『Cの世界』でルルーシュの『ギアス』が『両目ギアス』となった。
ルルーシュの『ギアス』は既に暴走して、オン・オフが出来なくなっていて、C.C.から手渡された時には『これでも制御出来なくなったら…』みたいな事を云われつつも、一応、そのコンタクトレンズで制御出来ている状態だった。
この辺りは良かったと云えば良かった…単純に、予定の尺を大幅にオーバーしてしまってスルーされてしまったとも思われるが…
ただ…お陰で、ルルーシュはコンタクトレンズの付け外しを余儀なくされてしまった。
コンタクトレンズとは…結構厄介な代物で、正しい扱いをしないと、目が充血する。
それで済んでいる内はいいが、時に、眼病を誘発する。
C.C.から片目だけのコンタクトレンズを付け外しをするようになって、色々と気を使ってきたのだが…
本編ではやたらと、着けたり外したり…おまけに素手でコンタクトを付け外しをするのに、ちゃんと、使用方法の手順を踏んでおらず…
実は、コンタクトを扱う時にはとにかく、『清潔さ』を要求される。(これは和泉が経験者なのでよく解ります。現在は使っていませんが)
あんな風に、『ギアス』を使う度に着けたり外したりなどと云う事をしていれば、当然だけれど、その『清潔さ』を保つ事は出来ない。
又、ある一定の水分が必要で…あんな形で着けたり外したりすると、ドライアイを誘発する。
『黒の騎士団』で『ゼロ』をやっている時も、結構しんどい事があった。
そして…今もなお、そんな生活が続いている。
何せ、『ゼロ・レクイエム』を果たすまで、『ギアス』にかかって貰っちゃ困る人物が何人もいて…
でも、『ギアス』がかからない奴はC.C.(こいつが『ギアス』をくれたから)、スザク(こいつには既に使用済み)、ジェレミア(こいつは『ギアスキャンセラー』があるので効かない)の3人以外、ロイドとか、セシルとか、途中から仲間入りしたニーナとか…
ついでに、公の場に出た時、ブリタニア軍で『奴隷になれぃ!』と『ギアス』をかけちゃってもいいモブキャラ達はいいのだが、『超合衆国』の代表とか、『黒の騎士団』の連中とか、かかって貰っちゃ困る人間も結構いる。
ルルーシュは皇帝になっちゃったお陰で、公の場に出なくちゃいけない事は結構ある。
いくら『悪逆皇帝』と呼ばれたところで、やっぱり、一応、一国家の国家元首の肩書があるから…当然だが、戦争する予定とはいえ、外交の手順を踏んで戦争しなければならないので、やっぱり、公の場に出なくてはならない。
いっそ、『天皇制』みたいになっちゃえば、公に出る事はない状態で『国の代表』となる訳だが…それでは、意味がない。
『天皇』に戦争をおっぱじめる権限がないからだ。(これは、戦後の憲法じゃなくても日本の『天皇』にその決定権はありませんでした。内閣で決めた事を承認する事がお仕事だったので…。つまり、『承認する』と云う『お仕事』はあっても、何かを『決定する』と云う権限は持っていませんでした)
となると、やっぱり人前に出なくてはならず…結構地味なところで苦労していたのだ。
コンタクトレンズと云うと…どうしても目が充血したり、眼病になったりと…なかなか大変なのだ。
結膜炎にもなり易い。
そんなある日のこと…
―――コンコン…
いつものように、(和泉稜ワールド内では)全く持って『ゼロ・レクイエム』に対してやる気を見せないルルーシュの唯一の騎士、ナイトオブゼロ、枢木スザクがルルーシュの執務室の扉をノックした。
「ルルーシュ?入るよ?」
表向きには主従関係になっているのだが…
当人同士は、一応、『ゼロ・レクイエム』をやるための協力者って事なので、プライベートではしっかりと対等だ。
『Cの世界』から脱出した時…ルルーシュが自分の両親の本性を見てすっかり落ち込んでしまい、また、『黒の騎士団』にも裏切られちゃって、なおかつ、あんなにいじめ倒していたロロが自分の命をかけてルルーシュを守って本当に死んじゃって…ナナリーも『フレイヤ』に巻き込まれて死んじゃった事になっていたものだから…
