コードギアス版『白雪姫』(前編)


キャスト:
白雪姫:ルルーシュ
王様(白雪姫のお父様):シャルル
お后様(白雪姫のお母様):マリアンヌ
2番目のお后様(リンゴ売りの魔女):ユーフェミア
魔法の鏡(声と性格):コーネリア
狩人:玉城
7人の小人:ジノ、アーニャ、カレン、ロロ、ナナリー、シャーリー、シュナイゼル
王子さま:スザク

作・演出:
和泉綾(←!)

 昔々、あるところに、ある国の王様とお后様に子供が出来ました。
お后様は雪の降る窓の外を見つめながら、自分のお腹にいる我が子に対して、こんな夢を描いていました。
『どうせだから…色白で肌のきれいな子がいいわね…。髪は私とおなじ黒髪で♪シャルルと同じ髪になったら、あんなくるくるパーマになっちゃうものね…。それに、ほっぺたはほんのり桜色…。やっぱり、健康的な美人さんがいいわぁ…』
などと、お腹の我が子に対して夢を見ておりました。
暫くすると、このお后様は一人の女の子をお生みになりました。
王様もお后様もそれはそれはお喜びになりました。
「よかったわ…シャルルと同じ髪の色だったらどうしようかと思ってたけど…この子は将来…あなたのようなくるくるパーマにはならないわね…」
「マリアンヌ…わしの髪…そんなに嫌か?わしとしては結構気に入っているんだが…」
お后様の云い様に王様はちょっと落ち込んで反論してみますが、お后様はそんな王様を睨みつけてこう言い放ちました。
「何言っているのよ!この子は女の子なのよ?シャルルみたいなふっといストローを巻きつけたみたいな頭になったらお嫁に行けなくなっちゃうでしょう!」
お后様のそんな言葉に王様は、ズーンと落ち込まれました。
その女の子は『ルルーシュ』と名付けられ、王様にもお后様にもこれ以上ないほど溺愛されていたのですが…
ある日、お后様が謁見の間に馬で乗り付けた時、誰かのいたずらで馬に吹き矢をぶっ放したバカがおりまして…その時に驚いた馬が暴れだし、その時、お后様は落馬され、そのまま、帰らぬ人となられました…が、そこにたまたま居合わせた小人の一人に取り憑いて『白雪姫』と呼ばれるようになった『ルルーシュ』の成長を見届ける事にしました。

 やがて、王様もこの年でやもめは辛いと…新しいお后様を迎える事になりました。
そのお后様…大変美しい方なのですが、どうにも天然ボケと、負けず嫌いが玉に瑕…と言う方でありまして…。
いつもいつも、不思議な鏡をのぞいては、
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界でいっちばぁん綺麗なのは、だぁれ?」
と、鏡に尋ねているのでした。
傍から見ると、ただの危ない人なのですが、この鏡、何やら不思議な力があるらしく、そのお后様の質問に答えるのです。
「ふっ…そんなのはユフィに決まっているじゃないか…。今更な事を聞くんじゃない…」 ツンデレっぽい声でその鏡はお后様に答えます。 そう云われると、お后様は花がほころんだように笑顔になり、鏡に抱きつきます。
「お姉さまはいつもそう云って下さるから…だぁいすき♪」
「離せ…ユフィ…。照れるじゃないか…」
天然ボケのお后様にツンデレの魔法の鏡は、どうやら気が合うらしく、いつもとても仲が良いようでした。

