コードギアス版『白雪姫』(後編)


キャスト:
白雪姫:ルルーシュ
王様(白雪姫のお父様):シャルル
お后様(白雪姫のお母様):マリアンヌ
2番目のお后様(リンゴ売りの魔女):ユーフェミア
魔法の鏡(声と性格):コーネリア
狩人:玉城
7人の小人:ジノ、アーニャ、カレン、ロロ、ナナリー、シャーリー、シュナイゼル
王子さま:スザク

作・演出:
和泉綾(←!)

 ルルーシュが森で出会った、7人の不思議な連中との暮らしに馴染んでいた頃…お城では大騒ぎです。
ルルコンである王様は取り乱し、ルルーシュをこよなく愛している継母であるお后様は黒オーラを出しまくり…
ルルーシュを森の入口まで連れて行った狩人玉城に八つ当たりの毎日となっていました。
そして、お后様はある事を思い出します。
この国の王様には『ギアス』という不思議な能力がある事を…
そこで、お后様はルルーシュの居場所を見つけ出すべく、礼の魔法の鏡の前に座りました。
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界でいっちばぁん綺麗なのは、だぁれ?」
いつものようにこの言葉を口にします。
すると、魔法の鏡は、今度は遠慮する事もなく、
「私の主観になってしまうがな…ルルーシュが一番綺麗だと思うぞ…ユフィ…」
「そう…でしたら、その世界で一番綺麗なルルーシュはどこにいるか、教えてくださいな…お姉さま…」
相変わらず黒オーラを隠そうとしないお后様は鏡の前で怖いだけの笑顔で尋ねます。
「……え…えっと…森の奥の、7人で共同生活を送っている連中がいるが、そこで厄介になっているらしいぞ…」
やや、声を引きつらせながら、鏡は答えました。
「そうでしたか…。なら、お姉さま…またお留守番をお願いしますね」
一応ニッコリ笑っているが、雰囲気から見て、どう見ても『お願い』ではなく、『命令』であるその一言に魔法の鏡は恐れをなし、答えはたった一つでした。
「イ…イエス、ユア・ハイネス…」
そして、お后様は王様の元へ行きました。
「あなた!ルルーシュを連れ戻す為に力を貸して下さいな!」
これまた、『お願い』と言う形の言葉を取っているが、どう見ても『有無を言わせないぞ!』オーラを醸し出しています。
「な…なんだ…藪から棒に…」
「はい…ルルーシュに言う事を聞かせる為の『ギアスリンゴ』をひとつ下さい…。それを食べさせて、ルルーシュを連れ戻すのです!」
「ほぅ…『ギアスリンゴ』を使うとな…。よし、すぐに用意するから、お前はルルーシュを迎えに行く準備を整えていなさい!」
王様もルルーシュを取り戻せるとして、偉く張り切りだしました。
『ギアスリンゴ』…それはこの国に伝わる不思議なリンゴで王様だけが作れるという魔法のリンゴです。
一口食べるだけで、たった一つだけ食べさせた者の云う事を何でも聞いてしまうという不思議なリンゴがあるのです。
しかし、このリンゴ…かなり劇薬の様なもので、取り扱いを間違えると大変な事になってしまいます。

