※設定:これは、ロロ(兄)とナナリー(妹)が双子でルルーシュがお兄さんと云う、これまた無茶設定です。
二人とも、お兄ちゃんが大好きで、ルルーシュも弟と妹が大好きなのですが…とりあえず、本編をあんまり考えずに読んで頂く事をお勧めいたします。
今…双子の兄妹が睨み合っている。
普段はとても仲がいい…。
特に、二人がこよなく愛する兄、ルルーシュの為に力を合わせる時には、それこそ、信じられない程の力を発揮する。
問題は…間にルルーシュが入った時、ルルーシュの取り合いともなると、まるで、犬と猿、水と油、炎と氷と言った感じで、とにかく、壮絶な争いを始めるのだ。
確かに…ルルーシュの中性的な美しさに心を奪われる者は少なくない。
男女問わず、一目見るだけでルルーシュに心どころか、魂まで奪われてしまうのだ。
そんな中には、ルルーシュに対してよからぬ感情を抱くものも決して少なくない。
弟妹の立場から言うのもなんだが…ルルーシュは見目麗しい分、とっても体力がなくて、腕力も決して強くない。
そんな『萌え♪』な兄…じゃなくて、頭がいい分、男子の平均的な体力を授けてくれなかった神を恨みもしたが、しかし、この二人は、それ故に使命感を湧き立たせるのだ…
『僕がいなくちゃ…兄さんは、悪い女に引っ掛かってしまう…』
『私がいなくては、純粋なお兄様は…野獣どもに汚されてしまう…』
そんなところで意見もあったらしく、ルルーシュに近づいてくる男女を片っ端から悪質な嫌がらせをして追い払っているのだ。
例えば、ルルーシュに近づいてくる女に対してはロロが…
『僕…実は…あなたの事が…。でも…あなたは兄さんの事が…』
と涙ながらに訴えると、たいていの場合、母性本能がくすぐられるらしく、ルルーシュにではなく、ロロの報に気持ちが移るらしい。
そんな女たちを見るたびに…
―――こんな尻軽女に兄さんを任せられない!
と、さらに使命感を燃やす。
そして、ルルーシュに近づいてくる男に関してはナナリーの出番である。
男がルルーシュに近づこうものなら…その天使の笑顔でとにかく、追い払うのだ。
ルルーシュに近づく男の気配を感じると、すぐにナナリーがルルーシュに甘えるのだ。
『お兄様…今日は咲世子さんと一緒にクッキーを焼きました…。一緒にお茶にしませんか?』
この台詞はその時々によって様々に使い分けているが…
ナナリーにそう言われるとルルーシュは決してナナリーの申し出を無碍にしたりはしない。
学園の中でもルルーシュがこの弟と妹を可愛がっている事は有名で…ナナリーに近づこうとする男に関しては、絶対守護領域を使って排除しているくらいである。
ロロとしては、さっさと、ナナリーに彼氏でも出来ればいいと思っているのだが…
さてそんな二人が睨み合っている原因であるが…
これまた、第三者から見たらとんでもなく下らない事なのであるが…今日は学校が休みなのだが…ルルーシュは生徒会のメンバーでなんだか、仕事があるらしく駆り出されて行った。
その時に持っていくはずだった、咲世子が作ったお弁当を忘れて行ったのだ。
それをどちらが届けるか…と云う事で言い争いをしている…と云う訳である。
そんなもの…二人で持っていけばいいだけの話なのだが、それはそれで、どちらがお弁当を持つか…と云う事で論争となる。
咲世子自身は、いつもの光景なので、変に暴れ出して、部屋の中のものが壊されないかいぎりは黙って見ている。
と云うか、咲世子自身、その喧嘩と云うか、言い争いと云うか…を楽しんでいるフシがある。
いつも、こんな一触即発の状態となった時には…
「あらあら…仲がよろしくて…」
と云って、止めようともしない。
しかし、いざ、部屋の中のものが破壊されそうになると、(コードギアスの中では最強キャラ設定という)その身のこなしで二人の暴走を止めるのである。
二人に傷をつけると云う事は、主を傷つけると云う事になる…
それでは困るので、咲世子もこのときばかりは細心の注意を払っている。
そして、その優秀さゆえに、二人の暴走を止める事に成功はしても、家具や食器の類に傷一つつけず、勿論、この双子に対しても無傷でその場を収めていると云うのは大したものである。
