※設定:
ルルーシュは『黒の騎士団』で『ゼロ』をやっていますが、スザク、ユーフェミア、ジノ、アーニャにゼロばれして、彼らは黒の騎士団員になっちゃったと言う無茶設定。
タイトル通り、シリアス性まったくなしの、ギャグです。
今日も『黒の騎士団』のアジトでは、いろんな人物のいろんな思いが錯綜している。
サロンでは、ディートハルトの撮影した『ゼロ』の登場シーンの意見交換会(?)が『ゼロ』抜きで繰り広げられていた。
「…ったく…なんでルルーシュはあんなぴちぴちの衣装を着たがるのかなぁ…」
「確かに!あれでは、私達のルルーシュが世間の餓えた亡者どもの餌食にされてしまうのは時間の問題ですわ!」
スザクとユーフェミアの会話にジノがあっけに取られている。
ナイトオブラウンズに入ったばかりの頃は殆ど他人を寄せ付けずにただ、孤高を守っていた。
ユーフェミアは、仮にもブリタニア帝国第三皇女…。
異母兄に対する異常ともいえるような愛情を持って、『ゼロ』の正体を知った時、トウキョウ租界の政庁から飛び出して、ルルーシュの下へ来てしまったルルーシュの異母妹姫である。
今では、すっかり『黒の騎士団』とも馴染んで、その顔に似合わないナイトメアの操縦技術で『ゼロ』であるルルーシュの為に貢献している。
「まぁ…確かに…ルルーシュ殿下の場合、顔を隠されても妙な色気がありますからね…。仮面を取ったら恐らく、夜道を一人で歩いたら襲われる可能性が大ですよね…」
いつの間にかスザクにくっついて『黒の騎士団』に入ってきてしまったナイトオブスリーがそう云うと、これまた、スザクについてきてそのメンバーとなったナイトオブシックスが口を出す。
「私は…素顔のルルーシュがいい…。もし、ルルーシュ、襲われそうになったら…アーニャが守る…」
ここにいるメンバーの顔触れを見ると、普通ならあり得ないメンツなのだが…
それでも、『ゼロ』であるルルーシュにほれ込んでブリタニア帝国を裏切ってきてしまった者たちである。
「アーニャ…それは僕の仕事…。この中で一番腕が立つのは僕なんだから…」
スザクが、絶対にこのポジションだけは渡さないぞと云う口調でそう云っている。
「まぁ…ルルーシュを守るのは私ですわ…。私の大切な異母兄上ですもの…。それに、ルルーシュは私の将来の旦那様ですもの…」
ユーフェミアがスザクに遠慮しなさいと言わんばかりにそう云っている。
「おいおい…スザク…お前はユーフェミア皇女殿下の騎士じゃないか…。だったら私が…」
ジノがそう云いかけるとアーニャが割り込んでくる。
「ジノ…アーニャが先にルルーシュ守るって言った。だから、それはアーニャがやる…」
いつまでも終わらない堂々巡りの会話が続けられている中、ディートハルトがサロンに入ってきた。
「これはこれは…みなさん…お揃いで…」
ディートハルトもすっかりこのメンツのいる『黒の騎士団』に慣れてしまって、普通に入って来る。
仮にも、そこにいるメンバーはブリタニア帝国の皇女に、帝国最強騎士のないとオブランズである。
「まぁ…ディートハルト…もっと、ルルーシュの素敵な映像はありませんの?」
ユーフェミアが煩悩丸出しでディートハルトに尋ねている。
「ああ…過去のものもすべて見終えてしまったのですよね…ユーフェミア皇女殿下は…」
ディートハルトが顔色を変えずに…それどころか楽しそうにユーフェミアに話しかけている。
「ええ…きちんと普段、私が鑑賞する用のものと、永久保存版用と…それから、ところどころ、画像としてプリントアウトしてアルバムまで作ってしまいましたわ…ほら…」
そう云って、ユーフェミアのコレクションアルバムを広げて見せる。
ディートハルトだけでなく、そこにいるメンバー全員がその広げられたアルバムを見て、
「「「「おお…」」」」
と、感嘆の声を上げる。
「ユーフェミア様、これを出版しませんか?『黒の騎士団』も活動範囲も広がり、メンバーも増えて、なかなか金銭的に苦しいのですよ…。これなら1冊3000ブリポンで売っても十分に売れますよ…」
「え?ディートハルト…これを売るのか?それこそ、『ゼロ』の身に危険が及ぶんじゃないのか?それこそ、男女問わず…」
ジノが慌ててディートハルトに尋ねる。
しかし、ディートハルトは涼しい顔をしてさらに話を続ける。
「『ゼロ』は常に枢木卿やユーフェミア皇女殿下がそれこそ、命をかけて守って下さるのでしょう?」
ディートハルトの言葉に二人は同時に頷いて答えた。
「当たり前だ!」
「当たり前です!」
普段、この二人はなかなか素晴らしい主従関係を築いているのだが…間にルルーシュが入ると、主も従者も関係なくなる。
同時に答えた時、二人が顔を見合わせて、
―――そのポジションは渡してなるものか!
