※設定:
ルルーシュは普通の高校生で、スザクと同級生です。
シュナイゼルは異母兄なのですが、愛する異母弟、ルルーシュが心配でルルーシュの暮らしている(ルルコンの父親が借りている)マンションにおさんどんに来ています。
シュナイゼルもスザクも…かなり壊れています。
タイトルはシリアスっぽいですが、かなりふざけた内容です。
今日もシュナイゼルは愛する異母弟、ルルーシュの為に朝ごはんと、ルルーシュの持っていくお弁当を作っている。
ルルーシュが朝、弱い事をよく知っているシュナイゼルは朝食もそれなりに気を使っていて…。
本当は、シュナイゼルは会社を立ち上げて、業績を伸ばしている敏腕社長なのだが…ルルーシュの事となると、他の事は目に入らなくなるのが、シュナイゼルの秘書たちの常に持つ悩みである。
最近では、そのシュナイゼルの秘書たちもルルーシュを使えば彼らの社長が言う事を聞く事を知って、利用する事もあるのだが…その事がシュナイゼルにばれるとこっぴどく怒られてしまう事もしばしばで…。
朝ごはんの準備が出来る頃になると…ルルーシュが目を覚まして起きてくる。
「よし!これで今日も朝の準備は出来た!」
満足そうにシュナイゼルがテーブルを眺める。
そして、そのタイミングでルルーシュがダイニングに入って来る。
「おはようございます…異母兄上…」
「おはよう…ルルーシュ…。朝食の準備が出来ている…顔を洗っておいで…」
まるでお母さんである。
本当は、シュナイゼルも端正な顔立ちで、普通に女性にもてるのだが…
『ルルーシュ以上の女性が現れなければ交際もしないし、増して結婚などもってのほか!』
と公言して憚らない。
ルルーシュ自身は、そんなのすぐに見つかるだろうと思っているのだが…シュナイゼルの周囲の人々は…
『シュナイゼル様は…ルルーシュ様が第一で…。シュナイゼル様の中のルルーシュ様が消えない限り、絶対に女性と交際するなどあり得ない…』
と思っている。
確かに、シュナイゼルのルルーシュへの溺愛ぶりは異常だ。
とにかく、ルルーシュの為なら会社の重要会議もすっぽかすと云う勢いなのだ。
これではシュナイゼルの秘書たちも気の毒である。
ルルーシュも見かねると、シュナイゼルには…
『お願いですから…異母兄上の秘書たちを泣かすような事をするなら、このマンションを出て行ってください!』
と強く言う事もある。
いつもは、他人に対して口出しも手出しもしないルルーシュなのだが…シュナイゼルの秘書たちの苦悩を見ていると、流石に放っておけなくなるのだ。
そして、シュナイゼルの秘書たちの中では意見がふたつに分かれている事がある。
それは…ルルーシュが恋人を作るべきか、否か…
この意見に関しては意見が真っ二つに割れる。
ルルーシュが恋人を作って、シュナイゼルに構わないようになれば、そのうちシュナイゼルもルルーシュ離れが出来るのではないかと考える者と、ルルーシュが恋人を作ったりしたら、魂が抜けてしまって、シュナイゼルが動けなくなるかも知れない、もしくはルルーシュとその恋人を邪魔する為に会社をそっちのけで邪魔にかかるかも知れないと考える者だ。
確かに、ルルーシュが恋人を作ってしまえば、ルルーシュの方がシュナイゼルから離れるのだろうが、そうなると、ルルーシュを渇望するシュナイゼルがどうなるか解らないというリスクもある。
一番いいのは…とっととシュナイゼルがルルーシュ離れしてくれる事だと思うのだが…今のこの状況を見ていると…絶対に不可能であると断言できる。
シュナイゼルが飲み会などで少々酔っぱらうと、こんな事を云い始める。
『ルルーシュの為の会社!ルルーシュの為に私は社長になったのだ!ルルーシュには一生金に不自由はさせないし、就職したいと云うのであれば、私の会社で重役待遇で迎えよう!ルルーシュのいない生活など…私には耐えられない!』
などと云って、一緒に飲みに行っていた取引先の社長を驚かせていたくらいだ。
酔っぱらった勢いかと思えば…本人はいたって大真面目らしく、ある時、秘書が書類整理をしていた時にこんな書類を見つけてしまった。
『ルルーシュの卒業後、就職マニュアル(極秘)』
