妄想(無茶振り)バトル04

TURN04 (賞品はルルーシュ=ランペルージ!)
アッシュフォード学園 バトルロワイヤル!W


 現在…ルルーシュはロロと一緒に逃走(否、ロロに拉致されたと云うべきか)一緒にいたのだが…そこをジノに見つかってしまった。
「せんぱぁぁぁい…良かった…。さっき、カレンに凄い顔で脅されて、落ち込んでいたんだけど…こんなところで先輩に会えるなんて…」
このわんこ属性の後輩…
ルルーシュとしては、どう扱っていいのか解らず…いつも悩むので極力傍に行きたくないと思っていた。
貴族のくせにやたらと庶民の暮らしに興味を持ち、疑う事を知らない飼い犬の様にしっぽを振ってついてくるからだ。
ジノが知らないのはある意味仕方ないが…ルルーシュはこれでも、こいつが忠誠を誓っている(皇位継承権を失っているとは云え)シャルル=ジ=ブリタニアの息子で、本当ならこんな風に馴れ馴れしくできる相手ではないのだ。
少なくとも、シュナイゼルに礼を払うように、ルルーシュにも礼を払わなくてはいけないのだ。(本編じゃ、ルルーシュが皇帝になって思いっきり敵意を向けてはいたが、ルルーシュはれっきとしたブリタニアの皇子様である)
「なら…俺と一緒にいたりしたら…またカレンに脅されるんじゃないのか?」
一応核心をついてみるが…
「そうかもしれないけど…見つからなければいい…。さっき、グラウンドでアーニャとバトルしてたから…暫くは見つからない…」
サラッと云って退けた。
実は…天然のふりして実は、策略家なのか?
まぁ、ブリタニア帝国最強の12騎士に名前を連ねているのだから…多分馬鹿ではないとは思うが…
―――ただ…メタンガス充満しているところで銃撃しようとしたスザクもラウンズだしなぁ…
ついうっかりそんな事を考えてしまうと、目の前にいるこの、ナイトオブスリーも頭の構造はあまり期待できない。
大体、暴走した『ギアス』を抑える為に瞼を縫いつけちゃう奴がナイトオブワンで、人殺しは大好きだが、どう見てもおバカキャラな奴がナイトオブテン…
わんこ属性(多分、種類の違うわんこ属性だとは思われるが)が約二名…
「兄さん…こんな人放っておいて…生徒会室へ行こう?ラウンズと紅月隊長が殆どの所為とをのしちゃっているから…今がチャンスだよ…」
ロロに促されると、確かにその通りだとルルーシュは頷く。
「ああ、そうだな…。じゃあ、ジノ、俺に会う事が目的だったのなら、目的は達成したな?俺は行くぞ…」
これは大真面目にボケているのか、ワザとなのか…今のところ多くの人の議論を呼ぶ謎である。
大体、ロロが下心なしにルルーシュを助けるなどあり得ないのだが…
―――兄さんをGet!できるなら、カマトトでも何でもなってやる…
実はロロの本心は怪しまれないようにルルーシュをGet!する事だ。
ベビーフェイスである事をこれ程有効活用している事は殆どないだろう。

 そして…ばったばったぶっ倒された生徒たちを横目にルルーシュとロロがクラブハウスへと向かう。
「お待ちしておりましたわ…お兄様…」
涙ぐみながらルルーシュに声をかけるその声…
そう…ルルーシュ以外の人間は『これほど腹黒な少女もいないだろう』と云う評価を下している…ルルーシュが誰より、何より愛する…最愛の妹…ナナリーだった。
本編ではルルーシュにとってのラスボスだったが…ここでは、このイベントの参加者にとってのラスボスだ…。
しかも、正真正銘最悪最強の…
「ナナリー…俺を待っていてくれたのか…?」
本編ではひどい事を言われまくり…台本上の話とは云え、さめざめと泣いていた日々…
思いだしても涙が出てくるが…それでも…ここでは、こんなに愛らしい涙を見せながらルルーシュを待っていてくれるのだ…
「勿論です…。本編ではすっかり引き離されてしまいましたが…私はお兄様の事を愛しているんです…」
ルルーシュがナナリーにこの一言を言われて陥落しない訳がない…
「ナナリー…」
感激しながらルルーシュがナナリーに近づこうとした時…それを止めたのは… 「兄さん…ダメだよ…。騙されちゃ…」
「まさか、咲世子がナナリーに化けているとでも云うのか?しかし、咲世子がナナリーに化けてどうするんだ?」
どこまでも、ナナリーを美化しまくっているルルーシュはとことん勘違いした返事をロロにする。
「本物のナナリーだから危ないんだよ…」
ロロは自分の身の危険も顧みず、ルルーシュを必死に説得する。
「何を言っているんだ…。ナナリーが危ないなんて…」
ルルーシュがやや怒りを覚えた様にロロを睨む。
しかし、ロロもここで引き下がる訳にはいかないのだ。
「兄さん…ナナリーを信じたい気持ちは解る…。でも…兄さんが信じた相手って…みんな、兄さんを裏切っているじゃないか…。枢木スザク然り、『黒の騎士団』然り、兄さんの母親然り…」
言われてみればその通りだと…うっかり思ってしまうが…
「ナナリーは絶対にそんな事はしない!」
「ナナリーだって云ったよ?『お兄様、スザクさん…私は…お二人の敵です…』って…」
普段、ルルーシュはこうした口論で負けた事がない。
どんな卑怯な手を使っても口では負けた事がない…(ミレイ以外には)
しかし…事実を並べられてしまうと…
『その通りだよ…ルルーシュ…』

