Cの世界のきのこたち…2


 ここは、『コードギアス反逆のルルーシュ』及び、『コードギアス反逆のルルーシュR2』の出演者の控室…。
本編のシナリオの中では敵同士だった者たちもここでは敵でもないし、憎み合っている訳でもない。
ここではいつも、本編の話、Sound Episodeなどの話題で盛り上がる。
今、ここに集まっているのは、ルルーシュ、スザク、ナナリー、ロロ、ミレイ、カレン、シャーリー、リヴァル、ニーナである。
本編同様、面白いものが何より好き…と云うミレイがまたまた、この場を仕切っている。
「ねぇ、あの、Cの世界のきのこの副作用でどんなものがあったら便利だと思う?」
これまた面白い質問の仕方である。
何が欲しいか…ではなく、あくまでも実用的な事に使いたいらしい…。
しかし、彼女の中の実用的とは…確かに生活や仕事の面での実用性もあるが、彼女の場合には、『煩悩』に対しての実用性も含まれるので、どんなきのこが欲しいか…と云う質問とあまり変わりがない。
最初に言葉を切り出したのは…やはりと言うべきか…リヴァルであった。
「俺は、それを食ったら、好きな『ギアス』能力が手に入るきのこがいいな…。C.C.から与えられると、その人間の特性と深層心理に合わせた能力が貰えるらしいけどさ…。でも、本人の一番欲しい能力の方が嬉しいじゃん?」
あっけらかんとリヴァルはそんな事を云うが…一同、何が欲しいかを真剣に悩み始める。
このメンバーの中で、『ギアス』をかけられたのは、ロロ以外全員だ。
ミレイやリヴァルも、シャルル皇帝の記憶を書き換える『ギアス』にかかっているし、『キュービッドの日』にロロの時を止めるギアスにかかっているためだ。
スザクはルルーシュにもロロにも『ギアス』をかけられている。
それどころか、戦闘中にもビスマルクの『ギアス』を食らっている。
ナナリーは本編以前の話で、父、シャルルから『ギアス』をかけられ、最終回にルルーシュの『ギアス』にかけられている。
しかも、彼女は、『兄を止める!』と云う、大義名分の下、父、シャルルの『ギアス』を破ったと言う、中々のツワモノだ。
シャーリーに至っては、ジェレミアの『ギアスキャンセラー』のお陰で、ルルーシュの一度しか効かない『絶対遵守の力』の『ギアス』を二度もかけられていると言う、レアキャラだ。
結局、ロロの銃弾は、『ギアス』が効かない程のダメージを負っていたと言う設定らしい。
スザクなどは、ルルーシュの『ギアス』を軍人としてはこの上ないほど便利に利用していたようにも見える。
『生きろ!』ギアスのお陰でスザクは自分の意思で死ぬどころか、死に直面した場面になると、『生きろ!』ギアスが発動して、普段から頑丈な身体が更に戦闘ポイント、防御ポイントが増えると言う…軍人としてはこの上ないほど便利なものだ。
ただ…本編のスザクは『死にたがり』キャラだったので、そのギアスとユーフェミアの事で、あり得ない程ルルーシュを憎んでいると言う設定になっていた。
ルルーシュは、最初にマオの『人の心が読める』『ギアス』で初めて『ギアス』をかけられる。
その後は、マオに勝つために自分に『ギアス』をかけて、スザクにとっ捕まった時に、父、シャルルの『ギアス』で『記憶を書き換え』られている。

 その場の全員が真剣な顔で考えている。
アッシュフォード学園の生徒会は『冗談にも全力で』取り組むと言う事になっているが、その役から離れても、彼らはこう云った話には『全力で』取り組むらしい。
何せ、このコードギアスの出演者…脚本はあるものの、基本的に地でその役になっているのだ。
ただ…ルルーシュの敵キャラクターになってしまった者たちからはかなりの不満が出ているらしいが…
ルルーシュが可愛くて仕方ないシャルルとシュナイゼルなど…ルルーシュとのツーショットのシーンがあると、一触即発の様な空気になる。(何故だ?)
「俺は…『絶対遵守』の『ギアス』は便利でいいと思うがな…。一人に一回しか使えないってのが、難点だが…」
「僕も、『時間を止める』『ギアス』…いろいろ出来て楽しいけどね…うふふふ…♪」
ルルーシュの発言は割とすんなり受け入れられるが、ロロの台詞には、少々寒気を感じる者たちもいた。
「あ…あの…ロロくん?時間を止めて…何をする気なんだい?」
リヴァルが恐る恐るロロに声をかける。
スザクなどはかなり顔を引きつらせている。
コードギアス本編でもそうだが、プライベートでもルルーシュをめぐって彼らの下らない…じゃなくて、白熱した争いが繰り広げられている。
確かにスザクは本編で、戦闘中にビスマルクの『未来を読む』『ギアス』をかけられているが…その身体能力とルルーシュの『(愛の)生きろ!』『ギアス』、そして、おまけの機体スペックによって、ビスマルクの『ギアス』を撥ね退けている。
しかし、時間を止められて、自分で動く事が出来ない場合、それは、本当にどうしようもない。
「そりゃあ…誰かの顔にいたずら書きするとか…後は…にいさ…あ…やっぱり内緒…♪」
その幼い顔から想像もつかないようなこの怪しげなロロの発言に周囲はぞっとした。
「ロロ…お前…ルルーシュに何かしたら…俺が許さないからな!」
どうやら、ロロの一言でぷっつんしてしまったスザクが『俺スザク』に戻ってしまっていた。
「あ、久しぶりの『俺スザク』さんですね…。私、スザクさんは今の『僕スザク』さんより、『俺スザク』さんの方が好きです…」
ナナリーの状況を把握できていない発言に、凍りついている周囲の空気が緩やかに氷解し始める。
一旦、この二人の花火大会の様な火花の攻防戦はここで終焉を迎えるが…これが、いつまた、再燃するかは…解らない。
本編とは打って変わって、ここではルルーシュはとにかくモテモテ…と云う事で…