「ロロ!あなたは私のお兄様なのでしょう?だったら、妹の私に譲っても罰は当たりません!」
「ふん…僕の方が兄だと言ったところで、たった1時間の差じゃないか…。それに、そこに兄妹の情を挟んでいたら…兄さんはすぐにナナリーの方を見るじゃないか…。ナナリーは何もしなくても兄さんに可愛がってもらっているんだから…少しくらい僕に譲れ!」
「そんな事ありませんわ…。私は女の身…もう、お兄様と一緒にお風呂に入れないんですよ?ロロは一緒にお風呂に入っているんですから…私に譲りなさい!」
「話がかみ合ってないって!」
最初のうちはどちらがお弁当を持っていくかと云う話だった筈なのに…いつの間にか、相手の方がルルーシュと一緒にいる事が多くて、美味しい思いをしているから、今回は譲れと云う話になっている。
まぁ、麗しい兄妹愛…と云えば、聞こえはいいが、単純にルルーシュが自分の弟妹に対して変に構い過ぎているのが原因である。
そして、この二人の嫌がらせに決して屈する事のない強者もいる…
枢木スザクとユーフェミア=リ=ブリタニアである。
枢木スザクは幼馴染で、日本国首相の息子…。
ついでに、どういう訳か、いつも、ルルーシュはスザクと同じクラスになる。
ロロもナナリーも何か怪しんではいるが…
『単なる偶然だよ…。僕は、ルールは守るよ?』
と、その童顔な天然フェイスに誰もが騙されるが、ロロもナナリーも実は、こいつが一番腹黒だと思っている。
そして、ユーフェミア=リ=ブリタニア…ルルーシュ達とは異母姉妹である。
ブリタニアの法律では血の繋がった兄弟同士の婚姻は認められていないが、幼い頃、ルルーシュがユーフェミアに云ったらしい…
『ユフィ…大人になったら僕のお嫁さんになってね…』
そんな子供の頃の約束など…もはやご破算になる筈だし、法律がそれを許していないのだが…ユーフェミアはこう切り返す。
『あら…私が皇帝になって、法律を変えちゃいますから…。それに…日本ではウソをついたら針を千本も飲まなくてはいけないのだとスザクが云っていましたわ…』
と…。
この台詞には流石の二人も異母姉の据わった根性に…ルルーシュが絡んでいなければ感嘆の声が出てしまうのだが…
しかし、ユーフェミアは至って本気らしく…自分が皇帝になる為に実の姉、コーネリアに色々甘えて見せて功績を上げさせ、将来の準備(?)を着々と進めているのだ。
この、二人はロロにもナナリーにも強敵なのだ。
彼らの嫌がらせが一切通用しないのはこの二人だけである。
しかも、この二人、ロロとナナリーと同じように、何やら協定を結んでいるらしく、ロロとナナリーが邪魔をしようとすると、二人が応戦してくるのだ。
そして、どちらがルルーシュのお弁当を届けるかと云う言い争いのさなか…この二人が部屋に入ってきたのだ。
この二人は、後頭部で、生徒会に所属している。
学校にいる間は、ロロやナナリーよりもルルーシュの傍にいるのだ。
「あら…ロロ、ナナリー…ごきげんよう…。大きな声を出して…皇族としてはしたないですわよ?」
ユーフェミアが涼しい顔をして二人を窘める。
しかし、ロロもナナリーもユーフェミアに対する警戒は解く事をしない。
「ロロ…ナナリー…仮にも君たちの異母姉上だろ?そんなに睨まなくても…」
そう二人に声をかけたのは、もう一人の天敵枢木スザクである。
スザクに対しても二人は警戒を怠らない。
とにかく、ロロとナナリーにとってこの二人は、ロロとナナリーからルルーシュを奪おうとする彼らにとっての不埒ものであり、邪魔ものなのだ。
「だったら…スザクさんはあまり、お兄様にべたべたしないで下さい!」
「ユーフェミア異母姉上もです!」
このときばかりは二人ともいきがばっちり合っている。
これも双子のなせる技なのか…
とは言っても、二人は二卵性双生児なのだが…
年齢の違いはあるが、血のつながりの濃度はルルーシュと変わらないのだ。
それでも、二人ともルルーシュをこよなく愛している事もあり、こう云う時には息がばっちりと合うらしい。
「べたべたなんて…人聞きの悪い…。あれは僕とルルーシュのスキンシップだよ…」
「「「それが余計なんです!」」」
このときばかりはユーフェミアもスザクに対して牙をむく。
この二人、ロロとナナリーとの関係と同じで、単純に利害関係である。