 黄昏の間から出てきた王様の姿にお后様はとても嬉しそうな顔をします。
「さぁ、これをルルーシュに一口だけ食べさせるのだ…良いか…取り扱いを間違えると…」
そこまで王様が言いかけるとお后様はそのリンゴをひったくって、その場からは知って出て行ってしまいました…
「お…おい…食べさせ過ぎると…大変な事に…」
王様の注意も聞かず、お后様はリンゴ売りのおばあさんの恰好をして、森の奥へと入って行きました。
そして、ルルーシュのいるおうちを見つけると、優しく玄関をノックします。
さっき、魔法の鏡で場所を確かめているので、絶対にここにルルーシュはいます。
「はい…」
玄関から出てきたルルーシュはそこの住人達の為に家事を一生懸命やっていました。
そして、その格好はお城出来ているドレスではなく、働きやすいように、メイドさんの恰好です。
―――まぁ…ルルーシュってば…メイドさん姿も…萌え♪
お后様はそんな事を思いながら、一通りシミュレーションした計画を実行します。
「お嬢さん…申し訳ないけれど…お手洗いを貸しては頂けませんか?ちょっと、かなり急を要するんですけれど…」
「あ…ああ…。この通路を奥へ行って右側の扉がそうだ…」
ルルーシュはそのおばあさんがお后様だと気付いていないようです。
お后様は『よし!』と心の中でガッツポーズを作りながら家の奥へと入っていきます。
そして、トイレに行くふりをして、中に入っていく事に成功したお后様は暫くしてから個室から出てきます。
そうして、トイレの前に置いておいた荷物の中からリンゴを一つ、取り出しました。
―――これを食べさせれば…ルルーシュは私の云いなり…。お城に帰ったら、ルルーシュにはまた、ああ云うメイドさんの服を着て貰って、それから、一緒にお茶をして…それから…
と、次々に妄想が膨らみます。
そして、ルルーシュの前まで来ると、しおらしくお礼を言い始めます。
「お嬢さん…とても助かりました…。今の私にはこれしかお礼が出来ないのですけれど・・よろしかったら召し上がって下さい…」
そう云いながら、持っていたリンゴを差し出しました。
ルルーシュは何となく訝しげにそのリンゴを見つめています。
「いや…知らない人から貰ったものを食べるのは危険だ…。礼など気にする事はない…」
ルルーシュのその返事にお后様は『がぁぁぁん』と言った表情を浮かべます。
しかしここで引く訳には行きません。
この際なりふり構っていられなくなり、動きにくいおばあさんのふりをする為の被り物を全て取り払って、ルルーシュに飛びかかります。
「え?義母さま???何故…」
「さぁ、ルルーシュ!四の五の言っていないでこのリンゴを食べるのです!」
「い…嫌です…放してください!」
そう云っているルルーシュを無理矢理抑えつけて、リンゴを食べさせます。
王様の注意をちゃんと聞いていなかったお后様はそのリンゴがすっかりなくなるまでルルーシュに食べさせてしまいました。
すると…ルルーシュはすやすやと眠っているではありませんか…
声をかけても、体をゆすっても起きる気配がありません。

 そこへ、仕事から帰ってきた、ここの家の住人達が訪れました。
「ちょっと…あんた誰?」
お后様に向って、カレンが云います。
しかし、何をしても目を覚まさないルルーシュの姿に血相を変えているお后様はそれどころではありません。
「ど…どうしましょう…ルルーシュが…ルルーシュが…」
そこへ…やっとユーフェミアに追いついた王様が息を切らせて立っていました。
「お…遅かった…」
すやすや眠っているルルーシュを見て王様がすっかり力を落としてしまいます。
ルルーシュとお后様の周囲にはこの家の住人である7人が取り囲んでいます。
「ひょっとして…あなたはルルーシュがどうしてこうなったのかご存知なのですか?」
ルルーシュにすっかり一目惚れしてしまったシュナイゼルが王様を睨んでいます。
他のメンバーたちもじぃ〜っと王様の方を伺っています。
このままでは収拾がつかないと、王様が『ギアスリンゴ』の事を話し始めました。
そして、一通りの話を聞くと…ジノが王様に尋ねました。
「どうしたら、ルルーシュは目覚めるんだ?死んでいる訳じゃないんだから、目覚めさせる方法あるんだろう?」
「何か…難しいものでも必要なのですか?」
「事と次第によっては…僕のギアスであなた方二人をシメてもいいんですよ?」
「ルルぅ…」
「ルルーシュのご飯おいしいもんね…確かに、このまま眠っていて貰っちゃ困るわ…」
「もし…ルルーシュが目覚めなかったら…コロス…」
アーニャが物騒なオーラを放ち始めています。
この重々しい空気の中…王様は言いにくい解決策を話し始めました…。
「非常に…危険と言うか…なんと云うか…」
もごもごとはっきりしてくれない王様に7人は痺れを切らし始めています。
「さっさと話しなさいよ!あんた、ルルーシュの事溺愛しているんでしょ!このまま目覚めなくてもいいの!?」
カレンが王様に向って怒鳴りつけています。
普通なら反逆罪に、不敬罪…普通に極刑を食らうような犯罪です。
しかし、今はそんな事は言っていられません。
こんな眠り姫のようになってしまったルルーシュに早く目を覚まして欲しいのはみんな同じなのですから…。
ここにいるメンバーは全員、よほど難しい事なのだろうかと覚悟しました。
そして、全員、口には出していませんが、どんなに難しい方法でも絶対にルルーシュを目覚めさせると覚悟を決めていました。
「ルルーシュを…目覚めさせるには…」
「「「「「「「「目覚めさせるには…」」」」」」」」
全員、固唾をのんで、耳をすませています。
「その…あの…」
傍らで眠り続けているルルーシュを横目に7人とお后様は王様の方をじっと見ています。
そんな雰囲気に恐れを感じているのか、王様は何となく震えているようです。
「実は!」
そう云いかけた時、家の中に誰かが入ってきました。