「俺…もう生きて行く理由なんてないや…」
と、自暴自棄になってしまい、そのまま神根島のどっかの崖から海に身投げをしそうな勢いだったので、
『ルルーシュ!僕はまだ君に恨みを晴らしていないよ!』
などと、スザクが口走っちゃって…
『なら、ここでお前が俺をなぶり殺しにすればいいじゃん…』
とか云い始めるもんだから…スザクもブチ切れた…
『じゃあ!ルルーシュ…君の(無駄に)いい頭使って今の、この混沌状態の世界を何とかしてから死になよ…。僕も協力するからさ…。ユフィだって…ここでルルーシュが勝手に自己完結して自殺しちゃったら報われないよ…』
と云って…ルルーシュが涙目になって身投げしそうになっているのを力技で止めた経緯がある。
話はそれちゃったが…ルルーシュが自分の中で自己完結して、自暴自棄になっていて、そのまま身投げしようとしていたから、殆ど口から出まかせ、とりあえず云ったもん勝ち…って感じのスザクの訴えはルルーシュに受け入れられ…『ゼロ・レクイエム』のプランが誕生したのだが…
とにかく、スザクとしては困った事に、ルルーシュってば、『ゼロ・レクイエム』には随分乗り気になって、やたらとコンスタントに事を進めてしまっている事だ。
スザクとしては、変に完璧に作られているルルーシュのプランを見て…大きくため息をついてしまった。
このままではどの道、ルルーシュが死んじゃうことになる。
しかも…スザクがルルーシュを殺す事になっているのだ…
スザクとしては、『勘弁してよ!お願い!僕、ルルーシュ殺すのやだ…。あんな涙目の『萌え♪』なルルーシュの顔を見られなくなるなんて…耐えられない!』と思っているのだが…
どうにも、天にはその思いは通じる事なく…事が順調に進んでいる。
たった一つを除いては…
しかし、スザクとしてはそれは、千載一遇のチャンスかもしれない…と思っている。
やる気満々のルルーシュには申し訳ないが…神根島のスザクの言葉は…はっきり言って、その場しのぎでルルーシュを止められれば良かっただけなのだ…
さて、スザクにとってのたった一つの望みは…
最近、一日に何度も手順を踏まずに両目のコンタクトレンズの付け外しをしているルルーシュの目が…相当やばい事になっているのだ。
そもそも、カラーコンタクトとは、ソフトレンズだ。
あんな付け外し…どうしたら出来るのだろうという素朴な疑問があるが…
それは、とりあえず、『アニメだから!』と云う、ミもフタもない結論に収めておくのが利口だと思われる。
しかも、あれは非常に目に負担がかかる。
当然のことながら…そんな事を繰り返しているルルーシュの目にも相当な負担がかかっている。
おまけにルルーシュは何でもかんでもパソコンでやってしまう…デジタル人間…
目の負担はさらに大きくなる。
とにかく、慢性的なドライアイとなり、そろそろ目が大変な事になる頃だったのだが…
「ルルーシュ?」
スザクが返事もなしに入室するといつもなら、うるさく説教するルルーシュなのだが…
今日はそのうるさい説教がない…
すると、自分のワークデスクの前でルルーシュは自分で目薬をさしていた。
「あ、スザクか…済まない…」
ルルーシュが目薬を点け終えて、スザクの方を見た。
すると…『ギアス』が暴走しているので、確かに黒目の部分は紅いのは仕方ないのだが…白目の部分まで充血していて真っ赤になっていた。
「ルルーシュ…その目…」
「あ、ああ…どうも、コンタクトの付け外しの際に…ちょっとな…」
驚いたスザクにルルーシュが答えた。
目は充血しているし、痛いのか、痒いのか…結構辛そうだ。
「ルルーシュ…暫くは…公の場に出ない方が…。本当は、コンタクトレンズ…合わないんでしょ?君の目に…」
スザクが心配してそう声をかけるのだが…
