ぐみながらそんな風に云われるとつい、イジワルをしたくなってしまうのは…やはり幼稚な愛情表現なのだろうか…と自分に問うてしまう。
でも、客観的に見ても、今のルルーシュの姿を見てまだまだこの姿を楽しみたいと考えるのはシュナイゼルだけではないだろうと考えてしまう。
それほどまでに…目の前のルルーシュの姿は…美しく…愛おしくなる…
―――また…これでは嫌われてしまうかな…
そんな風に自嘲する思いを圧し隠しながら…相変わらずもどかしい刺激しか与えない。
「一言でいいのだよ?もう…私から逃げ出さないと…約束してくれれば…こんな中途半端な快楽の地獄ではなく、極上の絶頂を上げると云っているのに…」
意地悪くそんな事を云ってみるが…ルルーシュはまだ気丈にも『快楽で落とされるのはごめんだ…』と云う態度を崩していない。
「っふ…ふぁ…ああ…」
随分長いこと、こんな事を繰り返していて…流石のシュナイゼルも居たたまれなくなってきている…
―――根競べ…か…?
冷静な部分がまだあるのだが…こんなルルーシュの姿を見せられて…いつまでもこの状態を維持出来る自信はシュナイゼルにもない。
ただ…ルルーシュの方もかなりつらそうに見えるので…
「じゃあ…ここの触ってあげようか…」
「ひっ…いぁ…」
そう云いながら、軽く…既に勃ち上がっているルルーシュに触れるか触れないかの軽いタッチで指先を当てると…ルルーシュがこれまでにない程身体を跳ねさせる。
「や…もう…ゆる…し…」
初めてルルーシュの口から許しをこう言葉が出てきた…
「なら…ルルーシュ…なんて云えばいいか…さっきから散々教えているね?」
シュナイゼルはそう付け加えると…ルルーシュが幼子の様な涙目をシュナイゼルに向ける。
そうして…ルルーシュは…こくりと頷いた。
「じゃあ…云ってごらん…」
「もう…シュナイゼル異母兄上の傍を…離れません…。二度と…逃げ出したりは…しません…」
ルルーシュの絞り出すようなその言葉に…シュナイゼルは満足げな笑みを浮かべて、ルルーシュのお強請り通り、その部分に刺激を加えてやり…そして、ルルーシュの嬌声と共にその白濁を吐き出させた…

 ルルーシュのその姿に…まるで神秘的なものを見るような感動を抱いた。
そしてシュナイゼル自身、目の前のその美しい異母弟を…自分の物に…と望む…
「ルルーシュ…私も…いいかな?」
こんな時にまで紳士的な態度に…ルルーシュは驚いた表情を見せるが…それでも黙ってこくりと頷いた。
そんなルルーシュを見て、先ほどルルーシュの吐きだした白濁を自分の指に絡めてその奥の蕾へと運ぶ。
「んふ…あん…」
シュナイゼルの指の動きと一緒にルルーシュの声が漏れ出す。
まだ狭い…その場所…
理性では『ルルーシュを傷つけてしまう…』と思いながらも…感情の部分ではそんなルルーシュに入りたいと…思ってしまっている…
そんな矛盾を抱える自分に嗤ってしまうが…
「あにうえ…もう…だいじょうぶ…ですから…」
ルルーシュが下から小さく訴えて来る。
かなり無理をしている様にも見えるが…
「いいのかい?」
ここまで来て、止める気は毛頭ないが、一応、尋ねておく。
ルルーシュが頷いた事を確認して…ルルーシュのそこにシュナイゼルのソレを宛がう…
「っ…っく…」
少し苦しげな声がルルーシュから漏れ出した。
そんなルルーシュの苦痛を少しでも短くしようと一気に侵入すると…ルルーシュが大きく背中を仰け反らせた…
「ひ…ぁ…」
「ルルーシュ…」
気遣うように声をかけるが…ルルーシュの瞳からは涙がとめどなく流れている。
まだ、痛みや苦しさの方が大きいのだろう…
ルルーシュのその場所を探りながら…シュナイゼルは少しずつ腰を動かして行く…
その度にルルーシュは苦しげに呻いていたが…
「や…ああ…ひぁぁぁ…」
ルルーシュの声が甲高くなり、表情も変わった。
どうやらたどり着いたようである。
ここまで精一杯理性を働かせて、気遣ってきたが…そろそろそれも限界となってきていた。
シュナイゼルはそんな快感にうち震えているルルーシュの姿にたまらなくなる。
「ルルーシュ…君の中は…とても狭くて…熱くて…我を忘れてしまいそうだ…」
「俺を抱いている…あいだ…そんな風に…よゆうを…もたれるのは…」
ルルーシュがそう云い返しながら…きゅっと締め付ける…
こんな状態になっても負けず嫌いらしい…
そんなルルーシュを更に愛おしく思ってしまうのだが…
「こんな悪戯…どこで覚えて来たんだい?悪い子だね…」
そう云ってシュナイゼルは律動を激しくすると、ルルーシュが叫び声の様な嬌声を発した。
お互いに貪り合うようなセックス…
そして…互いに感じる熱で…お互いに我を忘れて抱き合った…
シュナイゼルが我に返った時には…いつでもシュナイゼルに対して負けず嫌いな性格を発揮してしまうルルーシュが…限界を超えてしまい、気を失っていた…
そんなルルーシュを見て…
「本当に…君は昔から変わらないね…」
そう云って、ルルーシュの前髪を掻き上げ、その汗ばんだ額にそっとキスを落とした。