 そんな火花散る花火大会が治まった時、本編では絶対にこう云った話に乗ってこないであろう人物が言葉を口にした。
「私は…ルルーシュがユーフェミア様だけに興味を持つきのこが欲しいわ…。ルルーシュったら…ユーフェミア様にあんなに愛されているのに…。ひどいわ…。なんでスザクなんかと一緒にいるのよ…」
どうやら、こっちでもニーナはスザクの存在が気に入らないらしい。
尤も、それは、スザク本人の問題と云うよりも、本編ではユーフェミアの騎士の役で、ここでは、ユーフェミアの愛するルルーシュを掻っ攫おうとしている不届き者と云う事だからだ。
「なに?こんなところでも僕、君に嫌われているわけ?」
スザクがややショックを受けたようにニーナに尋ねる。
「嫌いと云うよりも…ルルーシュに手を出さないでって言いたいの!ユーフェミア様…いつもルルーシュをスザクに取られちゃって…おかわいそうで…見ていられないわ…」
涙ぐみながらニーナがスザクに対して熱弁を振るう。
スザクが『僕にそんな事言われても…ルルーシュがユフィを異母妹としてしか見ていないのは…僕の所為じゃないし…』などと考えてしまう。
そして、ニーナはルルーシュの方へ向き直って、再び、本編では見せないような表情でルルーシュを睨んでいる。
「ルルーシュもルルーシュよ!ユーフェミア様にあんなに愛されているのに…スザクになんて引っかかっちゃって…。ユーフェミア様はそれは、それは、お嘆きなのよ?」
これまた、ルルーシュにそんな事を言われても…と云う気分になってしまうが…
「でも…本編では…ユフィはスザクとラブラブで…俺の入る隙間はなかったって言うか…」
流石のルルーシュもこのときばかりはたじたじとなってしまう。
これで、ニーナがユーフェミアに伝えて、ニーナを泣かせたなどと云う事になってしまうと、これまた、ユーフェミアがどんな意図を持っているかは知らないが、結構な説教を食らう事になるのだ。
「何言ってるの!ユーフェミア様が天パで茶髪のスザクになんて興味を持つ訳ないでしょう!ユーフェミア様は、とても理想の高い方なのよ?そんなユーフェミア様に選ばれた事を誇りに思いなさいよ!」
そう言われましても…と思ってしまうが…今のニーナの発言もいかがなものだろうか…
確かに、世が世なら、スザクの髪形はれっきとした『いじめのネタ』になるのだが…
「まぁね…その自覚はあったけど…実際にそう、はっきりくっきり言われると…ショックだよね…」
スザクがぼそっと呟く。
「でも…スザクがくせ毛じゃなくなったら、スザクじゃないぞ!俺はそれでいいと思う…」
ルルーシュがそんな風に慰めている。
この二人を取り巻く空気がやや、冷たくなっていくのだが…