『ゼロ・レクイエム』を達成させる事…それが今のルルーシュの『生きる目的』となってしまっている為…ルルーシュはそんなスザクの言葉に耳を貸したりはしない。
「な…何を云っているんだ…。お前が云ったんじゃないか…『混沌とした世界を何とかしてから死ね!』と…。もう…時間がない…」
「だからって…その目でコンタクトつけたら…。コンタクトレンズって、白目の部分も見えるから…きっと、カメラでアップを映されたら解っちゃうよ?」
ルルーシュの張り切りようにスザクとしては呆れるしかない。
確か、本編のDVDを見たが…C.C.に対して『死ぬために生きているなんて…悲しすぎる!』とかほざいていたが…今となってはルルーシュにけしかけたスザクではあったが、そっくりそのままルルーシュにその言葉を返してやりたい…
元々、ルルーシュの身投げを何とか阻止したいと思って出た、思いつきだったのだから…
まぁ、こうして、ルルーシュの騎士になったこと自体は凄く幸せだと思うのだが…
何と云っても現在のスザクのモットーは…『僕とルルーシュの恋路を邪魔する奴は…ランスロットに蹴られて死んじまえ!』だからだ…
この際、スザクがけしかけたとか、そんな事はスザクの中では吹っ飛んでいるし、仮に、頭の中に残っていたとしても、スザク特有の『KY』で、乗り切ればいい…
ルルーシュの『ウサギさんな目』も可愛いと云えば可愛いのだが…
いっそ、あの白い皇帝服を着せた状態で、(あの、意味不明な)帽子の代わりに兎耳(片方の耳に赤いリボン付きで)をつけてやりたいくらいのものだが…
「とりあえず、少し目を休ませて…。その目じゃ、パソコンもダメだよ…」
そう云って、スザクはルルーシュを引っ張ってルルーシュの私室へと連れて行く。
「バ…バカ…放せ!俺には…時間が…」
「そうやって焦ったって、きっと、何かをミスして、逆に遅れちゃう事になるよ?いくらルルーシュだって…と云うか、体力に自信のないルルーシュじゃ他にも無理が出て来るのは時間の問題…。いっそ、後60年くらいかけて『ゼロ・レクイエム』やろうか?」
スザクは10%冗談90%本気な本音をその場でぶっちゃける。
大体、スザクだって、『混沌とした世界を何とかしてから死ね!』とは云ったが…タイムリミットは設定した覚えがない。
大体、そんな半年足らずで何とかなる程、現在の世界の混沌は生易しいものじゃない。
あんな寄せ集めの『超合衆国』と『黒の騎士団』は、既にシュナイゼルの掌の上で踊らされているフシがあるし、仮に、シュナイゼルから独立できたとしても、あんな、自力で自分の国を独立させられないような国々、自力で自分の国を安定させられないような国々の集まりは…『ゼロ』がいたからこそ、何とか存在で来ていたのだ。
そんな事は、ルルーシュに『頭の中まで筋肉で満たされている』と云われてしまう体力バカなスザクでも解る事だ。
寧ろ、シュナイゼルの掌で踊らされているのと、自力で何とかしろって事で、自力で頑張って行かれるのと…世界にとってはどちらが『マイナス』が少ないだろうか…
まぁ、そんな話はさておき…ルルーシュがその気になっているので、恐らく、『表側』だけはちゃんと『ゼロ・レクイエム』を成功させる事は出来るかもしれないが…
でも、見た目だけでは意味がないし…ルルーシュが『ゼロ』であった事を知るのは、『黒の騎士団』の一部だけらしいので、『ルルーシュ皇帝=ゼロ』って事にしてしまえば、『ゼロ・レクイエム』など、確実に失敗するのだが…
下手をすると、そこからマスコミに真相が暴かれて困るのは、恐らく『黒の騎士団』の方になる。
それはそれで面白いと思うのだが…今、それをやってしまうと、ルルーシュがまた海に身投げ…なんて事を考えかねないので、黙っている。
とりあえず、今は、姑息な手だとは思うのだが…こうして、『体調管理も騎士としての務め…』とか云いながら、ルルーシュが体力の乏しい自分の体に鞭打って遂行しようとしている『ゼロ・レクイエム』の阻止に励む。