その中には…ルルーシュが大学卒業後、ここへ重役待遇で就職して、第一線で活躍して、いずれ、この会社の副社長になって…などと…半ば、シュナイゼルの妄想小説の様な計画書が書かれていた。
確かに…ルルーシュは頭がよくて、今通っている高校でも成績がトップだし、全国模試をやっても、全国で片手に入るくらい頭がいい。
そして、何事もてきぱきと要領よくこなして、確かに有能である。
しかし、本人にその気がなければこんな計画書…ただの妄想小説である。
ただ…それを見た秘書のカノンは…
『あの異母弟が入ってきたら…私の立場が危うくなるわ…』
と危機感を募らせている。
しかし、当のルルーシュは今のところそんな気もないらしく、シュナイゼルが時々ルルーシュを自分の会社へ入らないかと誘っているが、あっさり振られていた。
話はそれたが…朝食が終わって、ルルーシュが学校へ行く身支度が整う頃…マンションのチャイムが鳴らされた。
ルルーシュの幼馴染、枢木スザクがルルーシュを迎えに来たのだ。
シュナイゼルはこのスザクが気に入らなかった。
一番の理由は…ルルーシュがスザクと仲良くしている事や、時々密着している姿を見ると頭が噴火しそうな程怒りを覚える…。(と云うか…単なるジェラシー)
しかし、シュナイゼルも大人の余裕を見せようと必死に笑顔を取り繕ってスザクと接しているのだが…スザクはスザクでシュナイゼルのそんな気持ちを察している。
そして、いつもシュナイゼルの前でルルーシュに抱きついてみたり、ぎゅっと手を握ったりして、シュナイゼルを逆なでするのだ。
その時、シュナイゼルは必死に大人の笑顔を見せているのだが…内心では…
『こんのクソガキャ…』
と思っていたりする訳で…。
でも、ルルーシュにカッコ悪いところは見せられないので…必死にひきつった笑顔を保っていると云う訳だ。
「おはよう…スザク…いつも悪いな…」
玄関を開けて、そこに立っているスザクにルルーシュが声をかける。
シュナイゼルは玄関まで見送っている。
「おはよう…ルルーシュ…。あとで、昨日の宿題のノート…見せてくれる?」
満面の笑顔でスザクがルルーシュに頼んでいる。
この仲睦まじい二人の姿に、シュナイゼルの拳はプルプルと震えているのだが…
「お前…またやっていないのか?」
「一応やったんだけど…解らないところがあってさ…。教えてよ…」
その言葉を言い終える時にスザクはちらりとシュナイゼルを見てにやりと笑う。
『へへぇん…いいだろう!僕たちの邪魔は出来ないよね?』
と云う笑顔だ。
スザクの背中には真っ黒な翼…腰からは真っ黒な悪魔の尻尾が見えるようだ。
「ルルーシュ…帰りが遅くなるようならちゃんと電話するんだよ?」
ひきつって崩れそうな笑顔で、愛する異母弟に声をかける。
「異母兄上…今日はお仕事でしょう?カノンさんが今日のスケジュール…俺の携帯に送ってよこしていますから…。絶対に俺の方が帰り、早いですよ…」
「でも…それでも心配だから…。ルルーシュは大切な異母弟だからね…」
そう云って、極上の異母兄スマイルを作る。
そのシュナイゼルの言葉にルルーシュも嬉しそうに
「ありがとうございます…異母兄上…。解りました。帰る時にはメールを入れます…」
そのルルーシュの笑顔にシュナイゼルとスザクが正反対の表情を見せる。
そんな二人のやり取りを、知ってか知らずか…ルルーシュは相変わらず無邪気な笑顔を振りまいている。
登校中…スザクはルルーシュに尋ねる。
「ねぇ、ルルーシュ…。君って…天然?」
「はぁ?どういう意味だ?」
スザクの質問の意図が解らず、ルルーシュが聞き返す。
そんなルルーシュを見てスザクがため息をついた。
「ああ…解った…。君は天然だ…」
半ばあきらめの境地に近いような言葉が口をつく。
しかし、ルルーシュから見れば、スザクの方がはるかに天然だ。
「なんだよ…。スザク、お前、学校でなんて言われているのか知っているのか?」
ルルーシュがスザクの言葉にムッとなって半ば怒鳴るようにスザクに尋ねる。
「うん…知っているよ…。『天然タラシ』…だろ?」
スザクのその答えにルルーシュがぴきっと顔を引きつらせる。
