ある女性の独り言編


―――ミレイの心
 今日はハロウィン…
私もフリーアナウンサーになってもう、3年半が経つ。
そして…彼らがいなくなって…3年…。
アッシュフォード学園でハロウィンをやっていた時、すごく楽しかったのに…
今では、その楽しかったお祭りも…
もともと、この日には悪霊が集まって来るという…。
その為に、悪霊たちを怖がらせるために妖怪とか、お化けの恰好をする。
そして、悪霊たちを怖がらせて、その悪霊たちを追い払う…。
まぁ、こんなに単純な話ではないと思うのだけれど…。
でも、あの時のメンバーが残っているのって…
それに、彼らがいなくなってしまった時より1年ちょっとくらいの記憶が書き換えられていたとか…
にわかには信じられないんだけど…実際にそうだったらしいし、なんか、テレビに映っていたルルーシュの傍らにいた男の人たいきなりやってきて、記憶を取り戻すからと…
確かに、私もリヴァルもいろいろ思い出した。
ルルーシュが皇子であった事、ナナリーの事、二人の過去の事…
難しい話は聞かなかった。
聞いてもどうせ解らないから…。
それに、私にとって、ルルーシュと一緒にいた時間、ナナリーと一緒にいた時間、ロロと一緒にいた時間…それが私にとっての本当だから…。
でも…もし、ホントにこの日に悪霊が現れるって言うなら…悪霊でいい…。
みんなに会いたい…。
ルルーシュ、ロロ、スザク、シャーリー…
もう一度、みんなに会いたい…。
あんな形で…突然みんな、いなくなっちゃって…
ルルーシュはただ…ナナリーと幸せに暮らせればよかったはずなのに…
ロロはただ…、ルルーシュとの生活を大切にしたかっただけなのに…
スザクはただ…、みんなが笑っていられる世界が欲しかっただけなのに…
シャーリーはただ…、ルルーシュと笑っていたかっただけなのに…
彼らの望んだ事は…決して大それた望みでも何でもなくて…誰でも持つ、ささやかな…本当にささやかな願いだったのに…
でも、あの時の、世界は…彼らのそんなささやかな、小さな願いすら、叶える事を許さなくて…
シャーリーはテロに巻き込まれて…
ロロはどこで死んだのかすら分からなくて、彼がどこで眠っているのかも解らない。
スザクは、ルルーシュ率いるブリタニア軍とそれに反目するシュナイゼル殿下のダモクレスと黒の騎士団の連合軍の戦争で、戦死した。
ルルーシュは…世界の全てを手に入れた瞬間に…『ゼロ』の剣に貫かれた…。
ねぇ…どんな形でもいいから…みんなで花火を上げる約束…守ってよ…
そう思いながら…私はアッシュフォード学園の屋上で一人、打ち上げ花火の導火線に火を点けた…

―――カレンの気持ち
 世の中もあれからひと月経って、混乱がない訳でもないけれど…
それでも、ナナリーがルルーシュの後を継いでブリタニアの皇帝を名乗った。
私的にはかなり複雑な思いはある。
あの時、ダモクレスで誰がフレイヤのスイッチを押していたかを知っているから…
でも、それを誰かにぶちまけてしまったら、ルルーシュが命をかけてまでやろうとした事が、『無』と帰してしまうから…
だから…何も言えない…。
それが、多分、『ゼロ』が私に残した、最後の命令だと思うから…
私にとっての『ゼロ』は彼一人だけ…
今の『ゼロ』が誰だろうが関係ない…
だから、私は『ゼロ』の為に、口をつぐんでいる。
本当は、世界中にあなたの遺したものを…全部、教えてあげたいけれど…
でも、きっとあなたはそれを望まない…。
今日はハロウィン…
日本人の私には関係ないんだけどね…
でも、どこの国の行事でもいい…
悪霊だろうが、お化けだろうが、何でもいいから…
もう一度…あなたに伝えたい事がある…。
謝らなくちゃいけない事も…
ハロウィンは、死んだ人の魂がこの世に戻って来るんでしょう?
なら…ルルーシュ、スザク…
そのあと私を呪っていいから、姿を見せてよ…。
そして、あなたたちに謝らなくちゃいけない…。
私…何も解っていなかった…。
『ゼロ』の親衛隊長でありながら…何も解っていなかった…。
スザク…あなたはちゃんと、『ゼロ』を受け入れた。
恐らく、全てを知って、理解した上で…。
私にはあの時…出来なかったから…
黒の騎士団を止める事も、そして、黒の騎士団から抜けて、『ゼロ』を守る事も…
でも…これは私の罪…なのかな…
あの時…ナリタ連山でのあの時…私は誓ったはずなのに…
『共に進みます…あなたと共に…』
あの時…私は何も覚悟などなく、その言葉を発したのかもしれない。
『ゼロ』は優しいから…
誰にもその『業』を背負わせないように…
結局、最終的にパートナーとして選んだのは…私ではなく…スザクだった…
ねぇ…私がどれだけ悔しかったか…あなたは知らないでしょう?
ずっと…ずっと、私があなたの傍にいたのに…
なのに…最後にあなたが選んだのは…
なんで、私にも背負わせてくれなかったの?
なんで…私を突き放して…
結局私は…
考えても仕方ないけれど…。
だから…悪霊でも何でもいいから出てきなさいよ!
きちんと、私の気持ちを話して、謝って…その次には…二人とも、思いっきりぶん殴るから!

