ここは、アッシュフォード学園の生徒会室…。
二日がかりでアッシュフォード学園の生徒会役員たちが『コードギアス反逆のルルーシュ』及び、『コードギアス反逆のルルーシュR2』本編をすべて見終えた。
『コードギアス反逆のルルーシュR2』の最後に近づいて行くにつれて、シャーリーとロロは感極まって行き…同時に、常にルルーシュを拒絶し続けてきた枢木スザクへの(ある意味お門違いな)怒りへと変わって行った。
最終回を見終えたときには、その回の出演者たちも涙を流していたが…シャーリーとロロがいち早く、我に帰り、スザクに掴み掛った。
「スザク君!なんで、ユーフェミアさまが初めてのスザク君の理解者だったって思っちゃったわけ?」
「そうです!枢木卿の事を誰よりも真剣に必要として、大切に思って…自らの危険を顧みずに枢木卿を救い出した兄さんを拒絶し続けて…」
二人の怒りは相当なもので、涙を流しながら般若のような怒りを露わにしている二人に思わずスザクも後ずさってしまう。
しかし、あれは、鬼脚本と設定の所為であって、スザクに全面的に責任を押し付けるのは気の毒のようにも思えるが…
この二人のルルーシュへの執着を知っている賢い(?)生徒会メンバーは完全に口を噤んでいる。
「否…あれは…僕としても…何と言っていいか…」
この二人…ルルーシュの為にブリタニア軍人に銃で発砲したり、ルルーシュのくれたプレゼントを触れられただけで仲間を殺しちゃったりという経緯があるだけに…
スザクとしても、下手な事を云って怒りを増幅させるのだけは避けたいところだ。
しかし、ここに、(一応)『ゼロ』の親衛隊長で、誰も見ていない事をいい事に皇帝になったルルーシュの唇を奪った紅月カレン(カレン=シュタットフェルト)が、あの時の恨みとばかりに入らぬ事を口にする。
「スザクってさぁ…体力のないルルーシュが頭脳戦をやって、自分の理解不能だからって卑怯者呼ばわりしてたわよね…。スザク相手にルルーシュに対して素手で戦えって…どんな鬼よ…」
既に、自分自身が生身のルルーシュ相手に輻射波動をぶっ放そうとした事は完全にスルーしていると思われる。
しかし、スザクも流石にそこは負けなかった…
「カレン…君には云われたくないよ…。ルルーシュを二度も裏切って生き残っている君には…」
「「どっちも同罪!!」」
この二人のいい争いに関してはシャーリーもロロも怒りを感じたらしい。
まぁ、よくよく考えてみれば、二人ともどっこいどっこいな事をルルーシュに対してしているのだ。
カレンは『共に進みます…あなたと共に…』とか云いながら、舌の根も乾かぬ無印の最終回で『ゼロ』の正体がルルーシュだと知るやいなや、しっかりルルーシュを見捨てているし、スザクも薄々気づいていながら、きちんと確認しようともせず(確証を得ていないから止める事も当然していない)、にっちもさっちもいかなくなった時に段取りすっ飛ばしてルルーシュを殺そうとしている。
この4人の云い争いに生徒会メンバーの反応は様々だ。
面白い事になりそうだと…嬉しそうに様子を窺っている生徒会長のミレイ=アッシュフォード…
彼らの異様な殺気に、『R2』の最後の方ではあれほど勇ましかったのに、素に戻ってしまうと、やっぱりただの人だったらしく、びくびくとミレイの背中に隠れているニーナ…
止めた方がいいのか…でも、自分がしゃしゃり出て行ったら、自分の命が危ない…そう思ってしまう小市民、リヴァル…>
庶民の学校は楽しいと…このメンバーたちのやり取りをうきうきわくわくと云った表情で眺めているナイトオブスリー、ジノ…
これも面白そうだからブログに掲載…とばかりに携帯電話で写メを撮って随時、自分のブログ更新を続けているナイトオブシックス、アーニャ…
本当は当事者なのに、『我関せず…』を貫こうと、とにかく他人のふりをして、パソコンを使って、新しいソフト開発に勤しんでいる『ゼロ』であり、ブリタニア皇帝にもなった、ルルーシュ…
とりあえず、ルルーシュはここは黙っておく方が得策と…
そして、あの4人のバトルが、外野も巻き込んでの騒ぎになったと同時に生徒会室を出て行こうと画策をしている訳なのだが…
確かに、あの本編では完全にルルーシュの一方的な片想い設定だ…
他の誰も目に入っていなかったと云うのに、スザクは他の女を選んだのだ…
ルルーシュの目の前で…
それ故に、いつもルルーシュを裏切って生き残っていたカレンにさえ、エールを送ってしまいそうになる…
『もっと云ってやれ…』
と…
しかし、カレン自身、『ゼロ』を裏切りまくっているので、その部分を突かれると弱いのだ。
その点、シャーリーとロロは、命がけでルルーシュを守ろうとして、ロロに至っては、本当にルルーシュを守る為に命を落としている設定だ。
ルルーシュとしては、何も多くを望んで『ゼロ』になった訳じゃないのに…
ホントは、スザクを取り戻して、二人でナナリーを守っていければ良かったのに…
その辺りはどこでどう間違ってしまったのだろうか…と真剣に悩むところなのではあるが…
最終回、ナナリーは泣きながら云っていた…
『私は…お兄様だけでよかったのに…』
と…