 そうして、月日が経ち、『白雪姫』と呼ばれるルルーシュも綺麗なお姫さまになりました。
そりゃあ…もう、そこらのモデルやアイドルなんて、しっぽ巻いて逃げてしまいそうなほど綺麗になりました。
王様はすっかり自分の娘の虜になり、いつもルルーシュと遊んでばかりです。
「もう…シャルルったら…いい年して、娘のルルーシュとばっかり遊んで…。ここに、こんなに若くて綺麗な奥さんがいるって言うのに…」
お后様は娘にぞっこんな王様に呆れ果て、プラス、結婚の相手を間違えたかと、ちょっと後悔する事も出てきました。
しかし、相手は王様です。
どれだけ、娘にぞっこんとなった変態でも、王様は王様…。
衣食住には困らないし、お后様をやっていれば、好きな事もできるし、多少の事は大目に見ようと思うのでした。
そうして、久しぶりに鏡に向ってあのセリフを口にします。
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界でいっちばぁん綺麗なのは、だぁれ?」
そう云うと…いつも、お后様に甘い鏡が云いにくそうにしています。
そして、どのくらいの時間が経ったでしょうか…
鏡に映し出されたのはお后様ではありませんでした。
今や、絶世の美女となられたルルーシュの姿が映し出されています。
「悪い…ユフィ…。私としても、このテの顔には弱いんだ…」
鏡がそう云います。
そして、お后様の表情がみるみる変わっていきます…。
暫くして口を開いて吐いたセリフは…
「まぁ…ルルーシュってば…本当に綺麗になっちゃって…♪シャルルの傍の置いておくのは危険だわ!」
「え???」
鏡が驚いて絶句しています。
「お姉さま、ルルーシュは今どこにいるの?」
お后様が鏡に向って尋ねます。
鏡はその勢いに気圧されて、おどおどとルルーシュの居場所を教えます。
「まぁ、大変…お姉さま、私、すぐにルルーシュのところへ行ってきますわ…お留守番、お願いしますね…」
そう云って、お后様はパタパタと駆け出して、ルルーシュのところへと向かいます。

 そうして、王様と遊んでいるルルーシュの元へと向かいます。
―――バン!
「ユ…ユーフェミア…」
「あなた!ルルーシュを独り占めなんて…許せませんわ!」
「何を言っておるか!ルルーシュはわしの娘だ!」
「あなたと結婚した時点で私の娘でもありますのよ!さぁ、さっさと私に渡しなさい!」
そう云って、ルルーシュは右手をお后様に左手を王様に引っ張られています。
「い…痛いよ…父さま、義母さま…」
ルルーシュは今にも泣きそうです。
―――こんなうち…やだ…
ルルーシュはそんな風に思いながら、二人のルルーシュの取り合いに堪えていました。
そして、ある日の事…通りすがりの狩人に頼んで城を出る事にしました。
「お前…名前はなんて言うんだ?」
「えらっそうな小娘だな…」
ルルーシュが白雪姫だと知らないその狩人は普通に乱暴な言葉を使います。
でも、ルルーシュにとってはとても新鮮な感覚で…森の入口まで楽しく話をしながら、歩いていました。
「済まなかったな…これ、城からくすねてきたんだ…礼にやるよ…」
そう云って、その狩人に渡したのは、ルルーシュの瞳と同じ色の宝石でした。
「へぇ…これは高く売れそうだな…こっちこそありがとな!」
そう云って、二人は別れました。
森の中にはたくさんの見た事もないものがたくさんあり、ルルーシュは目を輝かせています。
しかし、夕方になって来ると、足も疲れて、お腹も空いてきました。
そんな時に、小さな小屋を見つけました。