そんな事を考えていた時に…ルルーシュのコンタクト付け外しのツケを払うかのように、ルルーシュがコンタクトを付けていられなくなった…と云う訳だ。
そして、ジェレミアに頼んでこんな事をマスコミに流して貰った。
『神聖ブリタニア帝国第99代唯一皇帝ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア陛下…急病にて休養に入られました…』
と…
その情報は…瞬く間に世界に発信された…
スザクは…確かに嘘は云っていないが…
ただ…ルルーシュはこの事実を知り、大層怒ったが…
でも、ルルーシュ自身、今の目ではコンタクトレンズをはめる事が出来ない。
ルルーシュの目の診察は、ロイドがしたのだが…どうやって『ギアス』にかからないようにしたかと云えば…
ルルーシュにはとにかく、猿轡を頑丈にした。
口の中に詰め込めるだけ布を詰め込んで、その上からぐるぐる巻きに布で口を塞いだ。
ルルーシュの『ギアス』の場合、相手の目を見ながら『命令を云わなければならない』のだ…
まぁ、本編では見落とされていたのか、意図的に無視していたのか…
TURN02で出てきた皇帝の前に引きずり出された時、目を塞がなくても、猿轡をしておきゃよかった…って事だったりするのだ。
しかも…事と次第によっては結構『萌え♪』シチュになる。
で、ロイドの下した診断結果は…
『目の充血が治まるまでコンタクトはしちゃいけませんよ?多分、『目が見えなくなる』と云う理由では陛下の場合、『後は死ぬだけだから構わん』とか云いそうですけど…。でも、後、凄く痛いし痒いし、涙が止まらなくなって、『ギアス』かけるとか出来なくなっちゃいますからね…。まだ、シュナイゼル殿下に『ギアス』をかけていらっしゃらないのでしょう?』
そんな事を云っていた…
ルルーシュは心の中で『どいつも、こいつも…何故こんなに非協力的なんだ!!そもそも、けしかけたのはスザクじゃないか!』とか思っているが…
しかし、肝心要のシュナイゼルに『ギアス』をかけていないので、流石にコンタクトの付け外しが出来ないのは困る。
あんな風に猿轡して人前に出るなんてそんな屈辱的な事が出来る訳がないし、そもそも、公の場に猿轡をして出てきて、一言も喋らずに帰る皇帝など見た事がない…
とにかく…これで、『ゼロ・レクイエム』達成が先に延ばされる事になる。
そして、ルルーシュが『病気療養中』って事になった時…『チャァァァァンス…』とばかりに『黒の騎士団』が大暴れを始めた。
と云うか、ルルーシュが解放させた元、ブリタニアの植民エリアのあちこちで暴動が起き始めたのだ。
そりゃ…これまでブリタニアの支配にあって、ブリタニアの資本が入っていた国々のブリタニア資本が全てブリタニアに回収されてしまったからだ。
流石に租界などのインフラまで持ち帰る事は出来なかったし、その分の建設費用などの請求はルルーシュは行わなかっただけでも儲けものなのだが…
いくら差別的扱いを受けていたとしても、ブリタニアの資本は大きい。
ブリタニア資本の企業で働いていた者たちは全て解雇され…失業者があふれたのだ。
で、お決まりの暴動…
「ルルーシュ…とりあえず、この騒ぎ…どうする?」
スザクが流石にこのニュースをのんきに笑って見ていられる程『KY』じゃねぇぞ…ってな感じでルルーシュに尋ねる。
「これで…ブリタニア皇帝の名の下に軍を派遣したら…ブリタニア皇帝が暴動を抑えた事になってしまうじゃないか…。それでは…『悪逆皇帝』の名に傷が…」
なんだか…妙な話になっているが…ここでブリタニアが介入する訳にも行かず、ただ、ルルーシュは自分がコンタクトレンズを付けて公の場に出られるまで、我慢するしか出来なかった。
copyright:2008-2010
All rights reserved.和泉綾