ルルーシュ自身、それはナナリーとある意味同感で…ただ、ナナリーとちょっと違うのは、『ナナリー』だけでなく、そこに『スザク』も入っていると云う点なのだが…
しかし、それを贅沢と云ってはあまりに可哀そうというものだ。
本編を見ると、確かに表面上は『ゼロ』の笑い声はあまりに悪役な高笑いだし、何か云えば、本当に悪のラスボスらしいセリフを吐いている訳だが…
しかし、間違ってはいけない…
確かに、見た目的にはルルーシュは『悪』に見えていたとしても、彼は、そこらのヒーローものみたいに卑怯なまでの強さを持っていた訳じゃない。
自分の力では、とてもじゃないが、ブリタニア軍の銃所持も許されないようなナンバーズの名誉ブリタニア人一人さえも倒す事が出来ないほどの非力さだ。
本来、ヒーローものの悪のラスボスって云うのは、最後の最後まで『そんな卑怯な方法を撮らなくても、あんたがしゃしゃり出て行けば正義の味方と称している主人公たちは一発で全滅だぞ…』というくらい強い。
大抵、ラスボスを倒す為の最終回には、絶対に『これで生き残っているなんて卑怯だよ…』と云う奇跡が起きて、主人公たちの勝利となる。
そう…『悪のラスボス』とは…(大人の事情とはいえ)最初っから、正面突破で主人公を叩き潰しにかかれば絶対に『悪のラスボス』の勝利は間違いない程の強さを持っているのだ。
それに加えて、ナンバー2にはそれこそ、卑怯なほど頭のいい参謀役がいて…(それこそ、そのラスボスに心酔し、忠誠を誓っちゃっている)
つまり…力関係で行けば、『ゼロ』は通常の『悪のラスボス』ではない。
分析してみよう…
『ゼロ』が『ブリタニアを壊す』という名目でテロリストをしていた扇たちをまとめ上げた。
そして、彼らは『黒の騎士団』のメンバーとなったが…。
最後まで『ゼロ』が掲げた『ブリタニアを壊す』為の組織であった事を覚えていた者たちは何人いたのだろうか?
少なくとも、思いつかない。
親衛隊長をしていたカレンでさえ、その事を理解出来ず、スザクの『『ゼロ』は日本人を利用していた…』という、あまりに稚拙と云えば稚拙な一言でスザクの言葉に納得し、『ゼロ』を見捨てているのだ。
そもそも、日本を独立させたところで、ブリタニアが存在していたのでは、脅威が消えない事は明白だ。
大体、自分たちの仲間の犠牲を『0』で終わらせ、ブリタニア軍を叩き潰す…などと云う神業…どうやったらできるのか知りたいところであるが…
確かに…ルルーシュも余計な事を云っているとは思うが…
「大体、枢木卿もカレンさんも…兄さんをなんだと思っているんですか!枢木卿を必要として…そして、何度も枢木卿を手に入れようと頑張っていた兄さんに対して…酷すぎます!」
「そしてカレン!ルルが頑張って、頑張ってカレンを助けたって云うのに…。ルルがシュナイゼル殿下に売られたときだって…自分勝手な言い分ばっかりで…。で、最後の最後に『あれから世界はちょっとはましになったわ…』って…。ルルの事を好きだったんならなんでもっとルルの事を見ていなかったのよ!私なんかよりずっとルルの傍にいたくせに!」
二人の怒りはある意味ご尤もだ。
確かに鬼脚本の所為だと云ってしまえばそれまでだ。
実際問題、あの脚本をどうにかするなど彼らにとっては無理な話で…
それでも、シャーリーもロロも…『コードギアス反逆のルルーシュ』と云う作品の中で、誰よりもルルーシュを愛していたと云っても過言ではない。
ルルーシュがこよなく愛したナナリーだって、結局、ルルーシュの事を何一つ理解していなかった。(これに関してはコンプリートブックにしっかりとルルーシュが何を為そうとしていたか真相を知るまでルルーシュを恨んでいたと書いてあったくらいなので)
しかし、ルルーシュとは、ほとほと片想いばかりなキャラクターと言えよう。
スザクにはとっとと捨てられ…それどころか、ある意味、感情的になって、ルルーシュを理解しようとしないスザクにやみくもに憎悪と嫌悪を撒き散らされ、最終的には、スザクの願いを叶え、本当は誰よりも生きていたかったルルーシュ自身をスザクに殺させている。(一応、表向きにはそう言う事になっているので…。和泉自身は完全にルルーシュ生存説派なので、ルルーシュが死んでいるという前提のお話はとても少ないです)
カレンにしても、『ゼロ』の正体がルルーシュと知った途端、何故か涙を流して(多分)悲しんでいたが…これまでたった一人で『黒の騎士団』を支えてきた『ゼロ』自身のこれまでの行動よりも、『スザク』のホントかウソか解らないオカルト発言を信じ切って逃げ出し、挙句の果てに『ゼロ』が『黒の騎士団』をコマ扱いしていたと云うそれだけの表向き表現を鵜呑み(こんな時ばっかりルルーシュの嘘を信じ切っている)にして、誰よりも『ゼロ』の傍で彼の行動パターンを見つめ続けながら、ブリタニア皇帝になった途端、さっさと裏切り者扱い…
「兄さん…次やる時はカレンさんと枢木卿抜きでやろうね…。今度こそ僕…兄さんの役に立って見せるから…」
「ルル…私も頑張るから…。次やる時には絶対に私に声をかけてよね…」
シャーリーとロロのこの一言で…ルルーシュの逃げ道は塞がれた。
すっかりこの二人の勢いにのまれていたと云う事もあるが…
と云うか…あんたら…またやる気ですか?
