ここは、『コードギアス反逆のルルーシュ』及び、『コードギアス反逆のルルーシュR2』の出演者の控室…。
本編のシナリオの中では敵同士だった者たちもここでは敵でもないし、憎み合っている訳でもない。
ここではいつも、本編の話、Sound Episodeなどの話題で盛り上がる。
今、ここに集まっているのは、ルルーシュ、カレン、藤堂、千葉、ディートハルト、ロロ、C.C.(記憶は既に戻っている)そして、(自称)ルルーシュの護衛役のスザク(特別参加)である。
控室なのだが…ここでは、無駄にルルーシュ総受けなので、既に一触即発な空気が生まれているのだが…
それでも、ルルーシュの一喝で何とか抑えている状態である。
そうでもなければ、この控室がルルーシュを巡ってのバトルロワイヤル会場になっているところだ。
そして、(勝手にルルーシュについてきた)枢木スザクは…かなり、浮いた存在だが、本編では空気を読まないキャラとして定着していたお陰で平気な顔をしていられる。
ルルーシュは内心、
―――神楽耶を連れてくるべきだったか…
とも思ったが…それでも、腕力勝負ならカレンと藤堂が力を合わせれば、何とか、この『体力大魔王』の称号を持つスザクを止めてくれるだろうと云う、淡い期待を持つが…
どうなる事やら…
これまで、過去に二回、このテの話をしてきたが、結局話の中心に来ていたのはルルーシュだった。
そして、生け贄の如く、ルルーシュは弄ばれていた。
だから…この、『黒の騎士団』のメンバーたちが揃い、しかも、『Sound Episode 5』の『CタケられたC.C.』の出演者たちが揃っている。
ここでなら、多少は『ゼロ』としての威厳を発揮できるだろうと…他の事でなら完璧なまでの先読みを出来て、様々なイレギュラーに備えられるルルーシュだが、自分の事となると、絶対にイレギュラーに備えるどころか、先読みすらあてにならない事をすっかり忘れている(ある意味ポジティブな)予想を立てている。
この先の話で、ルルーシュは実感する事になるのだ…
それこそ、本編ではそんな事…実体験しても決して口にした事のない言葉…
『世の中そんなに甘くない…』
実際に、ルルーシュは本編では『黒の騎士団』を率いて、世界の1/3を支配する大帝国に対して、大真面目に叩き潰そうと考えさせた程の成果を上げていたのだが…
しかし、ルルーシュの本当の敵は…実際のところは身内にいた…と言う結末だった訳で…
それ故に、ここにいるメンツに弄ばれるのは絶対にプライドが許さなかった。
今度こそ…この場の主導権は自分が握ると…強く、強く、心に誓うのだが…
近くに控えていたルルーシュが皇帝になってからのルルーシュの騎士は…
―――また…無駄な努力を…
と、ルルーシュにばれない様にため息をひとつ、こぼすのだった…
そして、顔をそろえたところで、本題へと入って行った。
「で…ルルーシュ…お前は今日は、ルルーシュとして来ているのか?『ゼロ』として来ているのか?」
まず前置きと確認…とばかりにC.C.が口を開いた。
ルルーシュはふふんと笑いながら自信満々に答えた。
「ここには『黒の騎士団』のメンバーしかいない…当然…『ゼロ』だ!」
この言葉に控えていたスザクが『のちの助け船』になるようにと口をはさんだ。
「僕は『黒の騎士団』のメンバーじゃないからルルーシュとして見ているから…安心して…」
最後のセリフに何かカチンと来るものがあるのだが…既に予定の尺を大幅にオーバーしているので、ルルーシュはあえてスルーする。
「で、皆さんの欲しいあの、妙なきのこの『副作用』って何ですか?」
何故かこの場をロロが仕切っている。
恐らく、『ロロに『きのこ』の話をさせたら、ろくな事がない…』と判断したスザクが裏から手をまわして和泉綾にそう設定させたのだ。
「はいはいはぁい!」
勢いよく手を上げたのはカレンだった。
「はい…紅月隊長…」
このハイテンションな…本当にすっかり女子高生な『ゼロ』の零番隊隊長を指名する。
「ルルーシュの中身はそのままで身体だけ小学生に戻っちゃうのってどう?ほら、某探偵アニメの主人公みたいに…」
