ここは、『コードギアス反逆のルルーシュ』及び、『コードギアス反逆のルルーシュR2』の出演者の控室…。
本編のシナリオの中では敵同士だった者たちもここでは敵でもないし、憎み合っている訳でもない。
ここではいつも、本編の話、Sound Episodeなどの話題で盛り上がる。
今、ここに集まっているのは、ルルーシュ、スザク、ナナリー、コーネリア、シュナイゼル、シャルル、ジノ、アーニャであった。
今回の話題は…『コードギアス反逆のルルーシュR2』の『Sound Episode5』に収録された『CタケられたC.C.』に出てきた『Cの世界』のきのこについて…
実際に収録されたストーリーでは片手くらいしか種類が出てこなかった。
この中には、もっと色々とたくさんの種類のきのこがあった筈だという話題である。
「皆さんでしたら…誰にどんなきのこを食べて欲しいですか?」
ナナリーがそのCDを聞き終えた後、そんな事を聞いてきた。
すると…そのきのこに興味を持っていたのか…話が盛り上がり始める。
最初に口を開いたのは、シュナイゼルだった。
「私なら…そうだな…『一目惚れダケ』かな…。それを食べた後、初めてみた相手に一目惚れしてしまう…。もちろん、食べるのはルルーシュだが…」
シュナイゼルが我ながら名案と言った表情でこんな発言をしている。
それには、そこにいたメンバー全員が食いついてきた。
「でも…それは、食べさせた相手ではなくて、食べた後初めてみた相手に惚れると云うものなのでしょう?シュナイゼル殿下…」
スザクが素朴な疑問を投げかける。
そして、スザクに追随してきたのは…ジノだった。
「だとしたら…食べさせる前にルルーシュに目隠ししないとまずいんじゃ…。もし、飲み込んだ直後に、目の前に皇帝陛下が現れたら、ルルーシュは皇帝陛下に一目惚れしちゃうんでしょう?」
ジノの言葉にシャルルがむっとしたように口を開いた。
「ジノ…お前は、ルルーシュがわしに一目惚れをするのは不服か?」
シャルルの風格は、コードギアス内でも、ここでも健在で、なんだか、おどろおどろしいオーラがこの場を包んでいる。
「私は不服…」
アーニャがシャルルを上目遣いでにらみながらぼそっと答える。
ナナリーも何となく不満そうである。
「なら、僕を見ればいいんだよ…。多分、コードギアスの二次創作の中で一番多いジャンルでしょ?」
さらっとそのナチュラルスマイルで答える。
この場合、ファンの前でなら、黄色い声援も届くのだろうが…ここでは、一触即発の空気を生む事になる。
そして…その中で…何も言わないが、わなわなと怒りを噴出させようとしている人物がいた。
そう…ここで話の中心人物にされているルルーシュだった…
しかし、今のところ、ここのメンツはそんなルルーシュにお構いなし…と云うよりも、完全に自分の世界に入り込んでしまっている感じだ。
そんな中で、唯一、冷静な目でこの光景を見ていたコーネリアがルルーシュに声をかけた。
「お前も大変だな…。ルルーシュ…」
自分勝手な発言が飛び交う中、ルルーシュにとっては、唯一の救いのようにも見える。
ルルーシュはそんなコーネリアに安心したような溜息をつきながら、言葉を口にする。
「すみません…異母姉上…。ホント、なんでみんなして、俺をいじりたがるんでしょうか?」
ルルーシュの困ったような顔にコーネリアも苦笑を浮かべる。
「まぁ、『コードギアス』本編内の様に、完全なノイズ扱いされるよりはましだろう?皆、こうしてルルーシュを愛しているのだから…それを幸せに思えばいい…」
コーネリアの言葉にルルーシュは頷く。
こうして愛されている事は確かに嬉しい。
『コードギアス』内では、演技とは云え、ルルーシュは常に孤独の状態だ。
フィクション…物語…そうは解っていても、やはり、その役になりきっている時には、辛いものがあるし、時に切なくもなる。
そんな事を考えて俯いているルルーシュのサラサラの黒髪をコーネリアが梳いてやる。
「大丈夫だ…。あれは、フィクションで、こちらが現実だ…」
コーネリアのその言葉にジーンときている時に…このメンツが揃うとどうしてもシリアスにはいかないらしい…
「ああ…コーネリア皇女殿下…一人で抜け駆けはずるいです!」
ジノの一声でみんなが一気に注目する。
そのジノの一声にルルーシュの耳にはコーネリアの『ちっ』と云う舌打ちが聞こえてきた。
―――異母姉上…あれは…演技だったのですか?異母姉上も…他の連中同様…俺をいじり倒したい人だったんですか?
