僕が10歳になったばかりの頃に…僕は君と出会った。
その頃の君は…ブリタニアの捨てられた皇子で…
僕は日本国首相で枢木家の党首の一人息子…
立場的には…敵同士と云っても過言ではない状況だ。
思えば…君とは親友と呼べるくらいお互いが必要として、求めていながら…ずっと『敵』だった様な気がするよ…
お互いを大切と言いながら…殺し合ってばかりいた…
君は…僕がランスロットの…君が『白兜』と呼んだナイトメアのパイロットだと知った時…
どう思った?
僕は君が『ゼロ』かも知れないと…そう、思った時…泣いちゃったよ…
僕たちは…お互いを必要としているのに…大好きなのに…結局…『敵』になっちゃうんだね…って…
でも…僕は君に出会えた事を心の底から感謝しているよ…
敵同士で、辛い事もたくさんあった…
ここまで来るのに…
どれほどの涙を流した事か…
やっと…君と僕は…嘘のない…涙のない…『二人』になれた…
永遠と云う…途方もない未来の待つ僕たちの試練…だったのかな…
僕は…この『永遠』と云うのが呪いであったとしても…
その呪いを僕に届けたのが…君だったのだとしても…
僕は君に会えた事を神に感謝する…
今年は誕生日に君と会えそうだ…
君がいるから…どれほど永い時間を生きていても…誕生日を忘れない…
待っていて…
君の事だから心を込めて僕にその言葉をくれるだろう…
僕もそれが欲しいから…
君の元へ…急ぐよ…
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もうすぐ…スザクの誕生日だ…
俺もスザクも…既にこの世に生を受けて数百年経っている。
俺は生まれて18年で…スザクは生まれて20年で不老不死となった。
だから、外見はスザクの方がやや、大人びているが…実際には奴の方がこうしたイベントをしてやると喜ぶ…
既に数える気にもならない年月を生きていると云うのに…
あれから時間の流れとともに俺達の『世界』を守る…と云う立場から見守る…と云う立場へと移行(シフト)していった。
相変わらず、スザクは問題の起きた地域へ直接赴き、画像や映像に収めて、俺はそれを後世に残すべく記録し、残している。
今の俺達の『ゼロ』と云う存在の在り方だ。(勿論、記録者の詳細は解らない様にしている)
だから…相変わらず一緒にいる時間は限られている。
それでも今年はスザクが誕生日に帰って来る。
狙ったのか…偶然か…
そんな事はどちらでもいい…
あいつの笑った顔はどれだけ時間を経ても飽きる事はない…
顔をくしゃくしゃにして子供みたいに笑うあいつは…
だから、俺はあいつが一番望むものを贈ってやる。
永い時間を生きて来ても離れている時の体感時間はあまり変わっていない気がする。
だからこそ…一緒にいる時間(とき)は俺の一番好きなあいつの顔を見たいんだ…
そう願う事位は…罪人の俺でも…許されるだろうか…?
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僕は…贅沢なのかも知れない…
本当は、僕個人の望みなんて…持ってはいけない…罪人なのに…
僕は…弱い人間だ…
未だに忘れる事の出来ない…自分の誕生日…
あれからどれほどの時間が経っていると思っているんだ…
僕は…もう…『ヒト』ではない存在だと云うのに…
でも、きっと…これは僕だけの所為じゃない…
彼が…いつも、僕の欲しいものを用意してくれるから…
だから…僕は…自分の罪を知りながら…甘えてしまう…
解っている…
これは僕の弱さだ…
僕が君に甘える理由をこじつけているだけだ…
彼が僕を甘やかそうとしても…僕が拒絶すればいいだけの事…
強く拒絶出来ないのは…僕の弱さだ…
でも…もし、言い訳を許されるなら…年に一度の誕生日に…彼の元へ帰れる…その一日だけ…甘えても…いい…?
誰に尋ねているのが…僕にも解らない…
ユフィ?
ナナリー?
シャーリー?
父さん?
C.C.?