 これまで、この空間には3人しかいなかった筈なのだが…
「この声は…スザクさんですね…」
「え?僕、すぐにここに来ないで、他のところにいたのに…」
ロロが驚いてそう口にすると…
「ふははははは…僕はルルーシュなら1km先でも匂いで解るんだ…」
「スザク…お前…犬だったのか…?」
「と云うか…いくら『ゼロ』の仮面を継承したからって…笑い方まで…」
「スザクさん…やはり…私は…あなたの敵です…」
スザクの登場により、4人がそれぞれ、その時の率直な…素直な気持ちを吐露した。
そして、結局、ここに集まったのはこのメンツだったか…と思った時…クラブハウスの出入口の方で大きな爆発音がした。
そして、その爆発の直後に、校内放送が入った。
『えぇ〜現在クラブハウスにいる生徒は…至急避難してください!』
ミレイでもこんなに慌てるのか…と思われる程…そんな感じの放送だ。
『現在…クラブハウスの出入口付近でブリタニア軍のモルドレッドと『黒の騎士団』紅蓮聖天八極式がバトルを繰り広げています…』
どうやら…ミレイの命令でルルーシュが政庁に『くれぐれもイベントの日はナイトオブシックスにモルドレッドを出動させないで下さい!』と申請に行き、ナイトオブセブンのスザクが軍全体に指導して、総督であるナナリーがモルドレッドを発進させたスタッフは全員、トウキョウ租界、シンジュクゲットー市中引き回しツアーにご招待…と云う念の入れようだったが…
ルルーシュとスザクが慌ててクラブハウスの外に出るとホントに紅蓮とモルドレッドが戦っていた。
「おい!アーニャ…何をしているんだ!」
スザクが大声でモルドレッドに呼び掛けた。
『先に紅蓮を出したの…カレン…。アーニャ…悪くない…』
そう云う問題じゃない…
『だって…アーニャが諦めてくれないんだもん…。実際に肉弾戦ってあんまり得意じゃないから…。神根島でもスザクなんかに捻じ伏せられちゃってるしね…』
否…素手でスザクに勝てる奴など…この世界にいたら、是非とも教えて欲しい…恐らく、外野の人々はそんな風に思っている。
「カレン!やめろ!クラブハウスにはロロとナナリーもいるんだ!」
ルルーシュも慌ててカレンを止めに入るが…カレンは『ゼロ』の云う事なら聞くが、ルルーシュの云う事は聞かない。
勿論、『ゼロ』になったスザクが云う事を聞かせられる筈もない。
カレンにとっての『ゼロ』はたった一人なのだから…
ルルーシュの声が聞こえているのか、いないのか…ナイトメア達は広いグラウンドの方へと向かって行った。
「カレンもアーニャも…完全に当初の目的を忘れているね…」
「戦いがなくなって…欲求不満なのか?あいつらは…」
ナイトメアを自分の目で見ていたルルーシュとスザクが大きくため息をついた。