―――ナナリーの思い
 お兄様の遺志を継ぐと決めて…もう、随分経ちますね…。
私は…お兄様だけでよかった…
『優しい世界でありますように…』
その世界に、お兄様がいなければ、私にとって、どんな世界も意味はないのに…。
今の私には…お兄様が残してくださった、大切な…お兄様の遺志があるから…
世界では…私とお兄様が一緒に日本にいた頃よりは、人々が…笑っている気がします。
お兄様が植民エリアを解放してくださったおかげで、ブリタニアは…侵略者と云うレッテルが少し薄れた気がします。
貴族制も…お兄様が廃止して、以降は復活をさせていません。
私が第100代皇帝…と言う事にはなっていますが…殆ど外交の時の顔として存在しているような感じです。
全ては…お兄様が残してくださった『ゼロ』とシュナイゼル異母兄様の手腕によってブリタニアが統治されています。
お兄様の作った『黒の騎士団』には『ゼロ』が解散を宣言しました。
お兄様が創った『超合衆国』は皇神楽耶さんが代表となり、そして、『黒の騎士団』を失った今、新たな防衛策を作っているようです。
『黒の騎士団』の幹部が日本と中華連邦に偏り過ぎており、『超合衆国』の中でも色々ともめたとか…
お兄様が作り上げたものは…結局、お兄様がいないとその存在を維持する事さえできませんでした。
今のこの状態をお兄様はどうご覧になるのでしょうか?
この、カボチャのランタンからの光…見えるでしょうか?
私は…ここにいます。
お兄様のお荷物にしかなれなかった頃は、お兄様の役に立ちたくて…
でも、お兄様は何もさせてはくださらなかった…。
今は…こうして私にお兄様の遺志を継がせて下さったという事は…少しは私もお兄様のお力になれると、認めて頂けたのでしょうか?
「Trick or Treat」
そう云うと、お兄様はいつも、手作りのお菓子を私にくれました…。
だから…今年は私が…お兄様に… 今、お兄様はどちらで眠っておられるのでしょうか…。 私には教えて頂けなかったので…お兄様が作って下さったこの…『アリエスの離宮』に小さな碑を作らせて頂きました。
だから…ここに置いておきますね…。
お兄様…一生懸命作ったんです…。
お兄様が亡くなったあと…咲世子さんが戻ってきてくれて…教えてくれたんです。
お兄様の様に上手に出来ているかどうかは解りませんけれど…。
もう一度…一緒に食べたかったです…。
お兄様の作って下さった…