既にこの世から去っている人々の名前…
尋ねたって…答えなんて返って来るわけ…ないのに…
そう…思った時…
僕の頬を優しい風が撫でた…
まるで…大きな手に撫でられたような…そんな…気分…
誰かに何かを許して貰ったような気分が襲ってきた…
なんで…こんな気持ちになるんだろう…
彼のいる…あの家はもう、すぐそこだ…
会いたかった…
ずっと…ずっと…
僕の歩く足は…一歩進む毎に…速さを増して行った…
僕は…敢えて…『その事』に気づかぬフリをする…
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その日が近づくと…
ガラにもなく、そわそわしてしまう事に気がつく。
多分…あいつが…嬉しそうに笑う顔が鮮明に思い出されるからだ…
普通の人間では有り得ない回数を重ねている…誕生日…
俺はあいつがこの世に生まれて来て、俺と出会ってくれた事に感謝している。
だから、俺がその日に必ず何かを準備するのは…祝いというより…あいつがこの世に生まれてきた事…俺と共に存在する事を選んでくれた事への感謝を表すと云う意味も含まれているのかも知れない。
あいつがいてくれたとしても…しんどいと思う事の多い…『永遠』と云う名の『業』…
それに…俺たちが一緒にいる時間と云うのは…驚く程短い…
互いが互いの役割があるから…
それに…俺たちは二人で笑って生活するなど…考えてはいけないのだから…
俺たちの殺めた命の為にも…陰から…世界にすべてを捧げなくてはならない…
それでも…そんな中で…こんな形で『幸せ』を感じる自分がいる…
だから…これは俺の『罪』だ…
あいつが笑顔になってしまう事に罪悪感を抱く必要はない…
これは俺の『我が儘』故の『罪』だから…
あいつに笑って欲しいと願ってしまう…俺の弱さだから…
久しぶりにあいつの顔をみる事になる。
不老不死でも…歳を取らないだけで…顔は変化する。
新たに何かを得る度にあいつは顔つきが変わる。
今度はどんな顔になってここに戻って来るのだろう…
どうせ…ろくな物を口にしていない筈だ…
もう、あの頃と全く同じ食材は手に入らないが…
あいつの好物ばかりを並べて待っていてやる…
どんな顔つきで帰ってきても…好物ばかりを並べられたテーブルを見た時のあいつのくしゃくしゃの顔は…あの頃と…変わらない…
だから…俺は…
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胸を高鳴らせている二人…
こうして、スザクの誕生日に会えるのは何年振りだろう…
どうしてもそわそわしてしまう。
まるで…子供みたいだ…
今、この地球上で彼等より長く生きているのは…樹齢千年以上の神の宿る大樹くらいだ。
『ただいま!ルルーシュ!』
幸せそうな声がルルーシュの耳に届く。
ルルーシュの方はスザクとのディナーの為の準備がちょうど終わった。
『おかえり!スザク!』
ルルーシュも今日ばかりは自分の気持ちを素直に反映した言葉を返してやる。
『『会いたかった!』』
二人がどちらからともなく、抱きしめ合う。
久しぶりに触れる『ヒト』の温もり…
多分…ルルーシュが…スザクが…
いるから耐えられる…『永遠』…
そして、二人は気づく…
欲しかったのは…
贈りたかったのは…
互いであると…
どんな贈り物も…
どんな言葉も…
今触れているこの温もりには敵わない…
ただ…互いが互いを
強く…
抱きしめていた…
言葉なんて出てこない…
『ルルーシュ…愛してる…』
『スザク…愛してる』
やっと出て来た言葉は…
それだけだった…
ルルーシュの考えていたプランも完全に吹き飛んでいた。
涙が出て来そうな…そんな…互いの温もりは…時間を忘れさせる…
互いがいれば…何もいらないと思ってしまう程…
時間が…止まればいいと…よく思う…
こんな風に切ない喜びに満たされてしまった時は…
でも、彼らはそれを許さない…
自分たちの選んだ道に意味を持たせる為に…
意味をなくせば…
彼らの手によって…消えていった命は…
つかの間の現実逃避…
彼らを裁く…
それは一体…誰なのか…
もはや…自分たちだけが…二人を許していない。
しかし…誰かが望めば…二人は自分たちを許すのか…
それは誰にも解らないが…
しかし、ルルーシュはスザクの存在に感謝している。
スザクはルルーシュの存在に感謝している。
『Happy Birthday Suzaku』
ルルーシュの言葉…
スザクはその言葉にルルーシュを抱きしめる腕に更に力を込めた…
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