「お…お前…計算ずくでやっていたのか…これまで…女の子にお弁当貰って、差し入れ貰って、誕生日プレゼント貰って…。告白されても、『天然』な態度で振っておいて…。それでも、お前は『天然』と云うレッテルに隠れているから、とりあえず敵を作らずに済んでいて…」
まるで…ルルーシュがヤキモチを焼いているように見えて、スザクは思わず嬉しくなってしまうのだが…
でも、ルルーシュは、スザクのその計算しつくした行動に抗議しているのだろうと思う。
ルルーシュは、そう云う事に関しては真面目なのだ。
「まぁまぁ…。いいじゃない…。みんな、楽しそうだし…」
スザクのあっけらかんとした態度にルルーシュはあいた口がふさがらなくなってしまう。
それでも…多分、それはスザクの長所で…
ルルーシュにはまねが出来ない。
スザクのその明るさがちょっとでも自分にもあれば…なんて思ってしまう。
ルルーシュの目にはシュナイゼルも、スザクも眩しく見えているのだ。
若いながら、自社ビルを持つほどの会社を立ち上げ、今もなお、成長させ続けている異母兄…シュナイゼル…。
その明るさで、みんなから慕われて…そして、いざとなると頼りがいのある幼馴染のスザク…
それに比べると…自分は…
眩しい二人を見ていると、ルルーシュは何だか落ち込んでしまう。
「スザクは…凄いよな…。運動も出来て、みんなからも好かれて…。異母兄上だって、あの年であんなに大きな会社の社長だ…。類は友を呼ぶってコトワザ…多分、間違いだよな…」
ちょっと沈んだ声でルルーシュが呟いた。
そんなルルーシュを見て、スザクはちょっと焦ってしまう。
ルルーシュはどうも、自分を卑下する傾向にあるらしい。
大体、全国模試でトップ5に入るような成績で何を言っている…と云いたくなる奴が山ほどいる筈だ。
「ルルーシュだって凄いじゃん…。いつも、成績は学年トップ!全国模試だって、トップ5で名前が載ってるじゃん…。僕にはそんな事…絶対に無理だし…」
スザクが心底そう云う風に思っているのだろうと…ルルーシュは思うのだが…
でも出てくる言葉は…
「優しいな…スザクは…」
どうやら、ルルーシュは本当に自分の凄さを解ってはいないらしい…。
そんなルルーシュの肩に手を伸ばそうとした時…背後から…
「枢木スザク!貴様!私の可愛いルルーシュをいじめるな!」
ものすごい勢いで怒っているシュナイゼルだった…。
いつからついてきたのかは知らないが…
落ち込んでいるルルーシュを見て、どうやらスザクがいじめていると誤解したらしい。
「枢木スザク!私の可愛いルルーシュから離れろ!」
そう云いながらシュナイゼルが突進してくる。
流石のスザクもこれには驚いて、ルルーシュを肩に担いで全速力で走って逃げる。
「ス…スザク?」
肩に担がれているルルーシュが驚いた声を出す。
後ろからは物凄い形相でシュナイゼルが追いかけてきてるのだ。
「ごめん…ルルーシュ…。今、シュナイゼルさんに捕まったら、君、今日学校へ行けなくなっちゃうよ…」
確かに、あの形相で追いかけてくるシュナイゼル…ルルーシュを捕まえたらそのまま会社に連行しかねない…。
ただ…捕まらなくても、あとで、ルルーシュはシュナイゼルの秘書たちに泣きつかれる事だろう。
『ルルーシュ様!何故、社長を会社によこして下さらなかったんですか!』
と、滝のような涙を流して…。
スザクの肩に担がれて…シュナイゼルに追いかけられて…
大変な朝ではあるのだが…
でも…どこか…なんとなく…
楽しい…
嬉しい…
ルルーシュはそんな風に思えた。
普段、殆ど運動しないシュナイゼル…スザクが学校の正門に着く頃には姿が見えなくなっていた。
「異母兄上…」
ルルーシュはふっと呟いた。
スザクがルルーシュを肩からおろして…
「そこで、シュナイゼルさんを呼ぶかなぁ…」
ちょっと口を尖らせたスザクがぼそっと呟いた。
「あ…否…あの…ありがとう…スザク…」
ルルーシュがそう云うと、スザクは嬉しそうに笑った。
その頃…シュナイゼルは…
全力でルルーシュとスザクを追いかけている最中に、通勤中のカノンに捕まり…そのまま会社に連行されましたとさ…
「ル…ルルーシュゥゥゥ…(涙)」
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