心の中でルルーシュが叫んでいる。
そして、これで、ルルーシュがコーネリアから受けていた感動は一気に吹き飛ばされたのである。
仕方なく…ルルーシュはルルーシュで、そのきのこのネタを考える事にした。
周囲で『一目惚れダケ』の話題で盛り上がっている中、ルルーシュは真剣に考えている。
そう云えば、Sound Episodeの中ではC.C.は記憶を失って『いじめてオーラ全開系メイド属萌え萌え少女』と云う事になっていた。
あの時は、C.C.を以前の高飛車女にする為に『Cタケ』を探していた訳だが…逆に、『いじめてオーラ全開系メイド属萌え萌えキャラ』を作るきのこだったらどうだろうと考えた。
スザクは…これはいろんな意味で賛否両論になりそうな気がしてきた。
本編のスザクの本質はアーニャが云っている通り、『ドM』だ。
ある意味シャレにならない部分もある…(本人に言ったら烈火のごとく怒られそうだが)
ナナリーは…そこまで考えて、ルルーシュは力いっぱい頭を振って却下した。
大切な妹をそんなオタク連中への貢物にする訳にはいかないと…
コーネリアの場合…意外と似合うかもしれないと思う。
ギャップ萌えでファンがつきそうだ。
それに、コーネリアのあのプロポーションで『いじめてオーラ』を全開されて悩殺されない男がいるだろうかと考える。
シュナイゼルは…某2丁目からお声が掛かりそうだ。
元々端正な顔をしているし、あの眼でうるうると見つめられたら…これまた、Sound Episode6の『るるる 合コン ラプソディー』で、否応なく、あの場にいる全員がズキュンとやられるだろう…。
シャルルの場合…姿さえ考えなければ、自分の手元に置いて、これでもかといじめ倒してやりたいが…
しかし、この場合、『いじめられる』事が喜びなので、これではルルーシュにとって何の意味もない…
それに、このメンバーの中で一番『萌え♪』がない。
故にルルーシュの中で却下される。
で、ジノだが…あのキャラクターで『いじめてオーラ全開系』では…お笑いの弄られ役である。
それはそれで面白そうだが、『萌え♪』はどこに行くのだろうかと考える。
元々、貴族出身のジノの事…身のこなしは一流だ。
だから、敗戦によって捕虜にされ、敵軍の将の慰み者としてはいけるかもしれないと思うが…ジノから男らしさを取ったら何が残るのだろうか…と真剣に考えてしまう。
最後にアーニャだが…
あまりシャレにならない気がしてきた。
少なくとも、幼女趣味の南と星刻には絶対に好評だろう。
メイド服は似合いそうである。
幼児体型な分、ローゼン■イデンに出てくるような、ふわふわのメイド服などは似合いそうだ。
そこに、『いじめてオーラ全開系』ともなれば、その手の趣味の人間には直球ど真ん中だろう…
ルルーシュは一通り考えをまとめたところで、その会話に入って行こうと心に決める。(というか、きちんとシミュレーションしなければこう云うイレギュラーばかりの会話についていくのは難しいらしい)
ルルーシュが一通り考えを纏めて、一度、深呼吸して、口を開いた。
「あの…」
ルルーシュの一声で、その場のメンバーたちが一斉にルルーシュの方へ視線を向ける。
本当に視線が集中して、ルルーシュはびくっと身を引きそうになる。
だが…ここで、せっかくルルーシュが完璧にまとめた『いじめてオーラ全開系メイド属萌え萌えきのこ』の話が出来なくては、ルルーシュのプライドが許さない(どんなプライド何だか)
「なんだ?ルルーシュは誰の目の前で『一目惚れダケ』を食べたいんだい?」
シュナイゼルのその一言にルルーシュの身体からがくっと力が抜ける。
―――まだその話題で盛り上がっていたのか…
しかし、ここで引いてしまっては何の意味もない。
気を取り直して再びルルーシュが完璧に考えた『いじめてオーラ全開系メイド属萌え萌えきのこ』の話を始める。
先ほど、しっかりと頭の中で整理した事を一つ一つ丁寧に説明して、全ての説明が終わると、一瞬静まり返った。
―――す…滑ったか?