と言った火花を散らしている。
ディートハルトは、『ゼロ』の起こす奇跡も自分の興味をくすぐるのだが…ここにいるメンバーのルルーシュ争奪戦にも興味を持っており、どうやって、火に油を注ぐか考えるようになっていた。
そんなところに…もう一人のルルーシュ争奪戦参戦者が入って来る。
「あの…スザク…?」
紅月カレン…『黒の騎士団』発足時からのメンバーで…ここにいる4人にとっては、『先を越された』感の拭えない相手である。
そこにいる元ブリタニア軍関係者たちを見て、今となっては普通に話すようになったカレンがにこやかに話している。
カレン自身も、一応、彼らより『ゼロ』に近い存在だと云う雰囲気を隠そうとしていない。
実際、彼らが何を目的にわざわざ『黒の騎士団』に入ってきたかを知っていたからだ。
「ラクシャータさんが呼んでた…。ランスロットの事で話があるって…」
「チャウラー博士も、ロイドさんとあんまり変わらないなぁ…」
スザクがぼそっと呟くと、カレンが顔を引きつらせてスザクに一応忠告する。
「あんた…ラクシャータさんの前でそんなこと言ったら、絞め殺されるわよ?」
「解ってるけど…やってる事はそっくりだけどね…。ナイトメアオタクなところとか、ロイドさんに恐ろしい程の敵対心持ってるところとか…」
スザクがやれやれと言った顔で立ち上がると、サロンを出て行こうとする。
その時、一応、ディートハルトに自分の意見を言っておく。
「ディートハルト、あんまりルルーシュを晒しものにするような事はするなよ?あと、写真集は絶対反対だから!ルルーシュの可愛いところは僕だけが知っていればいいんだから…」
意識的なのか、無意識なのか…スザクがそんな事を云うと、このサロンにいるメンバーのルルーシュ愛が変な方向へデッドヒートする。
「スザク!あなた…私の騎士のくせに、ルルーシュにいらない事をしているんじゃないでしょうね!」
ユーフェミアが血相を変えてスザクに怒鳴りつけている。
スザクもよせばいいのにここでしれっととんでもない事を云うから困ったものである。
「ユーフェミア皇女殿下?『黒の騎士団』では、僕はあなたの騎士じゃありませんから…いずれ、カレンから『ゼロ』の親衛隊隊長の座を頂く予定ですし…」
その一言にカレンもムッと反応する。
「スザク!あんたなんかに『ゼロ』の親衛隊隊長の座を渡す訳にはいかないのよ!あんたはブリタニアの皇女様の騎士でしょ?ルルーシュは渡す気はないわよ?」
「ふん…カレン、君の強さは認めるけれどね…僕は君の知らないルルーシュを知っている…。残念だけど…時間の問題かな…」
スザクがふっと笑って見せながらサロンを出て行った。
そんなスザクを見送りながら、わなわなと怒りと嫉妬心をあふれさせているメンバーが4人…そして、そんな様子を興味深げに観察している『ゼロ』マニアが1人…
「ディートハルト!あなたは『ゼロ』のストーカーをされているのでしょう?なら…教えて下さい!どうしたら『ゼロ』の親衛隊隊長になれるのです!」
「まずは…親衛隊に入って、隊長を消す…これが一番早い…」
さらっと恐ろしい事を云うアーニャの言葉にその場の空気が凍りつく。
「ア…アーニャ…そんなことしたら…ルルーシュの身が…」
ジノがやや遠慮がちにアーニャにそう云うのだが…
「別に…私が、ルルーシュを守る…。それで…問題ない…」
アーニャのその言葉にその場の人間は珍しく気があったらしく、同じ事を考えた。
―――こいつ…本気で殺る…
当のアーニャはと云えば、結構涼しい顔をして、携帯をいじっている。
その携帯のメモリーにはルルーシュの素顔の写真と『ゼロ』の写真ばかりが記録されている。
しかし、全員すぐにはっと我に返る。
「ねぇ…あんたたちって…仮にも、ブリタニア人でしょ?いいの?こんな事をしていて…」
カレンが呆れたようにそこにいるメンバーに尋ねる。
カレン自身、このメンツがここに来る前は『ゼロ』の信頼を一身に集めていると云う自覚があったから、少なくとも、面白くないと思う気持ちがない訳ではなかった。