 あんまりこんなやり取りが続いていると、堂々巡りになりそうなので…カレンがやれやれと言った表情で口を開いた。
「ニーナ…そこまで云うなら、あの変態メガネ(ロイド)と一緒にそう云う薬を作ればいいじゃない…。あの人…人体改造も出来るらしい(『Sound Episode 6』の『るるる 合コン ラプソディ』より)から、そう云う薬も作れるんじゃないの?ルルーシュがユーフェミアにだけ興味を持つ薬…」
なんだか、本当に無茶ぶりになっているが、頭に血が上った状態のニーナにここで延々と演説されても困ると云うもの…
「そう…その手があったのね…。カレン、ありがとう…。いつか、カレンがもっと女らしくなる薬も作ってあげるから…」
そう言いながら、ニーナは控室から出て行った。
「余計な御世話だ!」
カレンの叫び声は聞こえているのか、いないのか…
その叫びは見事にスルーされていた。
そして、一旦、控室の中はシーンと静まり返った。
「カレンさんなら、どんなきのこが欲しいですか?」
ナナリーがやんわりとその空間の静寂を破った。
いざ、自分に話が振られると、カレン自身、どう答えていいか解らなくなった。
とりあえず、思いつきで答えてみたが…
「そうねぇ…ナイトメアと会話できるようになるきのこ?だって、Sound Episode4の『ロイド・セシルのナイトメアさんいらっしゃい』を聞いた時にはさぁ…流石にねぇ…」
「あ、僕もそれ思う…。僕…ランスロットにあんな風に思われていたのか…って…」
本編だと常に対立していた二人だが、このときばかりは意見が一致したらしい…。
ランスロットと紅蓮の本心がほんの少しだけ垣間見えたドラマではあったのだが…
「それを言うなら、俺も同じだ…。蜃気楼…あんな愉快なお笑いキャラだったとは…ショックだった…」
ナイトメア乗りにしか解らない会話になっているが…
それでも、自分の知らない事には興味を持ってしまうのが、アッシュフォード学園の生徒会のメンバーである。
「でもさぁ…ランスロットって、スザク君よりも遥かに人間味が溢れていたよね…。あれだけ煩悩丸出しだと、かえって気持ちいいくらい…」
シャーリーが感心したように言っている。
そして、ミレイとリヴァル、カレンもうんうんと頷いている。
「あの…僕って…どんなキャラクターになっているんです?ここでは…」
本編から一歩離れると、ある意味、人が変わってしまうので、ルルーシュの顔を伺いながらスザクは尋ねてみる。
「なんて言うか…本編であれだけユーフェミア皇女殿下の傍にいて、一度も手を出していない訳じゃん?そうかと思えば、カレンのヌード見ても平気な顔…と云うか、『まるで興味なし!』な、反応していたしさ…」
リヴァルが…多少遠慮しているふりをしながらズバズバとツッコミを入れている。
「だから…ホモか不能?あんな、カレンのナイスバディみて、顔色一つ変えないなんてねぇ…」
「会長…それ以上私の裸の話はなしにしてくださいよ…。正直、私としてもなんとも思っちゃいませんでしたし…」
カレンがやや声を荒げてミレイに言い放つ。
二人きりのあの状態で、女の方は裸になって水浴びしていて…そこにスザクが来て、その見事な肉体を見ても、スザクは全く顔色を変えなかった事に関しては、流石にツッコミを入れたかったのだろう。

 スザクに話を振られて、とりあえず、ルルーシュ、ナナリー、ロロは静観の構えを見せる。
下手にツッコムと、絶対に自分の矛先が来るのが解っているからだ。
ロロもヴィンセントに乗っていたのだが…ここは黙っていた方が身のためだと考える。
「僕は…別に…」
本編では最終的に、ルルーシュとスザクが二人で世界を変えた…と云う事で終わっている。
そして、二人とも、世界から名前を消しているという設定だ。
ルルーシュに至っては、視聴者の判断に任せると云う形になっているので、どちらとも言えないのだが…スザクの場合、『ゼロ』として、確実に生きているので、これは二人にとっては…精神的に重い『罰』を共有した事になっている。
そこには、ルルーシュを好きな者も、スザクを好きな者も、全てが排除されており、完全に『二人の世界』になっていた。
「結局、ルルはスザクくんにとられちゃうのね…。と云うかこの二人がくっついて、何をしていても、違和感なくなってるわよね…」
シャーリーの指摘はある意味その通りだ。
Sound Episodeで二人はキスシーンまで繰り広げている。
ファンとしても、出演者としても、『公認』するしかない。
「まぁ、いいんじゃないの?ルルーシュは天然フェロモンマシンで、男でも女でもどっちでも行けそうだし…」
「そうね…女装させても、男のカッコさせても、ルルーシュだと、一切違和感ないものね…」
どちらかと云うと、スザクをおもちゃにルルーシュで遊びたい…と言った雰囲気になってきている。
そこで、不機嫌な顔をしているのがロロで、ナナリーは顔を赤くしながらも興味津々だ。
「お兄様とスザクさん、どんな事をなさるんですか?」
ナナリーのその一言にルルーシュがギョッとするが、敢えて冷静を振舞う。
「何もしないよ…。俺とスザクは友達だから…」
今となっては苦しい言い訳であるが…こんな事を言ったら、きっとスザクがものすごく怖い顔をしているに違いないと…ルルーシュは心の中で悟っている。
スザクの事は好きなのだが、流石にナナリーに知られるのは…と躊躇してしまうのだ。
「だって、ユフィ異母姉さま…おとといの夜も、泣きながら私の携帯に電話を下さいましたよ?『スザクがルルーシュのところに行ったまま帰らないんですの…。ナナリー、ルルーシュのお部屋から変な音…しない?』と…」
ナナリーの一言にルルーシュは顔を引きつらせ、スザクは『まいったな…』と云う顔を見せ、ロロは、怒りを露わにし、他のメンバーはさらに興味津々だ。
この後の会話は…ニーナから事情を聞いた、彼らのマネージャーたちによって強制終了させられる事になった…

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