カレンの提案に、その場は一瞬時間が止まり、その後…ルルーシュ以外の登場人物たちは妄想に耽り、まるで、ロロのギアスにかかったかのような空間へと化す。
―――『ゼロ』がこの性格で…身体だけ小さくなったら…面倒を見るのが厄介だな…性格がこれだけ扱いにくいと…単に生意気な子供になるだけだな…(By.ショタ走れなかった藤堂)
―――藤堂さんと一緒に、このひねくれた子供を素直な子供へと調教…じゃなくて、躾け直す…。本当は自分の子供がいいけれど、『ゼロ』位美形なら…悪くないか…(By.実は普通の家庭に憧れている千葉)
―――これで、ツンデレ少年のビデオクリップを発売すれば…そして、いろいろなコスプレをさせれば…昨今、ピザ代に予算を圧迫されている『黒の騎士団』の予算に少しでも潤いを…(By.ホントは『萌え♪』が欲しいだけのディートハルト)
―――こいつは…子供の頃は可愛らしい素直な子供だったからな…。今のまま子供にしてもそれはそれで楽しいかも知れんな…(By.この中で唯一生まれた時からルルーシュの事を知る魔女)
―――小さい時の『俺ルル』は見たくないなぁ…。あの時、僕に『俺』って行った時もかなりの違和感だったしなぁ…(By.空気を読まずにぶち壊すナイトオブゼロ)
カレンの意見にはそれぞれの意見が飛び交い、かなりの妄想が駆け巡っているようだが、結構賛否両論らしい。
おまけに、ルルーシュの子供時代を知るであろう二人の顔を見るとあまり乗り気ではないようだ。
「そこの二人!何か文句でもあるの!」
カレンは明らかに不満だと言いたげに怒鳴りつける。
「俺は大いに不満だ!何でいつも俺が話の中心に持って行かれるんだ!」
ルルーシュの大いなる本音のどなり声に、ここの参加者全員が意見が一致しているようで…
「「「「「「「ルルーシュのネタが一番『萌え♪』るから…」」」」」」」
満場一致の意見らしい…
ここにはやっぱり、ルルーシュの味方がいない…その場でルルーシュが脱力してしくしくと泣き出してしまう。
過去2回のこのネタ話で、さんざん弄ばれてきた事を悲しみ、自分の運命を呪いたくなってしまう。
そんなルルーシュを見かねたのか、スザクがポンとルルーシュの肩に手を置いて声をかけた。
それこそ、満面のエンジェルスマイル(しかし中身が天使かどうかは別の話)で…
「ルルーシュ…なら、その逆は?中身が子供になって見た目は大人…。それはそれで、素直で可愛いルルーシュになると思うよ?」
自分のナイトオブゼロの(ルルーシュにとっては)容赦のない一言にさらにルルーシュはさめざめと泣きだす。
そして…周囲を取り巻いているメンバーたちは…色んな疑問の中に立っている。
「ルルーシュって、昔はこんなひねくれたヘタレじゃなかったの?」
カレンの素朴な疑問が誰かに向けられる。
「ブリタニアの王宮にいた頃には…それはそれは素直な…可愛らしい皇子様だったぞ…。アリエスの離宮に来る皇族、貴族、使用人である平民に至るまで老若男女問わずに悩殺していたぞ…。あ、これはその頃の写真の一枚だ…」
そう云って、C.C.はメンバーたちに皇子時代のルルーシュの写真を見せてやる…
その写真に見入って…数分間…
再びロロのギアスにかかったかのように空気が止まる。
そして…彼らの妄想タイムが始まった…
今度は…本当にルルーシュ以外のメンバーたちが…
ルルーシュはと云えば…相変わらず脱力したまま泣いている…(そして、泣いているルルーシュに『萌え♪』を感じる和泉綾に復讐の炎を燃え上がらせる)
そして、現実世界に帰ってきた者たちは…
「ルルーシュくんがそんな可愛らしい性格で、そんな容姿だと…外を歩くのが危険極まりないな…。今のツンデレでさえ、危ないと云うのに…」
―――藤堂…間違っているぞ!なんで俺がそんな風に全ての人間から『萌え♪』とやらの対象にされねばならん!
「確かに…仮面をつけていて正解だったな…。あのコスチュームでその顔で、あのアクション…世の『萌え♪』のオーラを一身に受けて襲われる確率200%だ…」
―――千葉!お前はまともな奴だと信じていたのに!それは間違っていたのか!