利害が一致しない時にはロロとナナリーの様な言い争いを繰り広げている。
「ユフィ異母姉さまも…最近、お兄様に対して、べったりし過ぎです!今まで、お兄様は夜遊びなんてした事…なかったのに…よよよ…」
何のことかと思えば、最近、生徒会行事で必要物品を(ユーフェミアの皇室権力を使って)ユーフェミアとルルーシュが二人で買い物に出掛け、時々帰りが遅くなるのだ。
「あらぁ…あれは、ミレイ会長に頼まれて仕方なく…。ルルーシュも『女の子だけじゃ持てないだろう?』って言ってくれるんですもの…」
「「「真顔でウソつかないで下さい!」」」
このときは、スザクがロロとナナリーと同調する。
とにかく、ルルーシュのお弁当を誰が届けるか…と云う話しあいなのだが…
「そうそう…ルルーシュは今作業中で手が離せないから、僕が頼まれていたんだ…ルルーシュのお弁当を持っていくの…」
そういいながら、先ほどまでルルーシュのお弁当が置いてあったテーブルの方を見るが…
「「「「ああ…ない!一体誰が…」」」」
その場は再び大騒ぎである。
全員が、部屋の隅々まで探し始める。
このリビングから続いているキッチンから…部屋に置いてある棚の隅々まで…
「と…とにかく…最初に見つけた人がルルーシュにお弁当を持っていくかかりですわ…」
普通なら、このメンバーの誰かが提案した事など誰も受け入れる事がないのだが…今日ばかりは、受け入れざるを得ないらしい…。
「「「うん…」」」
そして、4人はルルーシュのお弁当捜索を始めるのだった…
―――ちょうどその頃の生徒会室…
咲世子が珍しく、生徒会室に訪れていた。
「失礼いたします…。ルルーシュ様…お忘れになったお弁当…お届けにあがりました…」
咲世子の姿に、そこにいる一同がやや驚いた表情を見せる。
生徒会メンバーはスザク、ユーフェミアを除いて全員で、誰がルルーシュのお弁当を持ってくるか、賭けをしていたからだ…
「ダークホースで来ましたね…」
「スザクと、ユーフェミア皇女殿下が行った筈だけど…」
ニーナとミレイが咲世子の姿に驚いている。
そこに、不敵な笑みをたたえたルルーシュが口を出す。
「俺の一人勝ちですね…」
リヴァルはそんなルルーシュを見ながら、悔しそうな顔をしている。
「どうして、咲世子さんだと思ったんだ?」
リヴァルがどうしてか解らないと言った表情でルルーシュに尋ねる。
「ロロとナナリーが部屋にいて、スザクとユフィが俺の弁当を取りに行ったんだろ?絶対に話に決着がつく訳がない…。とすると、その場の収集をつける為に咲世子さんが持ってくると思っただけさ…」
ルルーシュのその説明に、咲世子が感心したような表情を見せる。
「さすがルルーシュ様…皆様の事をよくお解りで…」
「まぁ…俺自身、あいつらを大事に思っているからな…。普段からあいつらの行動の観察はしているって事で…」
そういいながら、ルルーシュは再びパソコンのキーボードを叩いている。
「なぁんだ…ルルも無関心を装っていて、スザク君やユーフェミア皇女殿下の事もちゃんと考えているのね…」
「ルルーシュがそこまで他人に関心を持っているとは思わなかったわ…」
シャーリーとカレンが新しい発見でもしたかのように口を出した。
ルルーシュはむっとしてその二人に言葉を返す。
「別に…俺は、自分の大切な相手にはちゃんと関心を持っているさ…。人を人でなしみたいに言うな!」
そんな風にちょっと膨れているルルーシュを見ていると、男にも女にももてる理由が解る気がした。
「咲世子さん、ありがとうございました…。あと、あの4人の事…頼んでもいいですか?」
ルルーシュがそう尋ねると咲世子はにこりと笑った。
「はい…お安いご用ですので…。では、失礼いたします…」
そう云って、咲世子が生徒会室を後にした。
―――その頃…お弁当捜索隊となった4人…
部屋のあちこちを探し回って、リビングもキッチンもめちゃくちゃになっている。
しかし、この4人の捜索は続いている…。
そして…自分の城までもめちゃくちゃにされた咲世子の雷が落ちるまで…後…3分…
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