あの、世界中巻き込んでの大騒ぎ…
「シュナイゼル殿下…また、『フレイヤ』作ってくれるかなぁ…」
「その前に脚本の書き直しですよ…シャーリーさん…」
どうやら…ルルーシュに対する想いがこの二人をつないだらしい…。
元々、ロロのヤキモチでシャーリーは殺されちゃっているのだが…
「おまえたち…そろそろやめろ…。俺の方が惨めになるから…」
スザクとカレンへのフォローを入れる気力すら奪われたルルーシュが頭に血の上っているシャーリーとロロにそう告げる。
ずっと我関せずで徹してきたが…
どうにも居た堪れなくなったらしい…
この白熱した二人に対して、傍観者たちもやっと息をつけるようになった。
「兄さん…」
「ルル…」
ホントはもっと云ってやりたい気分なのだろうが…
これ以上続けると、本当に収拾がつかなくなりそうだった。
それに、スザクとカレンが黙ってしまっているので、何とも空気が凍りついている。
「おまえたちの気持ちは嬉しい…。だけど…スザクもカレンも悪くはない…。勿論、シャーリーとロロも悪くない…。悪いのは…あの鬼脚本だ…。鬼脚本を憎んで、人を憎まず…だ…」
ルルーシュがそこまで云うと…
「ごめん…ルルーシュ…僕…」
しゅんと落ち込んだ犬耳が見えるスザクがそこにいる。
ナイトオブセブンになってからのあのおっかないスザクはいったいどこへ行った?と、尋ねてしまいそうになる程のギャップである。
「スザクが謝る事じゃない…。これから、色んな二次創作で幸せになればいいだけの事だ…」
そこでも他力本願にならざるを得ない、こうしたアニメのキャラクター達…
でも、色々な作品の中で、彼らが本当に幸せになっている姿を見る事も出来る…
しかし…カレンは決して謝る事をしなかった。
キッとルルーシュを睨みつけた。
「あんたも悪い!だって、肝心な事云わないし!言い訳しないし!潔すぎるし!頭いい癖に鈍感だし!頭いい癖にバカだし!ブリタニア人のくせに自己犠牲やってるし!結局シスコンのままだし!最後の最後までスザクしか目に入っていなかったし!」
多分…これはカレンの本音だと思われる。
実際に、カレン自身、ルルーシュに惚れていたらしいと云う描写はあった。(カレンが素直に認めるかどうかは別にして)
ただ…ルルーシュはルルーシュで無意識に八方美人をしまくっているので、そう言う意味ではスザクの天然と変わらない。
本編では最終的にルルーシュは誰の事が好きだったのかよく解らない。
シャーリーにもカレンにもC.C.にも…結構、変な執着を持っていたように思われる。
と云うか、自分の目の前から一人、消えると次に移っていた…と思われても仕方ない描写もあった訳だが…
「そう言えば…そうよね…。ルル…結局、誰が好きだったの?私の命がけのあの告白は何だったの!?」
カレンの支離滅裂ともいえる様な本音に…シャーリーも呼応したらしい。
ここでシャーリーはルルーシュを詰問する側に回ってしまった。
そこにロロがチャンスとばかりに、割って入った。
「兄さんは皆さんに優しいから…だから勘違いされちゃったんですね…。兄さんは僕の為に力仕事が苦手なのに僕のお墓を作ってくれました!そこには僕への愛がこめられているんですよ…」
誇らしげにロロが語る。
そこにスザクが待ったをかけた。
「ロロ…それは違うよ…。ルルーシュが最後に選んだのは僕だ…。あの、『ゼロ・レクイエム』で僕たちの絆は永遠のものとなったんだよ…。そう…ルルーシュは僕にすべてを預けてくれたんだ…」
ここで…空気を読まない且つどこまでもマイペースな枢木スザク降臨…
こうなってしまうと…ルルーシュにも、書いている本人にも手の施しようがない…
ここから暫く…今度は、ルルーシュの心は最終的に誰に向いていたのかが議論される事となる。
そうなると、スザクもカレンも遠慮する訳がなく…
『やっぱり…この学園の生徒会…面白い…』
全てをブログに記載して、この一言で締めくくったアーニャは…満足げにこの記事の感想のコメントを読み続けていた…
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