 コンコン…
玄関をノックしますが、返事がありません。
ドアノブを回してみると扉が開きました。
「なんだ…不用心だな…」
しかし、誰が準備したのか、食事の用意がされています。
冷蔵庫を見ると、まだ、材料が残っているようです。
「あとで代わりを作ってやるから…ちょっと分けてくれな…」
そう云いながら、テーブルの料理をつまみ食いし始めました。 とりあえず、お腹が満たされたところで、借りはちゃんと返しておかないと気が済まない性格で…冷蔵庫にあった食材でぱぱっと料理を作り、準備万端にしておきました。
そうすると、疲れが出てきて、傍にあったベッドにもぐりこみ、そのまま眠ってしまいました。
暫くすると、この家の主たちが帰ってきました。
「なぁ…家の中からすっげぇいいにおいするんだけど…」
「これ…カレンの料理のにおいじゃない…」
「あれ…キッチンも綺麗に片付いているし!」
「元々あった僕たちの食事…誰かが食べたみたいですね…。綺麗に片づけられています…」
「あら?どなたかが、ベッドで眠っていますよ?」
「わぁ…綺麗な子…」
「この子は…私の運命の子だね…」
7人が勝手に好きな事を云っています。
そんな賑やかになった部屋の中…ルルーシュは目を覚ましました。
「あ…済まない…。家出して、行くところがなくて…ここに寄らせて貰ったんだが…」
ルルーシュが目をこすりながら、素直に謝りました。
「いやいや…構わないよ…私の名前はシュナイゼル…。君にはぜひ、『シュナイゼルお兄様』と呼んでほしいな…恋人なら…そうだな…『シュナ』と…」
そう云いながら、長身の美形がルルーシュの手を握ってきました。
そこに一人、誰かが割り込んできました。
「僕はロロです。あなたの名前を教えて頂けませんか?」
「えっと…ルルーシュ…」
勢いに気圧されてルルーシュは自分の名前を名乗りました。
「えぇぇぇぇ!あの有名な通称『白雪姫』…ホントに綺麗ねぇ…。ねぇ、ルルって呼んでいい?私はシャーリー…」
興奮気味に話す順番を間違えている髪の長い少女が割り込んできました。
「シャーリー…驚いているじゃない…。私はカレン…。ここでは力仕事担当…よろしくね」
「私はジノだ!そうかぁ…君があの有名な『白雪姫』か…。今度、私のトリスタンで空中散歩でも…」
この中で一番背の高い男がルルーシュをナンパしていると、後ろからぱしゃっと携帯電話で写真を取っている少女を見た。
「私、アーニャ…好きなもの…綺麗なもの…」
誰も聞いていないのだが…
「えっと…後は…君の名前を聞いていなかったよね?」
と、最後まで声を開いていなかった少女に声をかけた。
「ナ…ナナリーです。よろしくお願いします。ルルーシュ姫さま…」
そこの住人達の自己紹介が終わり、ルルーシュはベッドから降りて、改めて自己紹介する。
「ルルーシュだ…。えっと…勝手に入ってすまなかった…」
そう云いながら、頭を下げました。

 和やかな雰囲気にはなりましたが…
カレンがふと口を開きました。
「ねぇ、あんた、泊まるところは?」
その質問にルルーシュは下を向くしかありません。
「なら、ここに泊っていけばいい!私のベッドは私の身体が大きいのと比例して広いから一緒に…」
そこまで云いかけて、アーニャがジノのお尻に蹴りを入れました。
「いった…何をするんだよ!アーニャ…」
「ルルーシュ…女の子…。それに、ジノ…今考えている事、怪しい…」
「な!」
半分ぐらい図星を突かれてジノは顔を真っ赤にしました。
「いいよ…何か、敷布みたいなものはないか?椅子をつなげて、私はそこで寝るから…今日は…泊めて貰えないだろうか?」
ルルーシュがおずおずと頼んでみました。
そうすると、7人の顔がぱぁっと花が咲いたようにほころんで、『待ってました!』とばかりに再び騒ぎだしました。
「今日だけとは言わず、ずっとここにいればいいよ…」
「そうだね…ルルーシュ…私の花嫁…と言う事で…」
「シュナイゼルは黙っていなさい!」
「ルルーシュ姫さま、ずっとここにいて頂けたら…嬉しいです…」
「僕も、あなたに…ここにいて欲しいです…」
「ルルーシュ…私と一緒に寝ればいい…」
「アーニャ、最初に彼女を誘ったのは私だ!」
再び7人が一斉にしゃべりだします。
どうやら、ルルーシュは自分でも気づいていないが、ルルーシュの持つオーラは人を惹きつけるらしい。
そんな事はルルーシュも気づいてはいないのですが…
ルルーシュは素直にこの7人に感謝しました。
「ありがとう…みなさん…」
そう、心からお礼を言うのでした。

 ちょうどその頃…城の地下の秘密部屋では…
「玉城…と云いましたね?ルルーシュをどこへ隠したんです?」
お后様が縛りあげている玉城に黒いオーラを放ちながら尋ねています。
となりにはこの国の王様で、ルルーシュをこよなく愛する父君である王様が黙って、玉城を睨みつけています。
「わしの…かわいいルルーシュを攫うとは…貴様も、いい度胸をしているよのぅ…」
「お…俺は…あの子を森の入口まで連れて行っただけだ!」
玉城が必死になって叫んでいます。
「じゃあ、このアメジストは?これはルルーシュが大切に持っていたもの…あなたが持っているというのは不自然ですわ…」
「さぁぁぁぁ…吐けぇぇぇぇぇ!」
どすの利いた声で玉城を脅している王様…
そして、黒いオーラを隠そうともせずに振りまいているお后様…。
このとき…あんな小娘に関わったばかりに…と、心から悔む狩人、玉城でした。

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