ルルーシュはその静寂に不安を覚える。
しかし、次の瞬間、それは、ルルーシュの勘違いと云うか、早とちりと云う事が解る。
「凄いじゃないか…ルルーシュ…。君でも、そう云う事を考えるんだね…」
スザクが感心したようにルルーシュの云っていたきのこを想像している。
「確かに…父上の『いじめてオーラ』と云うのは…想像できんな…。『萌え♪』ともなると、もっと想像できん…」
シュナイゼルの『食いつくところはそっちか!』と誰もが突っ込みたくなる発言と共に、このルルーシュの考えたきのこについての話が始まる。
「ジノだと…ホントにお笑いになりそう…」
「あ、でも、顔立ちそのものはジノさん、とてもきれいですし…(お兄様には敵いませんけれど)頭のてっぺんをハンマーで思いっきり叩いて縮めればいいのではないですか?キャラクターはお兄様の『ギアス』で変えてしまえばノープロブレムです♪」
妹の無邪気な笑顔のこの発言にルルーシュは、少々背筋が寒くなる。
「ナナリー…それではヴァインベルグ卿が死んでしまう…。むしろ、そのままの身長でマニアに売った方が建設的だ…」
コーネリアの助言をナナリーは感心しきった表情で聞いている。
―――フィクションの中とは云え…俺はこの女性を敵に回していたのか…
ルルーシュは自分の姉妹の会話に顔を青くする。
確かに…ルルーシュの家は、どちらかと云うと女の方が押しが強い。
本編ではユーフェミアは天然でありながら、スザクを強引に引っ張って行っているキャラだった。
現実だとその相手がスザクではなくルルーシュになるのだが…本編の中のキャラと大して変わらない。
で、母、マリアンヌもこれまた豪快で…シャルルをあんな風に手のひらであしらえるのは彼女くらいのものだ。
そして、ルルーシュも、異母兄クロヴィスもそんな豪快な母に憧れているし、ジェレミア(こいつは血縁ではないが)に至っては魂までもマリアンヌに捧げ切っている。
とにかく、ルルーシュの家系は女が強い…。
そして、男の方は女に弱い…
そして、ある人物がある事に気がついて、口を開いた。
「ねぇ…『いじめてオーラ全開系メイド属萌え萌えきのこ』…ルルーシュは食べないの?」
アーニャのその一言で、再びその場が静まり返り、時間が止まったかのように静寂が支配する。
「そうか…ルルーシュがまだ食べていないな…(というか、誰も食べていない)」
「ダメです!お兄様がそんなものを食べて『萌え♪萌え♪オーラ』をまき散らしたりしたら…お兄様の純潔が…」
ナナリーが必死の形相で訴えている。
「って…ナナリー!そんな言葉、どこで覚えてきた!」
ナナリーのそんな言葉にルルーシュがいち早く反応した。
「私が教えたが…」
「あんたですか…この腹黒異母姉上…」
さっきの感動はどこへやら…と言った感じである。
コーネリアはルルーシュをこよなく愛しており、そして、ルルーシュをいじった時のルルーシュの反応が一番好きなのだ。
ある意味、ルルーシュにとってはひたすら厄介な愛情表現だ。
「僕の前でならいいけどね…」
そこにスザクがいらぬ一言を付け加えてくる。
これで、また、話の真ん中にルルーシュが来てしまう。
本当なら、ギャップ萌えのコーネリアか某2丁目からスカウトされそうなシュナイゼルに話が行くと思っていたのだが…
しっかりイレギュラーに嵌ったようだ。
「ルルーシュの『いじめてオーラ全開系メイド属萌え萌え♪』…ルルーシュ!すぐにわしの専属メイドとなれぃ!」
シャルルが大声で皇帝の様な命令を出す。
「イヤだ!」
ルルーシュは当然全力で拒否する。
そして、ルルーシュのそんなあられもない姿を想像した者たちが再び妄想モードで自分の世界に入り込んで行ってしまった…
そこへ…コーネリアとシュナイゼルのマネージャーがやってきた。
「あの…そろそろ出番なんで…皇女殿下?準備を…」
「シュナイゼル様…?」
完全妄想モードに入ってしまった二人を見て、この二人のマネージャーが真っ青になってルルーシュを問い詰める。
「ルルーシュ殿下!一体何があったのです!」
全ての事情を話している余裕もないし…かと云って、今の状態ではとても出番どころではない。
ルルーシュが泣きそうになっているが、泣きたいのはマネージャーたちの方だ。
この惨状の中…ルルーシュは本当に『絶対遵守のギアス』が欲しいと心底思ったのだった…
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