「性格が変わると表情も変わりますしね…。素直なゼロだったらナチュラルにフェロモンを振りまいて、追っ払う術も知りませんからねぇ…。一瞬で消える効果ならいいかもしれませんが…
―――ディートハルト…これ以上お前を『黒の騎士団』に招き入れた事を後悔させないでくれ!俺は少なくとも人見る目だけは自信があったのだ!
「素直で可愛らしい性格のルルーシュかぁ…。私としては、ツンデレの方が好みだけど…でも、素直で可愛らしい『僕ルル』もいいかもねぇ…今度は素直な性格だから…いじり易いだろうし…」
―――カレン…そんなに『僕』と云う一人称が好きならスザクがいるではないか!なぜそこで俺に照準を合わせている!
「僕、兄さんは今のままでいいと思う…」
―――さすがロロ…俺の弟だ…!
「だって、今の兄さんだって、僕には優しいし…それに…すっごく可愛いしね…」
―――ロロ…お前のそのエンジェルスマイル…切り刻みたいと思うのは罪か?
「まぁ、僕も『僕ルル』を知っているけど、その時にはブリタニアの捨てられた皇子だったからなぁ…。素直で可愛らしいルルーシュに目をうるうるされたらたまらないかも…」
―――スザク…お前…俺をそんな目で見ていたのか…。お前だけは…今の俺を認めてくれていると思ったのに…。それに…なんで、そのエロ路線に走ろうとするんだ…
「ルルーシュ…結局どこへ行っても『萌え♪』の対象なのだな…」
C.C.がまるで他人事のようにルルーシュに声をかける。
「貴様が…その口で…そんな事を云うのか…」
既に場所をわきまえずに『悪逆皇帝オーラ』全開でC.C.を睨みつける。
しかし、コードギアスでは天下無敵の魔女に…(コードギアス内での認識で)可愛らしいそんな睨みなど通用する筈もない…
すっかり、話の中心に据えられ…今回はまったくもって逃げ道のない状態…
人間とは『萌え♪』モードに入るとどんな策略も戦略も通用しないらしい…
ルルーシュはこの時…心に誓った。
―――もう二度と…『Cの世界のきのこたち』の企画には参加しない…
と…
しかし、コードギアス内ではルルーシュの中でのイレギュラーは当たり前。
知らない間に巻き込まれるのは当たり前…
そんな事は今の状況で許す筈もない…
―――コンコン…
控室の扉がノックされた。
「どうぞ…」
誰かが答えると、ガチャリと扉が開いた。
そこに立っていたのは、ルルーシュのマネージャーだった。
「ルルーシュ…次のスケジュールです…」
そう云ってメモを渡された…
中に一つ、『日時は未定』と書かれたスケジュールがある。
その内容を見てルルーシュは顔色を変えて立ち上がり、マネージャーの胸倉をつかむ。
「お前は!俺はもうこの企画に参加するのは御免だ!他を当たれ!」
非力なルルーシュに胸倉を掴まれてもなんてことないと言った表情を見せながらマネージャーは言葉を続けた。
「なら…代わりにナナリーさんを…との、企画者からのお言葉ですが…よろしいですか?」
更にルルーシュの顔が引きつる。
「貴様…俺が絶対に嫌がる企画しか持ってこないのは何故だ!?」
声を震わせて敢えて、答えの解る質問をする。
「何を今更…需要があるからですよ…。それとも、また、ヘタレのテロリストリーダー役をやりたいのですか?」
至って冷静なマネージャーに対してさらにルルーシュの怒りの熱が上がっていく。
「こんな弄られ方ばかりするのなら…ヘタレリーダーで充分だ!」
「なら…この話はナナリーさんに回る様にしておきます…」
その一言で勝負あり…
ルルーシュがマネージャーの胸倉から手を放す。
「お前…完全に和泉綾に操られているな?」
「ここでは彼女の意思が世界の意思です。自分の住み心地のいい環境を確保するのなら、彼女を味方につけておくのは当然でしょう…」
確かにその通りなのだが…
その場にいるルルーシュ以外のメンバーたちはまたも呆然と二人のやり取りを見つめて…みんな珍しく同意見が頭を過る…
―――ルルーシュを和泉綾に売れば…おいしい思いが出来るのだな…
と…
まぁ、そんなに甘くはないのだが…間違ってはいない。
やがて…ルルーシュは可愛いナナリーをいけにえにされるのは困ると…しぶしぶOKの返事をする。
で、そのスケジュールに何が書かれていたのかと言うと…
―――『Cの世界のきのこたち…』(フルネームを出して貰えなかったメンバー+ルルーシュ編)
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