「別に…ルルーシュは私の異母兄上ですし、ルルーシュは昔、私にお約束して下さいましたのよ?『ユフィをお嫁さんにしてあげる』と…」
カレンは今時、そんな子供の頃の異母兄との約束を本気で信じる奴がいるのかとユーフェミアを見るが…本人の目は至って本気であり…
「だから…カレンさんは遠慮してくださいね?でないと…私、本気で怒りますからね?」
にこやかな笑顔を見せてはいるのだが…背筋に悪寒の走るようなその笑顔にぞっとする。
「あんた…ホントに、ブリタニアの皇女様なの?」
「ええ…私は神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア=リ=ブリタニアですわ…。と云うか、もう元ですわね…。今はただのユフィですわ…」
仮にも皇族が…大好きだとは云え、祖国をあっさり裏切ってブリタニアの反体制組織に入ってくるとは…と…カレンの中では結構複雑な感じを覚えた。
それに、スザクも、ジノも、アーニャも、帝国最強の騎士…ナイトオブラウンズのメンバーだ。
仮にも、皇帝直属の騎士がこうもあっさりと…
これは、ルルーシュの人望の厚さなのか、ブリタニア皇帝の人望のなさなのか…
カレンの中で悩んでしまう。
ちょうどその頃…執務室で作戦を考えていたルルーシュは…
「はっくしゅ…はっくしゅ…」
さっきからくしゃみが止まらない。
時折、背筋がぞぞっとするような寒気も感じる。
「おい、ルルーシュ…風邪か?」
傍にいたC.C.がルルーシュに尋ねている。
その様子は特に心配している様子もなく…単に、ルルーシュの繰り返されるくしゃみが気になっただけのようだが…
「俺の自己管理は完ぺきだ!そう簡単に風邪などひいてたまるか!」
ルルーシュはくしゃみを繰り返す自分に何かおかしいと思いながらも、完璧に自己管理をしているという自負を覆す事が出来ない。
「そうか?」
C.C.がそういいながらルルーシュの額に触れてくる。
「まぁ…確かに熱はないな…。しかし、さっきからくしゃみは繰り返すし、時々妙な震えが来ているじゃないか…。今、お前が倒れたら、ブリタニアから入ってきたあの4人を纏められる奴などいないぞ?」
確かに…C.C.の云う通りである。
今は、サロンで大人しくしている筈なのだが…
「まぁ、腕が立つのは確かだ…。ユフィだって、あのコーネリアの妹だからな…。ラクシャータが新型のテストがスムーズに行くって喜んでいたからな…」
確かに…あの4人が『黒の騎士団』に入ってきて『黒の騎士団』の活動は以前より遥かにスムーズに行くようになった。
スザクは元々枢木ゲンブの息子で…藤堂とも懇意の中である。
それに、藤堂とスザクにコンビプレイをさせると驚くほどの所為かを上げている。
流石に師匠と弟子…と言ったところか…
ジノもアーニャもナイトオブラウンズだっただけの事はあり、前線に出せばイレギュラーな成果を上げる事も多い。
それに、彼らの身体能力のお陰でラクシャータの機嫌がすこぶるいいのだ。
彼女は研究者なので、ナイトメアの開発がスムーズにいかないと機嫌が悪くなる。
しかし、今ではテストパイロットがカレンだけでなく、スザク達も入った事によって、ラクシャータも機嫌を悪くしている暇がなくなり、また、優秀なテストパイロットなのでいつも楽しそうである。
しかし…
「あいつらが入ってきてから、くしゃみが増えたのは気の所為か?」
ルルーシュの知らないところで様々な火花が飛び交っているのだが…
それに気づかないルルーシュを見てC.C.がやれやれ…と言った表情をする。
「多分…気の所為じゃないと思うぞ…。鈍感も大概にしておかないとブリタニア軍以外に危険な連中が溢れてくるぞ…」
C.C.の言葉にルルーシュは何のことだと云う顔を見せるが…C.C.は、そんなルルーシュにはぁ…とため息をつくしか出来なかった。
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