 とりあえず、ルルーシュとナナリーとロロの住まいであるクラブハウスは無傷で済んだ。
ある意味、ルルーシュの目の前でドラ◆ンボールさながらのバトルを繰り広げていたスザクと咲世子並みに凄いと思う…。
「さて…ルルーシュ…一緒に生徒会室へ入ろう?そしたら、ルルーシュは1週間僕の貸し切りだし…」
「俺は誰とも入らん…。こんな目に遭うのは御免だ!俺が一人で生徒会室へ入れたら今回の賞品は誰にも渡らないって事らしいからな…」
ルルーシュの言葉にスザクの眉がぴくりと動いた。
「ルルーシュ…それ…本当なの?」
その時のスザクは…神根島で『ゼロ』を追い詰めて銃を突き付けている時と同じオーラを放っている。
これは誰に対してはなっているものなのか…
『ゼロ』モードの時ならこんなスザクの殺気も何とかやり過ごせるが…こんなノーマルモードの『ルルーシュ』では震えあがるのは当然で…
「ス…スザク?一応…イベントの説明パンフレットには…記載されていた筈だが?」
「ルルーシュ…僕の気持ちを知っているくせに…そんなイジワルを云うなんて…いい度胸をしているね?ひょっとして、僕にパワーアップしたあんな事とかこんな事とか、あまつさえそんな事までされたいのかい?」
あんな事って何だ?こんな事って?あまつさえそんな事とか言っているよ…この男…とか、パワーアップって…どういう意味だ?とか…多分、今更なのだ。
ルルーシュが少しずつ後ずさっていく…
しかし、逃げ道はすぐに塞がれる。
そう、すぐにクラブハウスの出入口のドアにぶつかってしまったのだ。
「ス…スザク…それは俺に怒る事か?おまえが、パンフレットを見ていないから…」
「そんな事はどうでもいいよ…。ルルーシュは…僕がこんなに愛しているのに…そうやって焦らして…そうか…ルルーシュはお仕置きが好きなんだね?だからそうやってワザと僕を怒らせるような事をするんだね?」
完全に黒オーラモードに入ってしまったスザク…
―――今回のルールを決めたのは会長で、そのルールをお前が知らなかったのは俺の所為じゃない!
心の中で全力で叫んでいるのだが…
「せんぱぁぁぁぁい…ジノ=ヴァインベルグ…ただいま御前に復活いたしましたぁ♪」
どこまでも打たれ強いもう一人のわんこ属性キャラ…
「ジノ!」
これが…ルルーシュにとって天の救いだったのかどうかは…多分、よく解らない。
「ジノ!お前が賞品をゲットしろ!」

 思わず叫んでしまった一言に…目の前にいるスザクの目は…普通の人間ならこの目だけで射殺されてしまうのではないかと思われるような負の色に染まっていた。
「イエス、ユア・マジェスティ♪」
ルルーシュの一言ですっかり元気を取り戻したジノがふわりとルルーシュの身体を抱えあげた。
「待て!ジノ!ルルーシュに『イエス、ユア・マジェスティ』と云っていいのはナイトオブゼロの僕と(100億歩譲って)ジェレミア卿だけだ!」
「そんなもん云ったもん勝ちだろ!それに、ルルーシュ先輩が私の名前を呼んでくれたんだ…。ルルーシュ先輩とのラブラブ1週間は私のものだ!」
そう云うと…ジノはルルーシュの身体を庇いながら生徒会室の窓ガラスをぶち破った。 そして…ここに勝者が決まったのだ…
窓ガラスの割れた音…
このイベントの勝者は…ミレイ自身がこれを賭けにしとけば良かったと思うような…ダークホース…ジノ=ヴァインベルグの手に渡ったのだ…
「……」
ルルーシュとしては、やっと、あの大混乱から解放されると安心したのか、完全に脱力して、ジノがルルーシュを床に下ろすと、へなへなと座り込んでしまった。
そして…これと同時に花火が上がった・
『勝者は…誰も見向きもしていなかったダークホース…ジノ=ヴァインベルグ、高等部2年に決まりましたぁぁぁ…』
ミレイのこの声の中には…
―――フフフ…これからリアルなルルーシュを巡ってのバトルロワイヤルが日常化するわね♪毎日がお祭り♪楽しみだわぁぁぁ
と云う、先天性お祭り女の一番当たり前と云うべきか、ごく自然な気持ちが込められていた。
そして…満面の笑みでルルーシュを肩車してはしゃいでいるジノに…多くの殺気が向けられている。
その殺気を向けている者達が思っている事は共通していた。
―――幸せな1週間など…くれてやるものか…
この際、越権行為だろうが、職権乱用だろうが、関係ない!と言わんばかりの人間がここにいた。
ジノの同僚であるナイトオブセブン…
ジノの上司であるエリア11総督…
ルルーシュは彼らの殺気に気がつき、少々早まったかも知れないと思うが…きっと、誰が賞品を受け取っても結果は同じだとシミュレートしていた。
満面の笑みで幸せそうになっているわんこなジノが…微笑ましいのだが…後々の事を考えると、心の中で謝罪していた。

 表彰式の時…参加者はスザク、ナナリー、カレン、アーニャ、ロロ、リヴァル、ニーナだけだった。
と云うのも、彼らが暴れまくって倒れている人間の上で戦ったりしていたので…体中に痛みを訴え、表彰式に参加する事が出来なかったのだ。
そして、ミレイの手により、リボンを掛けられ、デコレーションされたルルーシュがジノの手に渡されたのだった。


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