 その後、ルルーシュとナナリーは正式に皇族復帰した。
そして、スザクは正式にルルーシュの騎士に叙任した。
ルルーシュは自分の立ち位置については…シュナイゼルに
『俺は…ただ守られる…と云うのは絶対に嫌なのです。ですから…『エリア11』の総督に任じて下さい…。元々、ブリタニア軍に対して刃を向けて、様々なゲットーでテロリストが蜂起し始めた原因の一端は俺にあります。ですから…俺が『ゼロ』と云う事は伏せて、俺を…『エリア11』に…』
『黒の騎士団』を殲滅して、現在の『エリア11』はブリタニア軍に対しての反発はかなり大きい。
それだけ『黒の騎士団』に対して、『ゼロ』に対して希望を抱いていた者たちが多かったと云う事だ。
最初はシュナイゼルは決して許さないと云った表情だったが…ルルーシュの真剣さに根負けしたと云う形だった。
『ルルーシュ…決して無茶はしない…。約束して欲しい…。私はもう…君を失うのは…嫌なんだ…。君が無茶をしようとしたらすぐに迎えに来る…』
シュナイゼルの心配そうな表情に…ルルーシュはにやりと笑った。
『何を仰っているんですか?俺は…『ゼロ』ですよ?奇跡を起こす男ですから…』
ルルーシュのそんな言葉にシュナイゼルは苦笑するしかなかった。
ここまで云いだしてしまうと、いくら止めたところでルルーシュは聞く耳など持たない。
それはシュナイゼルも良く知っている。
『それに…俺が殺めてしまったクロヴィス異母兄上の分まで…このエリアを穏やかに治めたいのです…。もし、それに失敗すれば…いくら俺が皇族復帰したと云っても、俺は廃嫡に追い込まれてしまいます…。そうしたら…ナナリーの事も守れない…。俺がこのエリアで犯した罪は…このエリアで購います…』
シュナイゼルもルルーシュが何故そこまで云うのか…理解できるだけにその言葉に頷くしかなかった。
ルルーシュは自分の力がないと云う事がどう云う事であるのか…良く解っている。
シュナイゼルの能力を信じないわけではないが…それでも、何が起きるか解らない…
『閃光のマリアンヌ』とまで呼ばれたルルーシュとナナリーの母でさえ、何者かに殺められているのだ。
そして、何の力も持たない彼らは帝国より捨てられたのだ…
はぁ…とため息を吐くシュナイゼルに…シュナイゼルにとっては嫌な相手が声をかけてきた…
「シュナイゼル殿下…これで勝ったと思っていらっしゃるわけではないでしょう?」
恐らく、薄々二人の事に勘付いたルルーシュの騎士が声をかけて来たのだ。
「なんの事だい?」
「まぁ、とぼけるのならそれでいいですよ…。自分は諦めるつもりはありませんから…。次に殿下がこちらに来た時には…ひょっとしたらルルーシュは自分のルルーシュになっているかもしれませんよ?」
挑発してくるルルーシュの騎士に対してシュナイゼルはギロッと睨みつける。
「いい度胸だ…私に向かって真正面から宣戦布告してきた者など…何年振りだろうね…」
シュナイゼルはまずい男をルルーシュの騎士にしてしまったと思うが…
それでも…悪い気はしない…
こうした相手を完膚なきまでに打ち負かしてきたからこそ…シュナイゼルは今の地位を築いてきたのだから…
「とりあえず…ルルーシュの安全を君に任せているんだ…。もし何かあった時には…容赦しないよ?」
「イエス、ユア・ハイネス…」
火花を散らしながらの会話だったが…
それでも…あんな8年前の様な…あんな形でルルーシュを失う事は…きっとないと…シュナイゼルの中で確信する。
「では…私は一旦ブリタニア本国へ戻る…」
そう云って、シュナイゼルは…アヴァロンに乗り込んで行った…


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