 それは、この国のお隣の国の王子さまでした。
その王子さまの名前はスザク…。
誠実で、優しくて、正義感が強くてとても、民衆からの信頼も厚い王子さまです。
ただ…ちょっと空気が読めないところがありましたけれど…。
「やはり、お隣の国の王様ではありませんか…それに…お后様も…」
「「ス…スザク王子…」」
説明途中でいらぬ邪魔が入り、7人のイライラは頂点に達しようとしてます。
そして、傍らで眠っているルルーシュを見つけます。
「あ…ルルーシュ…。どうしてこんなところで眠っているの?」
スザクがルルーシュを抱き起こします。
その二人の姿は…とてもお似合いで…しかも、スザクから『邪魔したら殺すからね?』と笑顔の脅迫の様なオーラが見えています。
そう、スザクはルルーシュの事をとても愛していました。
小さい頃から、時々、お隣の国から来ては、二人で遊んでいたのです。
そして、何かがおかしいと悟り、スザクが王様の方を見ます。
「いったい…何があったんです?」
王様はしぶしぶ事の次第を話します。
「かくかくしかじか…以下省略…」
その言葉にスザクは驚きの表情を隠せません…
「なんですって!ルルーシュが?」

 スザクは驚きの表情を見せたかと思うとルルーシュの身体をぎゅっと抱き締めます。
そうして、一言…こう呟きました。
「やっと…やっと、僕のものになってくれる日が来たんだね…ルルーシュ…」
その一言にルルーシュを元に戻す方法を知らない王様以外のメンバーが烈火のごとく怒り出しました。
そんな外野も目に入らないかのように、スザクはルルーシュのそのサクランボの様な唇にそっと口付けします。
その口付けは、おとぎ話の王子さまとお姫さまの口付けなどと言う、生易しいものではなく、まるで、ルルーシュの唇を貪るような口付けへと変化していきます。
その二人の姿に硬直する者、倒れる者、ショックで泣き出す者…様々でしたが…
ルルーシュはスザクの腕の中で目を覚ましました。
「ルルーシュ…僕だよ…スザクだ…解るかい?」
優しくスザクがルルーシュに尋ねます。
そのスザクの言葉に、ルルーシュは黙ってこくっと頷きます。
「な…なんであんたがルルーシュの眼を覚まさせる方法を知っていたのよ!」
最初に我に帰ったカレンがスザクに怒鳴りつけます。
スザクは涼しい顔をして、答えます。
「うん…僕、昔から、よくルルーシュとあのお城の中を探検していたんだ…。その時に古文書を見つけて…そこに書いてあったんだよ…。あとで、王様に見つかってすっごく怒られたけどね…」
ニコッと笑ってカレンに答えました。
「貴様…私のルルーシュの何だ?」
シュナイゼルが怒りに震えながら尋ねます。
「僕は…ルルーシュと将来を約束した相手…かな…」
スザクがサラッと答えると、ルルーシュが顔を真っ赤にしてスザクに怒りだす。
「お…お前…そんな恥ずかしい事を…」
「照れなくてもいいだろ?本当の事なんだからさ…」
スザクは笑顔を変えずにルルーシュにそう云いました。
ルルーシュは照れ屋さんな事はよく知っているし、その照れた顔もかわいいなぁ…と思ってしまっている事もあり、ついつい、そんな風に云ってしまうのです。
「王様…これで僕は本当にルルーシュの運命の相手となりました。結婚のお許しを頂けますか?」
スザクのその言葉にその場には一斉に
「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」」」」」
という悲鳴が木霊しました。
「ど…どういう事なんですか!」
ロロが王様の胸倉を掴んで詰め寄ってきます。
王様はややたじろぎながら、一つ一つ説明します。
「『ギアスリンゴ』はよく効く劇薬みたいなもので…。一口だけなら食べさせた者の云う事をひとつだけ、何でも聞くのだが…。量が多過ぎると、食べさせられた方は眠りについてしまう。そして、目覚めさせる為には…その…先ほど、スザク王子がしたように、口付けを…と言う事なのだが…。その口付けにも副作用があってのぅ…。口付けをした相手がされた相手の運命の相手となる…と言った…」
そこまで言うと、王様は7人とお后様に取り囲まれてしまいます。
そして…そこからは…
「う…うわぁぁぁぁ…助けてくれぇぇぇぇ…」
と言う悲鳴が暫く木霊していました。

 やがて、ルルーシュとスザクは結婚して、スザクの国のお城で二人仲良く暮らしましたとさ…めでたし、めでたし…
と…何か忘れているような…
「おい!俺はいつここから出られるんだよ!」
お城の地下牢に繋がれたままの狩人玉城は今日もまた、お后様のうっ憤を晴らす為のおもちゃとなっておりました。
そして、森の7人は、全員がルルーシュの騎士として、ルルーシュを守る事になりました。
そして、アーニャの中にいたルルーシュの生みの母親はいつもルルーシュと一緒にいられる立場をゲットする事に成功しました。

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