―――咲世子の願い…
 ルルーシュ様より、最後のミッションを頂いた事…今でも光栄に思っております。
そして、今は、ナナリー様のお傍に仕えさせて頂けている事にも…
でも…私はやはり、ルルーシュ様の下で働いている時が、一番、自分自身が生き生きしていたように思います。
私は日本人でありながら、ずっと、ルルーシュ様にお仕えし、主君と決めておりました。
主君であるから、命令は絶対…。
そうは思っていても…本当のルルーシュ様のお姿、御心を知る私にとっては、あなた様の最後の命令は…辛いものでした…。
恐らく、私を囚人と仕立て上げたのも…私があなた様を守りに飛び出してしまうのでは…とのご不信からでしょう。
私自身、仕えるべき主君はルルーシュ様以外にはないと思っておりましたから…。
しかし、最後のミッションの説明をされている時のルルーシュ様の真剣な表情に…誰が邪魔を出来るのだろうと…思いました。
私は、ルルーシュ様に仕える身でありながら…ルルーシュ様の御心に背こうとしたかもしれない…とさえ思いました。
邪魔は出来ない…でも、何故に、それをなさるのがルルーシュ様でなくてはならなかったのですか…。
あなた様が『ゼロ』でも、『ブリタニア皇帝』でも私にとってはルルーシュ様が唯一仕えるべきお方であったのに…
あなた様は私の仕えるべき主君さえ、取り上げるおつもりだったのかと…
しかし、ルルーシュ様はそんな私の心理を見抜いておられました。
最後に私に下さった言葉…
『ナナリーを頼む…』
私にナナリー様を託された…。
ですから…ルルーシュ様…私は今年も、ナナリー様と一緒にハロウィンのお菓子を作ったんですよ…。
ナナリー様もそれを望まれました。
嬉しそうに作っておいででしたよ…。
ルルーシュ様は、ちゃんとご覧になられていたのでしょうか?
この広い空のどこかで…
あなた様がお決めになられた事に私ごときが否を唱えるべきではない事は承知しております。
しかし…私にはいまだに納得できないのです。
あなた様が亡くなられて、既に5年が経とうというのに…また、新宿地区でテロが起きたそうです。
あなた様がいてくだされば…と私がつい思ってしまうのです。
あの、荒れ果てた世界情勢の中…何かのきっかけが必要だったのかもしれません。
ただ…あなた様が望まれたのは…『戦いではなく、話し合いと言う一つのテーブルにつく』世界であったはずなのに…
未だにそれがかなってはいません。
ナナリー様も心を痛めておいでです。
ルルーシュ様…もし、このカボチャのランタンからの光をご覧になられたのであるなら…せめて…ナナリー様の枕もとに…

―――C.C.の本心…
 結局お前は辛い道を選ぶしか出来ないのだな…。
きっと、ハロウィンであるこの日に…悪霊でもいいからとお前を呼ぶ連中は多いだろうな…。
まぁ、お前は悪霊になどなれないが…
『コード』を継承し…死ぬ事を許されなくなったのだからな…。
お前は…本当に頭がいいくせにバカだ…
あのまま、お前は生き続けていれば、あんな風に泣く人間がいなかったのにな…。
お前は…自分の殺めてきた命を、その命で償おうと考えていたな…
しかし、それはただの『逃げ』でしかない。
私は長い時の流れの中で、それを知った。
『生きる』事の方がはるかに辛く、苦しいと…
だからこそ、私は『永遠の命』など、すぐに捨て去りたかった。
『生きる』事の辛さを、嫌と言うほど味わってきたから…。
そこに『罪』と『罰』と云う重荷がつけ加わればオールマイティだな…。
お前がただの『人間のギアス能力者』だった時でさえ、私はお前を支えてはやれなかった。
お前が求めたのは…お前と同じ存在だけだった。
ハロウィン…いろんな謂われがあるが…私は今、お前が殺めてきた命の魂を迎えてやりたい。
きっと、いろんな思いを持つ者がいるだろう…。
でも、その中にはきっと、お前を恨んでいる者ばかりではないはずだ。
お前の幸せを願って死んでいった者もいる筈だ…
私は…お前の共犯者だった…。
でも…今は…あの男の…契約者…
そう…もうすぐだ…
もうすぐお前は一人ではなくなる…。
あの男なら…きっと、お前を支えてくれる。
私と出会ってから…お前は早すぎるほどのスピードで成長した。
それほど、急がなくてもいいはずだったのに…
それでも、お前は守られる立場を嫌い、守りたいと願い…そして、守りたい者の一部が… お前は…決して足を止めようとしなかった。
これでは、シャルルもお前の異母兄弟たちもお前を恐れる訳だな…
『有言実行』
お前は、それを成そうとしている。
『世界を壊し、世界を創造する…』
それがどれほど大変で、時間がかかって、大きな業を背負う事になるのか…
そして、お前は今、その業を背負っている。
大丈夫だ…
もうすぐお前の本当のパートナーがここへ来る…
私の存在と引き換えに…私はお前にパートナーを置いていこう…。
あの男もそれを望んでいる。
そして、私はCの世界から見届けてやる…
お前たちの目指す…真の『優しい世界』を…




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